昭和53年、福岡市の大渇水を機に計画された五ヶ山ダム事業。あれから35年、その工事が今急ピッチに進んでいる。今月1日、付替道路が開通。それと同時に、ダムの全容が見えてきた。そもそもこの五ヶ山ダムとは、那珂川の上流に位置し、筑紫郡那珂川町大字五ヶ山(標高約600m)の南畑ダムと脊振ダムの間に建設されているもので、総貯水容量は4,020万立方メートル。想像しにくいが、これは実に黒部ダムの約5分の1の水量になる。1000m足らずの脊振山(標高1055m)の麓に、これだけ巨大なダムができることを、どれだけの福岡市民が知っているのだろうか。
福岡県は、五ヶ山ダム建設の第一の理由を、福岡市民の水を確保する為だと言い続けてきた。しかし、福岡市では、平成17年から海水淡水化事業を開始、また配水技術の向上や節水の徹底などにより、現在約70万㎥/日の供給能力を持つ程になった。需要は約40万㎥/日とされているから、水は十分足りているのである。治水面においても、那珂川床上浸水対策には土木事務所も自信をもっていると聞く。福岡市では、地下に巨大な水槽を作る計画もあり、その対策は着々と進められている。更に、近年のゲリラ豪雨は局地的であり、ダムで洪水を防ぐことはできないとも言われている。何より、脊振山麓に根付いた木々こそが、治水の役割を果たしてくれる。自然の脅威は自然で守る、これに尽きる。にも拘らず、それらを根こそぎ剥ぎ取り、掘りおこした結果、自然豊かだった山麓は、見るも無残な姿に変わり果ててしまった。これが後に、災いとなって我々に帰ってくることは、最近の自然災害を見れば容易に想像できる。1000億円にも上る税金を投入して、わざわざ自然を破壊してゆく。何と愚かなことだろうか。
《追記》2016.3.10
下のコラム。福岡市の水が足りていることを証明しているようなものだが、さすがに福岡市が100%出資する財団法人福岡アジア都市研究所だけあって、そこは触れずに五ヶ山ダムの出現を心強いといい、これからも節水への取り組みは必要だとまとめている。ここは、節水型都市としてダムに頼らないまちづくりをめざす、と書くべきところだと思うが。
福岡アジア都市研究所 リレーコラム 14. 節水型都市への発展
付替道路開通 様変わりした五ヶ山周辺
橋脚と橋脚の間に”夫婦杉”のてっぺんが見える
上の写真 ダムが完成するとこうなる そこに”夫婦杉”の姿はない
巨大なダムサイト 施工は鹿島・飛島・松本組JV
五ヶ山ダム全容 オレンジと黄緑は付替道路 水色の部分が水没するところ
坂本峠側(南側)から五ヶ山方面を見たところ ここも全て水没する
佐賀県が昭和31年に天然記念物指定した、樹齢700~800年の小川内の”夫婦杉”
夫婦杉の根元 幹は3本くっついており”親子杉”とも言われている(写真左端)
これが水の底に沈んでしまう
《追記》
「小川内の杉」の移植保存が決まりました。詳しくはこちら。
「小川内の杉」の移植がはじまりました。詳しくはこちら。
《関連資料》