本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

楽(ラク・たのしい・ねがう)

2021-12-28 20:29:06 | 漢字

ある新聞社の調査でによると

来年への願いを込めての

漢字一文字は「楽」

ということのようです。

 

来年こそは楽しみたい。

旅行が楽しめるように。

人生一度きり、楽しむ

ことが大事。

 

というような

希望が書いてあります。

まあ、読み方としては

圧倒的に「たのしむ」

ということが多いようです。

 

しかし、この字も

深い意味を持っているようで

仏教でも

楽という言葉は使います。

 

「人生楽ありゃ苦もあるさ」

という歌もありました

楽の反対は苦ですが

苦楽相半ばともいいます

楽は苦の種、苦は楽の種

という熟語もあります。

 

楽という字

真ん中の「白」は

親指の爪を表し

爪で楽器を弾けば

たのしくなるところから

「たのしむ」という

意味が出てきたようです。

 

慈悲という言葉があって

抜苦与楽という

衆生の苦しむを抜く(抜苦)

衆生を愛し楽を与えるのを

(与楽)といいます。

そういう、

苦に対する言葉が楽です。

 

今はできるだけ

「苦」の方は

見ないようにして、

「楽」という、たのしい

楽なことだけを

求める傾向にあるようです。

 

お釈迦さまもひどいことを

仰る

「人生は苦なり」と

楽はないんだと

しかし、

苦もあれば楽もある

ではないかと

思ってしまうのですが、

 

苦というものを見るのに

「三苦」

という見方があります。

それは、苦苦・壊苦・行苦

の三つです。

普通感じる苦は

苦苦と壊苦だけです

この場合は苦もあり楽もある

ということが出来ると

思います

ところが一番問題になるのは

「行苦」ということです。

 

お釈迦さまも

一国の王子であり生活面は

何一つ不自由はなかった

ところが

どうにもならない苦が

襲ってきます

それが「行苦」です

ここでいう「行」は

諸行無常の行で

すべての存在をあらわし

自分も含め、あらゆるものは

何一つ変わらないものは無く

すべてのものは

変わっていくという

そういうものに対して

感じる苦しみなのです。

 

この苦しみを観じたゆえに

「人生は苦なり」

という言葉が生まれたのです

うすうす感じる

のですが

まだまだ、

と思ってついつい

後回しにして

何やかやでごまかしながら

生きているのが

私たちのあり方です。

 

では、

仏教では楽ということは

どういうことなのか

楽が極まったところを

極楽といいますが、

どうも

私たちが考える楽とは

ちょっと違うようです。

 

いろいろあって

天楽テンラクといって

善を修めて天界に生まれる

という楽、

禅楽ゼンラクという、

禅定の境地に入って受ける楽

涅槃楽ネハンラク

涅槃というさとりの境地を

えたという楽

こういう「三楽」という

代表的な楽があります。

私たちが考える楽とは

ずいぶんと違っています。

 

読書が好きで

朝から焼酎片手に本を読む

これを何よりの楽しみに

していた叔父がいました。

それで、

戒名に「楽」の字を

使おうと「三楽」を入れたの

ですが、

「三楽」という名の

焼酎があって、

これは明らかに焼酎の

イメージが強すぎる

ということで、ボツになり。

 

変わって

「信楽」シンギョウという

言葉にしました

この時の「楽」は、ねがう

という意味があり

この時に限ってシンギョウと

読むのです

ということで

叔父の戒名には「信楽」

というじで落ち着きました。

 

楽という字も

なかなか深い意味を

持っているようです。

 

 

 

 

 

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