どうでもいいこと

M野の日々と52文字以上

尖閣諸島・衝撃の記事

2013-02-19 15:02:08 | インポート
なんてタイトルだとさも偉そうなのだが、日経ビジネスオンラインにそれこそ衝撃的な記事があった。

中国共産党も知っていた、蒋介石が「尖閣領有を断った」事実

この記事なのだが、チャイナウォチャーの遠藤誉筑波大学名誉教授が書いている。本来物理学者だが、中国研究で社会学者でもある。彼女の著作や記事はかなり参考になる物ばかりで、深い評論を広げている。もともと中国長春市生まれで、7歳の時に中国国民党が支配する長春市が共産党軍に包囲され、その中から命からがら脱出したと言う経歴があり、「チャーズ 中国建国の残火」という著作にその事件をまとめている。

今の中国は中共合作で日本を追い落としてからの内紛で、様々な事件があった。長春市の包囲事件では30万人が餓死したと言われている。この原体験からだろうか、彼女の分析にはイデオロギー臭がなく、あくまで中国の権力闘争の構造そのものに迫ろうとしている。

さて今回の記事だが、カイロで中国国民党蒋介石とルーズベルト大統領が密談した折に、ルーズベルトが沖縄を中国に渡すと言う提案をしていたが、蒋介石がアメリカとの共同統治にしたいといって、事実上断っていたと言うものを、2008年に中国の雑誌が発表し、その記事を「中国共産党新聞網」「新華社網」が転載していることを、見つけたと言う話しだ。

この中国国営新聞と共産党機関紙が、この件を載せたと言う意味は何なのだろうか。台湾の中国国民党には尖閣諸島を主張する権利が無いと言いたいのだろうか。他に意図があるのだろうか。とにかく異常な記事なのは間違いない。

中国国民党が台湾に逃げて、中国本土を支配した共産党は、しばらくの間国際的に認められていない国家だった。国連常任理事国も1971年に台湾の中華民国から中華人民共和国にようやく移るのだ。ただ国内事情はともかくとして、国外との約束は、中華民国から引き継がなければいけない。例えば中華人民共和国は日本との間に賠償問題はない、と言う事になっている。これは蒋介石が賠償問題を破棄したからだ。日本はこれに対して倫理的な問題から、中国に対してODAなどで経済援助を行って来た訳だ。

ここにある「琉球諸島」だが、この範囲はその後アメリカが占領した範囲と同じと考えてもいいだろう。つまり尖閣諸島を含んでいるのだ。記事の中では蒋介石が後で後悔した、となっている。単純に後の祭りだったと言うより、異議申し立てが出来ない約束であったと考えられる。

日本が中華民国に台湾の原権を返還した時の条約に、領有範囲が書かれていないと言う問題がある。これはまだ国民党が中国本土の主権を主張していた事があり、下手に返還される範囲を決めるとその範囲のみの国家になるのを嫌ったためにそう書かれている。尖閣諸島の問題ではない。

さて中華民国は、尖閣諸島の領有権を主張出来ない、そう中国共産党が言っているように見える記事だ。だが現在の中華人民共和国は、過去に約束した中華民国の対外政策を守らなければいけない。その上「一つの中国」を主張する上で、この話しは大きな矛盾となっている。

確かに国連復帰直前に領有権を言い出しているのは、異議申し立てとしてはいいタイミングであった。だが、古い地図にも尖閣諸島は日本の領土と書き続けていたのと、1949年の周恩来の尖閣諸島を沖縄県所属と認めた発言などもある。それらの歴史を一切合切認めない中国だが、これを表に出してしまったと言うのは。
日本にとっては敵失だ。だがこういった記事を出してしまう中国の衒学趣味と言おうかなんと言おうか、共産党の優位を出すために、小物・蒋介石と書きたいのだろうが、全く違う話しになってしまっている。


会員制の記事だが、読む価値は大だ。またその中国のネットでも当確記事は削除されていないようだ。