『文学界』12月号を読みました。
特集は「文学部不要論を論破する」。
立花隆(東大文学部卒)が、「文科省が日本人をバカにする」と先頭で「論破」。
先に文部科学省が国立大学文系学部の見直しを、各大学に通知したことによる。
やり玉に挙がったのは教員養成系や人文社会科学系。「社会的要請の高い分野に転換を」とした。
まさに成果主義、実学偏重のお上(官僚)や財界の見方だ。
「学問分野が近視眼的な実学分野ばかりになったら日本人の教養レベルはガタガタになる」(立花隆)
東京大学では、2000年入試から漢文は必要薄の空気から従来の散文、漢詩の2問から1問に減らしたという。西欧では今でも学生に、実用的ではないようなギリシャ語やラテン語、ユークリッド幾何学を学ばせている。目の前の実用性に眼を奪われていたら日本は滅びる、と立花氏は警告する。
原子力を学ぶものに倫理は必須
「人文系の果たしてきた役割はだれも否定しない。なくすのに賛成かと問われたら反対に決まっている。文系で数学を学んだり、理系が倫理を学んだりと垣根を外すことをやってきた。例えば原子力をやる人が倫理を知らないとだめだ」とは奥野武俊氏(大阪府大前学長)のお話。(東京新聞)
原子力をやる人が文系学問の倫理学を知らないとだめだの言葉は、まさに今日的です。本当に再編を考えるなら、理系も含めて総合的に見直さなければならないでしょう。学問の「学」としての系統性も見いだせないカタカナひらがな学部学科のあり方。学歴ロンダリングと官僚天下りのための過剰な大学院の設立、学生本位でなかったロースクール制の実態等々問題は山積。国立大学の人文社会科学系だけを問題視するのはどうかしています。まずは文科省自体を“再編”しないと。
![]() |
文學界 2015/12 |
文学部不要論を論破する | |
文藝春秋 |