今年も「原発」と「拉致問題」には、強い関心を持ちつづけます。どちらも日本として緊急に解決しなければならない大きな問題だと思うからです。
原発関係の本2冊読む
『原発と大津波 警告を葬った人々』(添田孝史著・岩波新書)
津波に焦点を絞り、幅広い視座のもと産官学共同体の無責任体制に鋭く切り込んだ視点が、東電福島第一原発崩壊の必然性を描出し、日本の病巣をえぐりだした注目の書(東京新聞2014/12/28書評)。
原子力産業で地震学の科学的予見は、なぜ活かされなかったのか。その後のプレートテクトロニクス理論導入期において、どのような議論で「補強せず」の方針が採られたのか・・。プレートテクトロニクス理論とは1967年に地球の表面が全部で10数枚のプレートで敷き詰められてて年間数センチづつ離れたり近づいたりしていることが周知となった理論のこと。
「阪神・淡路」の教訓も活かせず
著者、添田氏は基礎工学専攻のサイエンスライターだけに、具体的な数値と実証データをもとに論を進めている。それだけに真実がはっきり示される。
阪神・淡路大震災でも「日本の構造物は安全」といわれていてあの惨事。3.11原発震災では、大津波の起きる可能性は指摘され原発の安全性についても対策がとれていたはずなのに・・。2008年、津波地震について「無視するのも一つ」と発言した東大名誉教授もいた。本書は、どうしょうもない無責任な、おエラい人々の存在をリポートしている。
![]() |
原発と大津波 警告を葬った人々 (岩波新書) |
添田孝史 著(科学フリー記者) |
|
岩波書店 |
エネルギー転換で経済成長へ
もう一冊は『原発に頼らなくても日本は成長できる』(円居総一著・ダイヤモンド社)。暗い気持ちになっていた後につづけて読んだせいか、こちらは元気が湧いてきた。試算データ上も原発はコスト安で安定供給できる電力でないことを証明。あらかじめ利益を積み上げした「総括原価方式」や発送電一体の独占状態を改革が必要。脱原発で関連市場を喪失するようなことは無い。将来性の高い代替エネルギーへの転換で単なるエコに留まらず「EcoーGrowth」(エコ成長)として捉えられ、国連のデータからも世界的に雇用が増大できる。
商業原発は安保上必要か
核と国防との問題については、原子炉研究所の人材は確保する。しかし大型商業ベースの原発の継続性の必然性は見出しがたい、と。設置地点は公然と知らされ露出されている原発。これらをこれからも増設すると言うのは、標的にこそなれ国防上も理がある策と果たしていえるのだろうか。
2冊とも良い本でした。前者はこれまでの暗い誤りだらけの原発産業の問題点を指摘、後者は原発に頼らない成長パスで日本復活をめざすために技術面、財政面から代替案を提起しています。読む順序も合っていました。
![]() |
原発に頼らなくても日本は成長できる |
円居総一 著(日大教授) | |
ダイヤモンド社 |