こういう本こそ、発売時にさっとブログに書くべきと思うのですが、
毎度、気づくのが遅いんですよねー。
『現代語訳 吾妻鏡』 全16巻
五味文彦・本郷和人〔編〕
吉川弘文館 各巻定価 本体2,200円+税
上州や関東の歴史を調べていると、しばしばこの『吾妻鏡』の引用に出くわすことがあり、
何度となく、原典を読んでみようと思いはするものの、
実際に岩波文庫版などを開いてみると、
あ、これは私には読めない、とあきらめることばかり繰り返していました。
それが、昨年、現代語訳でようやくわかりやすいのもが吉川弘文館から発売されることを知り、
待ってましたとばかりに、高校の先生や図書館などに薦めてはいたのですが、
各巻2,200円ほどの予定で全16巻という量は、なかなか専門家でもない個人でほいと買えるものではない。
ついつい店頭でアピールするようなこともなく、月日が過ぎてしまっていました。
ところが、最近になって、よく古本の取り寄せを依頼してくれるお客さんが、『吾妻鏡』を取り寄せて欲しいと私に言ってきました。
え?『吾妻鏡』?
私は、読もうと思って何度も挫折してるんですよ。
ちょっと高い買い物になるかもしれませんが、最近、現代語訳のいいのが刊行されてますよ。
とそのお客さんに紹介したら、すぐに買ってくれました。
数日すると、そのお客さんがまた来て、
この間の本、すごく良かったわよ。私、ああいうのが欲しかったのよ。
と言ってくれました。
今、古典を学びたいと思っているひとはとても多い。
それが、まだ古事記や万葉集、源氏物語あたりであれば、様々な解説書や現代訳の本が出ている。
ところが、そうした人気の作品から一歩はずれると、一般の人が読みやすいものというのがなかなかない。
それでも「すらすら読める」なんとか、といったたぐいの本は随分刊行されるようになっているが、
地元がらみで多くの人が関心をもつ、この『吾妻鏡』や、
もうひとつ大事な『神道集』などは、残念ながら一般普及向けのものはずっとないままでした。
完全読み下しだけでなく、ある程度は原典の学習がきちんとできるもの、
それでいて解説が学術におちいることなく適切な表現であるもの、
そういったものがなかなかない。
普段は、岩波文庫、角川文庫、講談社学術文庫、それと角川文庫のビギナーズクラシックスシリーズなどがよく売れていますが、そこでも吾妻鏡は刊行されていないか、あっても難しいものでした。
そうした読者の不満にこの吉川弘文館のシリーズは、見事に応えてくれた企画であるといえます。
源氏の関東での活躍の様子などは、まずこの本でおさえておかなければ、他の話しに進まないといってもいいくらい大事な本です。
そのことに、今回のお客さんは気づかせてくれました。
売りたい本、良い本だと思いながらも、店頭から消えたままになってしまっている本はたくさんありますが、このお客さんのおかげで、ちょっとだけ、いい仕事をすることができました。
今度は、平凡社の東洋文庫(現在品切れ)でしか手に入らない『神道集』だ。
「正林堂店長の雑記帖」より加筆転載
毎度、気づくのが遅いんですよねー。
『現代語訳 吾妻鏡』 全16巻
五味文彦・本郷和人〔編〕
吉川弘文館 各巻定価 本体2,200円+税
上州や関東の歴史を調べていると、しばしばこの『吾妻鏡』の引用に出くわすことがあり、
何度となく、原典を読んでみようと思いはするものの、
実際に岩波文庫版などを開いてみると、
あ、これは私には読めない、とあきらめることばかり繰り返していました。
それが、昨年、現代語訳でようやくわかりやすいのもが吉川弘文館から発売されることを知り、
待ってましたとばかりに、高校の先生や図書館などに薦めてはいたのですが、
各巻2,200円ほどの予定で全16巻という量は、なかなか専門家でもない個人でほいと買えるものではない。
ついつい店頭でアピールするようなこともなく、月日が過ぎてしまっていました。
ところが、最近になって、よく古本の取り寄せを依頼してくれるお客さんが、『吾妻鏡』を取り寄せて欲しいと私に言ってきました。
え?『吾妻鏡』?
私は、読もうと思って何度も挫折してるんですよ。
ちょっと高い買い物になるかもしれませんが、最近、現代語訳のいいのが刊行されてますよ。
とそのお客さんに紹介したら、すぐに買ってくれました。
数日すると、そのお客さんがまた来て、
この間の本、すごく良かったわよ。私、ああいうのが欲しかったのよ。
と言ってくれました。
今、古典を学びたいと思っているひとはとても多い。
それが、まだ古事記や万葉集、源氏物語あたりであれば、様々な解説書や現代訳の本が出ている。
ところが、そうした人気の作品から一歩はずれると、一般の人が読みやすいものというのがなかなかない。
それでも「すらすら読める」なんとか、といったたぐいの本は随分刊行されるようになっているが、
地元がらみで多くの人が関心をもつ、この『吾妻鏡』や、
もうひとつ大事な『神道集』などは、残念ながら一般普及向けのものはずっとないままでした。
完全読み下しだけでなく、ある程度は原典の学習がきちんとできるもの、
それでいて解説が学術におちいることなく適切な表現であるもの、
そういったものがなかなかない。
普段は、岩波文庫、角川文庫、講談社学術文庫、それと角川文庫のビギナーズクラシックスシリーズなどがよく売れていますが、そこでも吾妻鏡は刊行されていないか、あっても難しいものでした。
そうした読者の不満にこの吉川弘文館のシリーズは、見事に応えてくれた企画であるといえます。
源氏の関東での活躍の様子などは、まずこの本でおさえておかなければ、他の話しに進まないといってもいいくらい大事な本です。
そのことに、今回のお客さんは気づかせてくれました。
売りたい本、良い本だと思いながらも、店頭から消えたままになってしまっている本はたくさんありますが、このお客さんのおかげで、ちょっとだけ、いい仕事をすることができました。
今度は、平凡社の東洋文庫(現在品切れ)でしか手に入らない『神道集』だ。
「正林堂店長の雑記帖」より加筆転載