9月中旬、ふと気になって五ヶ山にある「小川内の杉」の様子を見に行った。このところ慌ただしくしていたので、なかなか掲載できなかったが、ようやく記事をアップすることができた。五ヶ山ダム現場では、ダムサイトの骨組みがわかるようになり、予想していたよりも工事が進んでいた。一方、そこで働く人の言葉(本音)はやるせないものがあった。そんな中、これからどういう運命を辿るかわからない「親子杉」と道端の小さな花達が、私の心を癒してくれた。が、彼らは必死に”何か”を訴えているようにも見えた。
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「小川内の杉」へと行く道は、五ヶ山ダム工事で通行止めになっているため、歩いてゆかなければならない。写真を撮りながら、かつての村道をぼちぼち歩いていると、人などいるはずもないと思っていたのか、工事関係者の車が猛スピードでやってきた。慌てて避けたが、危うく引かれそうになるところだった。(下に証拠写真)まるでゼネコン専用道と化してしまった道には、手入れされない雑草が蔓延り、人がいなくなった村を余計に寂しくさせた。暫くすると、ダム工事の為に整備された道路下の土手から湧水が、まるで行く場所を求め彷徨っているかのように、道に流れ出していた。
何とも虚しい思いで歩いていると、ダムの為に新しく架けられた佐賀大橋の袂に、「小川内の杉」の先端が見えてきた。現地に着くと、見慣れた滝には変わらず清らかな水が流れていた。階段を駆け上がると(ここにはかつて神社があった)、わずかに残された森に堂々と鎮座する「小川内の杉」(別名親子杉)の元気な姿があった。辺り一面に草が生い茂っていたが、その中でしっかり生きていた。佐賀県は今年3月、福岡県が提案していた「小川内の杉」の移植保存に同意。予定では、15年9月から16年2月にかけて、移植の準備にとりかかるという。しかし、工法や移植地は決まっていない。世界的に異例とされる小川内の杉移植は、果たしてうまくゆくのか。(地元の人は皆、無理だといっているが)何はともあれ、樹齢700~800年とも言われる命が、人間の都合で失われるかもしれないのだから、これほど愚かなことはない。
帰り道。ダム工事現場から発破の音が鳴り響いていた。そんな脅しにはのらないよと言わんばかりに、道端には可愛い花がいくつも咲いていた。人に見られることもないだろう花に向かって、思わず「ダムの底に沈むまで精いっぱい生きて」とつぶやいた。最後、車を止めさせてもらった(五ヶ山で唯一残った)お店の方が口にした、「ダム工事現場の人もよく来るけど、皆、どうしてこんな大きなダムをつくるのかと言ってるよ」。これには返す言葉もなく、ただやるせない思いを引きずりながら、五ヶ山を後にした。
急ピッチで進む工事現場(写真右にダムサイト)
ダムサイト詳細図
かつての村道に蔓延る雑草 ここもいずれダムに沈む (写真中央にダム工事現場)
猛スピードで駆け抜ける関係者の車
小川内の杉 橋を貫く
小川内の杉(3本の幹が繋がっているので親子杉ともいわれる)
寄り添う「親子杉」
空を仰ぐ(真ん中に親子杉)
小川内の清流
昔と今と
~道端に咲いていた花達~
愛らしい、ツバメオモト
形がユニークな、ツリフネソウ
南畑ダムのそばで