
正直なところ、竹内まりやについてはファンというほどでもない。
夫である山下達郎を「神」「歌う人間国宝」とまで崇め奉っておきながら、夫人であるまりやにはそこまでの思い入れはない。
いや、もちろん曲はよく知っているしアルバムが出ると必ず買うのだが、それらは達郎の仕事ぶりを確認するために他ならない。
むしろ私のような達郎ファンにしてみれば、
「まりやさえいなければ、達郎はもっとハイペースでアルバムが出せて、ツアーも出来たのに…」
と、その存在を恨めしく思う時すらある。
従ってあの達郎のシアターライブから6年経った今秋、まりやのシアターライブ上映に足を運ぶのももっぱら達郎目当てである事であるのは、説明の必要がない。
しかしまぁ、いざ観てみると改めてまりやは美しいし、歌もものすごく上手い。
私は幸運にも2000年と2010年のコンサートには行けたのだが、構成は2000年の「自身19年ぶり」のコンサートがベースとなっており、あの時には遠くてよく見えなかった部分が大画面でアップで観られるのは大きな価値がある。
ネタバレを承知で書くが、アタマは「アンフィシアターの夜」。
あの重いビートを叩くのは、長年に渡って達郎を支えてきた故・青山純。
在りし日の彼の勇姿を拝めた瞬間に涙したファンも、きっと居るはずだ。
達郎は愛用のブラウンのテレキャスの8フレットにカポタストを付けているのだが、それはイントロのためだけであり弾き終わりと共に舞台袖へブン投げてしまった。
もうその仕草のカッコよさに、ほぼ失神してしまった(笑)。
「家に帰ろう」での切り替わりで、ギターの佐橋佳幸がレスポールからモズライトの12弦に持ち替える瞬間もバッチリ。
残念なのは、「元気を出して」の転調でローリングカポを動かす瞬間を映していない事だ。
一番のお楽しみは、「プラスティック・ラブ」の最後に賛否分かれる達郎のシャウト。
達郎ファンは「待ってました!」。まりやファンは「オマエが歌うんかいっ!」となるのだが、私はほぼコレを聴きたくて来たようなものだ。
今はライブでも滅多に出さないハイBの地声のロングトーンで、再び失神しそうになる。
「リンダ」のアカペラではベースを務める達郎の上手さを再認識。やはりダテにオンストを3枚も作っていない。
「J-BOY」でハッキリとわかるのだが、この達郎率いるメンバーはれっきとしたロックバンドだ。リード・ボーカルこそ柔らかいが、そのメンバーが出す音はまさしくロックンロールと呼んで差し支えなかろう(何がロックで、何がロックでないという不毛な議論は、この際ナシ)。
達郎のシアターライブは、2500円。まりやは2800円。
その300円の違いは何ぞや?と思っていたのだが、この作品のための別撮り素材の制作費とみた(笑)。
スタジオの様子、デビューアルバム「BEGINNING」を録音したLAのスタジオ、故郷・島根のロケでは贅沢にドローンまで飛ばしている(笑)。
いや、実に素晴らしかった。達郎のシアターライブは5回観たが、まりやももう1回観ようかな(笑)