![]() | 三洋電機 井植敏の告白 (日経ビジネス)大西 康之日経BP社このアイテムの詳細を見る |
本書は、2006年4月から10週間にわたって『日経ビジネス』誌で連載した記事を加筆修正したもの。当時、私は同誌連載中の記事は全部読みましたが、単行本になったものを手に取ったのは今回が初めてです。
著者の大西康之氏の取材構成力には驚かされます。100人を超える三洋関係者から話を聞いたという。経歴を見ると1965年生まれ。東京三洋電機が6年目、私が高校生の頃に生まれた人だ。本書発行時は41歳。早大(法)卒業後、日本経済新聞社入社。記者として98年から2002年までは英国ロンドンに駐在。欧州ではユーロが導入されルノーが日産自動車に資本参加するなど経済界ではビッグニュースが多かった時期の渡欧経験者だ。
再生を期して女性ジャーナリストを会長兼CEOに迎え入れたことを、カルロス・ゴーンが日産に乗り込むときでさえフランスルノーから腹心3人と15人の部課長を連れてきて分刻みでの仕事ぶり、と厳しい比較記述をしている。
三洋電機には優秀な社員は少なくない。米アップル社の創業者スティーブ・ジョブスと掛け合った三洋のオーディオ開発者たち。ネットからのダウンロードによる音楽配信の着想は三洋側から提案された。iPodの原型ともいえるコンセプトはすでに三洋開発陣にあったということです。消費者ニーズを目ざとく商品化してきた三洋の「天賦の才」には著者も素直に評価しています。
著者大西氏は「あとがき」で、「勤勉で実直な人々が誠実にモノ作りに励んでいる三洋電機の姿は、日本の平均的な製造業・・(略)いつの日か三洋電機がかつての輝きを取り戻しますように。名門企業の復活に本書がわずかでも貢献できたなら・・」の言葉を贈る。
本書は、三洋関係者にとっては途中で読むのがつらくなるほどの苦(にが)い内容。しかし有力ジャーナリズムの編集発行した一冊。一度は目を通しておかなければならないでしょう。
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