現在、建設中の五ヶ山ダム(福岡県)によって水没危機にあった佐賀県天然記念物「小川内の杉」。福岡県はこれを保存する方向で協議、平成25年3月、佐賀県に移植申請を行っていたが、この程、佐賀県教育委員会から許可が出され、その移植場所や工法が明らかになった。報道によると、移植は来年2月をめどに行われるというので、さっそく現地へ向かった。
五ヶ山・小川内地区を訪れるのは、おそよ1年9ヵ月ぶり。ダム工事が進むにつれ、かつての面影が消えてゆく中、「小川内の杉」が鎮座する山祇(やまづみ)神社跡は、唯一、それを感じさせる場所だった。ところが様子は一変していた。そこでは既に移植のための準備が始まっていた。この日は休日にもかかわらず、樹木医や造園業者、特殊重機関係者の打ち合わせが行われていた。遠くからその様子を眺めていたところ、幸運にも(了承を得て)敷地内に入ることができた。
久しぶりに対面した「小川内の杉」は、幹に養生が施され、四方ロープが張られていた。周囲の山は削られ、斜面には土が盛られていた。「小川内の杉」は、別名親子杉と呼ばれ、3本の幹が根元でつながっている。重量は400トンにもおよぶ。それらの根元を鉄枠で保護した上で、ジャッキで持ち上げ、山の斜面に敷かれたレールに乗せて運ぶという。現場は、この工程に向けて工事が進んでいた。
佐賀県教育委員会文化財課は、移植先は日当たりが良く、移植に適した場所と楽観的だが、そう簡単にいくとは思えない。樹齢700年以上の巨木が、果たしてきちんと根付くことができるのか。これほどの巨木を移植するなど、世界的にみても例がないという。事実、この日、関係者の方から直に話を聞いたが、移植作業はかなり難しいものになると述べておられた。総事業費1000億超の税金を投入して不要なダムをつくり、その上、8億かけて無謀な移植を行う。さらにいえば、自然を壊したところに自然がなくなったからと、ビオトープをつくる。こんな馬鹿げたことをやっている国など他にはないだろう。五ヶ山ダム建設の問題点は指摘されていたが、それでもこうなってしまったからには、移植は成功してもらわねばと思う。われわれ愚かな人間のために犠牲を強いられる「親子杉」のためにも。
撮影日:2015.7.5
突如、現れた巨大な堤体
安全安心?
小川内地区 ここに人の暮らしがあった
現場(了承を得て撮影)
小川内の杉
ここから運ばれる
エアレーションか
特殊重機を使って調査
かつての清流
看板は昔のまま
親子杉
移植場所は新山祇神社(写真左上)の横
ダム建設最前線
ダムサイト最上部 巡航RCD工法で超スピード施工
無用の産物
小川内地区の村道脇に
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県天然記念物の杉移植へ 五ケ山ダム建設で水没予定(西日本新聞25.6.19)
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