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雨が降っていて外に遊びに行けなかったので、うちで本を読んで過ごしました。
たくさんの物語が入った日本昔話の本です。その中でいちばん心に残った話が“隠れ里”です。
道に迷った旅人が紛れ込んだ村には、人が誰もいないのです。それなのに、今、人がいたみたいに、作りたてのご飯の用意もしてあるし、生活の気配もある。でも、人はいない。旅人は不思議に思いながらも、空腹に耐えかねてご飯を食べてしまいました。そうして、村を出てめでたく家に帰りつきました。 知り合いに尋ねてもあの村のことを誰も知らないし、後で探してみてもみつからなかったそうです。
ぼくは、ほんとにそんな村があるのかなあ、ぼくも山の中で道に迷ったら迷い込んでしまうのかな、と思いました。 ぼくは、いってみたくなりました。そんな不思議な村があるのなら、山の中を迷ってもいいかな。
そしたら藤川先生が、
「大丈夫、いつか迷い込むから」
と、ぼくの頭をポンと叩きました。
「え?どうして?」
「だって、人なら1度や2度は迷い込むもんだからね、その証拠に…」
藤川先生は、おとうさんを見ながら、
「あいつも今、迷い込んでいる最中だからさっ」
と、くすりと笑いました。
? ? ?
あんまり意味はわからなかったけど、ぼけっと庭を眺めているおとうさんを見ていると、違う意味で迷い込んでいるような気がしてならないんだけど…。