日本の海岸線の総延長は、約3万5千キロ。
アメリカ、中国ともに国土面積は日本の約25倍ですが、
日本の海岸線はアメリカの約1.5倍、中国の約2倍。
この数字、信じられますか?
この数字を高橋裕『川と国土の危機』(岩波新書)で知りました。
私も俄かには信じ難く、データを検索してみましたが確かにだいたいこのような数字であることが確認できました。
ほぼまっすぐな海岸線が続くばかり。
それら大国の面積にすっぽり収まる小さな日本とはいえその姿は、
四方を海に囲まれた地形であるばかりか、
北海道、九州、四国、淡路島、佐渡、沖縄など大小多数の島々を持っています。
さらにそのかたちは、ただの海岸線ではなく
♫ 今は山中、今は浜、
今は鉄橋を渡るぞと、
思う間もなくトンネルの、
闇を通って広野原 ♪
の歌のごとく、ところや場所により、めまぐるしくその姿が変わる地形がどこまでも続きます。
まさにこれが日本人の魂の故郷であり、多くの文学の舞台にもなってきたものです。
日本の古代史などを学ぶほどに、日本という国が海洋民族であることを知りますが、それが単なる海洋民族というだけでなく、世界に類を見ない美しく長い海岸線に囲まれた海洋国家、海洋大国であることを痛感させられるのです。
長い間、日本は東洋の小さな島国に過ぎないとよく言われてきました。
それがいつの間にか、ジャパンアズナンバーワンとまで言われた経済大国の時代も遠く過ぎさり、
かつての繁栄を再び望むかの政策が未だに繰り返されています。
いろいろな機会によく話すことですが、日本の人口、1億3千万弱。
世界の国々で、米中ロシアなどの超大国を除いて、国民人口が1億を超える国など先進国では他にありません。
ヨーロッパの国々はどこも7〜8千万人以下です。
つまり、世界の圧倒的多数の国ぐには、日本の人口の半分以下なのです。
この意味で、日本はどう転んでも大国です。
私の属している出版業界でもずっと危機が叫ばれていますが、
世界の圧倒的多数の国ぐにの国民文学などというのは、
日本の半分以下の市場で成り立っているのです。
成り立っているのかどうかは、難しい例も多いでしょうが、
それでもその環境が当たり前のものとして今も生きているわけです。
こうした意味で、毎度の繰り返しになりますが、
日本という国は、どんなに経済の停滞が叫ばれようが、
少子高齢化の危機がいわれようが、
世界の国々に比べれば圧倒的な規模の国力をいまも備えており、
変化に富んだ海岸線に象徴される豊かな生命環境を持っているわけです。
(何も自然生命の理想論だけでなく、経済面でも国家財政赤字がどんなに膨らんでも莫大な資産を持つ大国です)
土地、風土、地形の多様性、人口を含めた自然生命の豊かさをみれば
政治や経済の失策には確かに失望を禁じえませんが、
厳しい現実がどんなにあろうとも、将来を約束する豊かな資産が今もあることを思えば
何も問題はありません。
この豊かな国土を象徴する
日本海側の海岸線を、
青森から北陸、山陰へと
ずーーっと走ってみたい!
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