小学生の孫に「笑いながら怒ってみよう」といったら二人とも、とても妙な顔になり、大笑いしました。
それというのも、「笑って怒るは私、デーケンでもでけんです」と死生学の大家、アルフォンス・デーケン先生が語っていたからです。
職場でも家族でも一人が腹を立てて怒鳴っていたら暗い雰囲気になる。しかしユーモアと笑いは心の安全弁としての機能を果たし周囲の人たちにやさしい愛と思いやりを示す。外国のホスピスへ行くと実に明るくユーモアに満ちている、と。
『よく生き よく笑い よき死と出会う』アルフォンス・デーケン著(新潮社 2003年)を読みました。あつい信仰心を持つ友からの推薦図書です。
期待通りの良い本でした。
「死生学」の入り口を知りました。それに著者、アルフォンス・デーケンの人生がすごいことにも。
病気の4歳の妹が、子供なりにも心の準備ができていて最期に家族一人ひとりに「さよなら」と挨拶を交わし「また天国で会いましょう」と小さいがはっきりした声で言い、息を引き取ったシーンは感動的で涙が出ました。著者はその時8歳、初めての身近な死。
ドイツ人ですが著者の一家は、みな「反ナチス」。それだけに連合軍がやってきたときは祖父が歓迎の白旗を振って出迎えた。しかしなんと祖父は目の前で連合軍の兵士に射殺される。連合軍といえども父の高級時計は取り上げられ、若い姉が司令官の命でレイプされそうにもなった。戦争の生死と狂気をまざまざと見せつけられた。
著者が日本に興味を持ったのは豊臣秀吉のキリシタン迫害で殉教した長崎のルドヴィコ・茨木という当時12歳のキリスト教少年の伝記を図書館の本で読んで感銘したからとか。
来日してからは上智大学の先生として「死生学」の研究に取り組む。死とは何か? 死を不吉で避けて通ろうとしていた70年代当時の日本の風潮に「死生学」という新しい学問の概念を定着させた功績は大きい。
「人間は死に向かって歩き続ける旅人なのです」と著者。さあ一緒に「笑いながら怒ること」に挑戦しましょう(笑)
よく生き よく笑い よき死と出会う | |
アルフォンス・デーケン著 | |
新潮社 |
A.デーケン博士--「死とは何か」