張り込みを始めて六日目。見当違いかとあきらめかけていたある日、さだ子は日傘を差して出かける。買い物ではなさそうだ。油木刑事はあとをつける。さだ子の気持ちを表現するかのように右に左に日傘が回る。
県庁前の大楠の木を通る。東京紅團さんのホームページによると大楠の木は、現在近くの図書館前に移植されているそうだ。貴重なお写真を拝借させていただく。


祭でにぎわう佐賀市内の商店街で、油木は女を見失ってしまう。


ようやくバスで川北温泉に向かったことを突き止めた油木刑事は、応援を頼んで旅館に乗り込む。この宿の雰囲気が良い。山を背にして建つ、ひなびた木造の一軒宿だ。
二階の廊下で女の風呂上りを待つ犯人の石井(田村高広)。彼は廊下の手摺に腰をかけ草笛で「埴生の宿」を吹く。近づく二人の刑事。かけられる手錠。
「…油木は石井を送りだすと、ひとりで部屋に残った。煙草を出して喫った。腕時計を見た。四時五十分。さだ子の夫が帰ってくる六時前にはまだ一時間あまりある。入口の襖が開いた。さだ子である。柚木を見てびっくりし、部屋が異ったかと惑ったふうをした。宿の着物がまた別人のようになまめかしく見せた。
「奥さん」と柚木が呼んだ。さだ子が表情を変えた。柚木は名刺を出した。「石井君は、いま警察まできてもらうことになりました。奥さんはすぐにバスでお宅にお帰りなさい。今からだとご主人の帰宅に間に合いますよ」……
この女は数時間の生命を燃やしたにすぎなかった。今晩から、また、猫背のけちな夫と三人の継子との生活の中に戻らなけれほならない。そして明日からは、そんな情熱がひそんでいようとは思われない平凡な顔で、編物器械をいじっているに違いない。」原作より
さだ子役の高峰秀子がきれいだ。夫につかえる貞淑な妻から、昔の恋人と逃亡を図ろうとする女への変貌。そして絶望から再びもとの日常に・・・・。当時33歳だったということだ。
暑い夏に映画「張込み」はよく似合う。お袋につれられて見に行ったこの映画の記憶はほとんどない。ただ、女の差していた日傘だけが印象的でございました。
県庁前の大楠の木を通る。東京紅團さんのホームページによると大楠の木は、現在近くの図書館前に移植されているそうだ。貴重なお写真を拝借させていただく。


祭でにぎわう佐賀市内の商店街で、油木は女を見失ってしまう。


ようやくバスで川北温泉に向かったことを突き止めた油木刑事は、応援を頼んで旅館に乗り込む。この宿の雰囲気が良い。山を背にして建つ、ひなびた木造の一軒宿だ。
二階の廊下で女の風呂上りを待つ犯人の石井(田村高広)。彼は廊下の手摺に腰をかけ草笛で「埴生の宿」を吹く。近づく二人の刑事。かけられる手錠。
「…油木は石井を送りだすと、ひとりで部屋に残った。煙草を出して喫った。腕時計を見た。四時五十分。さだ子の夫が帰ってくる六時前にはまだ一時間あまりある。入口の襖が開いた。さだ子である。柚木を見てびっくりし、部屋が異ったかと惑ったふうをした。宿の着物がまた別人のようになまめかしく見せた。
「奥さん」と柚木が呼んだ。さだ子が表情を変えた。柚木は名刺を出した。「石井君は、いま警察まできてもらうことになりました。奥さんはすぐにバスでお宅にお帰りなさい。今からだとご主人の帰宅に間に合いますよ」……
この女は数時間の生命を燃やしたにすぎなかった。今晩から、また、猫背のけちな夫と三人の継子との生活の中に戻らなけれほならない。そして明日からは、そんな情熱がひそんでいようとは思われない平凡な顔で、編物器械をいじっているに違いない。」原作より
さだ子役の高峰秀子がきれいだ。夫につかえる貞淑な妻から、昔の恋人と逃亡を図ろうとする女への変貌。そして絶望から再びもとの日常に・・・・。当時33歳だったということだ。
暑い夏に映画「張込み」はよく似合う。お袋につれられて見に行ったこの映画の記憶はほとんどない。ただ、女の差していた日傘だけが印象的でございました。