世の中には、現行のドルや円以外にも、様々なお金の仕組みがあります。
本書は、人類史上でお金が生まれた経緯というよりも、近代社会で政府発行通過誕生の経緯、金融支配がどのように仕組まれてきたのかを、世界中の事例を紹介しながら、見事に解き明かしてくれています。
ここ数十年の間に、世界各地で起こる国家や企業の財政破綻は、借金が第一の理由ではありません。
負債の多くは、一時的な現象にしか過ぎません。
米ドル一極支配がどのように生まれてきたのか。
旧ユーゴスラビア、アルゼンチンなどが、どのように財政破綻に陥ったのか。
また私たちが知らない間に、巨額の負債を抱えていた国家が、どのように復活を遂げているのか。
自国通貨発行の意味、中央銀行の独立性を保つことの重要性など、国際通貨基金が公然と介入して貶めている実態を知ることができます。
大英帝国と新世界秩序帝国との間には目を見張るような類似点が見られる。主な違いは、英国王室はねらいの達成のために暴力を使ったのに対し、新世界秩序のエリートは金融テロリズムを基調といたという店である。また、大英帝国は、他国を植民地化し、天然資源を奪い、英国実業家たちの工場までそれを船で運ぶことによって建国されてきた。「赤コート兵」侵略の後で、地域文化はぼろぼろにされ、「より進んだ」英国式の生き方に取って代わられた。
対して、ウォール街が支配する新世界秩序帝国は、他国を海外融資や投資で植民地化することによって建国されている。魚をしっかり釣り針にかけた後、新世界秩序の金融テロリストたちは栓を抜き被害者は何の前触れもなくいきなり乾いたところに宙吊りにされ助けを乞う。そこで登場するのが国際通貨基金である。かれらの救済レシピである民営化や貿易自由化を含む緊縮改革は、標的国の天然資源やその他の資源の強奪に相当し、これは新世界秩序のエリートたちの手にわたる。それは大英帝国がより粗野な方法で実現させたのと同じ結果である。
(ボブ・ジョルジュビッチ『クロニクルズ』寄稿記事 エレン・ブラウン『負債の網』より孫引き)
大西つねき 講演資料より
金利を伴うお金で貸し付けをし、ある時急に引き締めを行い破綻させ、値崩れした資産を根こそぎ掻っさらう仕組みは、決してお金そのものの普遍法則ではありません。
世界に溢れている失業者、露頭に放り出されるホームレス、経営に失敗して自殺にまで追い込まれる経営者などは、必ずしも彼らの責任によるものではありません。
本来、経済活動を活発にするために機能するはずのお金が、実体経済の活性化よりも、ただお金を増やすことこそが第一の目的の時代になってしまいました。
「金余り」と言われるほどの時代であっても、より多くのお金を増やすことこそが未だに至上目的なのです。
2019年3月に出た本ですが、本来、世界中がコロナ過に見舞われている今こそ、お金があるべき役割を果たせば平和をもたらすことができるのだと教えてくれる1冊です。
上下二段で500ページにも及ぶ内容ですが、経済に関する本は巷に溢れていながら、これほど実践的で現実的な勉強になる本は初めてかもしれません。したがって、読むのにもとても時間がかります。
決して哲学や経済学書のような難解さがあるわけではありません。ここの説得力ある具体例に驚かされながら、それを飲み込み了解するのに時間がかかるという意味です。
1章1章が、1節1節が、あまりにも濃い本なので、twitterでひとつひとつの切り口を分けて紹介して行けたらと思います。
エレン・H・ブラウン著
『負債の網 お金の闘争史・そしてお金の呪縛から自由になるために』
那須里山舎 本体4800円+税
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます