ポポロ通信舎

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農学者、李登輝を悼む

2020年07月31日 | 研究・書籍
1949-1987年まで戒厳令下にあった台湾を1996年の総統直接選挙で台湾民主化を確実に実現させた李登輝元総統が亡くなった。「全世界の政治家の中で、唯一尊敬できるのが李登輝だった」と高く評価し哀悼しているのが漫画家の小林よしのり(以下よしりん)。

私が李登輝について詳しく知ったのは、よしりんの『台湾論』だ。本書の発行は、台湾では焚書騒ぎになるほどの反響でよしりんも一時は入国を拒否されていた。

その後、台湾でよしりんが李登輝と会食したとき、彼は自分の愛する母国の農業政策について饒舌に語ったという。李氏は石川県出身の水利技術者八田與一(はったよいち)の功績を称えた。八田與一は、現代の私たちにはあまりなじみのない人だが、今でいえばアフガンの治水に貢献した中村哲医師のような功労者であったと想像できる。
八田與一は用水・灌漑のダム設計で広大な土地への給水が実現し、台湾の農民に「三年輪作」の教育と指導をした。八田夫妻の銅像は国民党支配下でも地元の人たちが命懸けで隠し保管し続けたという。そのことを農業経済学者でもある李登輝が熱っぽく話したのだ。若き日に日本の大学で農学を学んだという氏にはとても親しみを感じる。

『台湾論』の中では李登輝については「国際舞台から見離され、国家として認知されず中国大陸から武力威嚇を常に受け続ける台湾に出現した偉大なリーダー」と紹介されている。台湾を取り巻く厳しい情勢は依然変わらないが李氏の志は今、確実に蔡英文総統に受け継がれている。

台湾統治の歴史はオランダから始まり鄭(てい)氏政権、清国、日本、国民党と変遷してきた。
李登輝他界の後も台湾の民主主義が絶えることはないと確信したい。 合掌。





 
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