17日、福岡市で3人目の感染者が確認された。九州大学の30代女性留学生で、ゼミ実習のため渡欧していたフィンランドから今月9日に帰国後、発熱。それから約1週間後に陽性が確認された。福岡市での感染者確認は約1ヵ月ぶりである。この夜、NHK報道終了直後、待ち構えていたように、高島市長がツイッターで「感染しても多くの方が軽症もしくは無症状。感染者数に過度に敏感になるより、重症者、ハイリスク患者の命を守るために医療崩壊を防ぐことを重視することが大切」と呼びかけていた。さて、これはいかがなものか。
こちらは何も感染者数に敏感になっているわけではない。保健所の相談数に対して検査数があまりに少ないから、疑心暗鬼になっている。とにかく高島市長は、「感染しても多くの人が軽症か無症状」を繰り返している。軽症だから騒ぐな、家でじっとしていろと言いたいのだろう。福岡市の広報紙「福岡市政だより」でも、発熱がある人は自宅で療養するよう勧めている。だから、帰国者・接触者相談センター(保健所)に相談しても、検査してもらえない感染者が大勢いるのではないか。相談数と検査数の大きな開きはその表れだろう。しかし、そうしている間に重症化し、亡くなる人もいる。今の検査体制自体がハイリスク患者をつくり出しているではないか。
東北大学の押谷仁教授は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、上気道(喉)でも下気道(肺)でもウイルスが増えるため、上気道でウイルスが増えている人は、症状は比較的軽く、インフルエンザと同程度かそれよりも軽く済む場合もあり、症状がまったくない人も存在するという。それに対し、下気道でウイルスが増えている人は、重症化する可能性が高く、重症化するとSARSと同じように重症のウイルス性肺炎を引き起こす。重症のウイルス性肺炎は治療が困難であり、これが日本でも死亡者が発生してしまっている原因だという。こうした人を早期に見つけ出すためにも、検査は必要なのではないか。
神戸大学の岩田教授(感染症内科)も検査を徹底すべきだとしている。ただし、必要な時としている。闇雲に検査しろとは言っていない。仮に検査で陽性であっても軽症なら自宅で療養させてもよい(検査をしていない人も同じことだから)とも言っている。これなら医療崩壊は起きない。問題は白か黒かはっきりしない人が多いこと。そこで、福岡市の日ごとの検査数を見ると、軒並み一桁台。これまで帰国者・接触者相談センターの相談件数は約6700件、それに対し検査数は約160件と2%にすぎない。つまり、発熱が4日間続いて相談した人の98%が検査を受けていないことになる。こんなことで大丈夫なのか。
高島市長は、重症化した人の命を救うために医療崩壊させてはいけないと言っているが、逆ではないか。重症化しないために早期に検査を行う。ハイリスクな患者が少なくなれば、医療崩壊はしないのではないか。臭いものに蓋をするような今の検査体制では、コロナウイルスを拡大させても、終息させることはできないのではないか。
福岡市は17日、新型コロナウイルス感染症ポータルサイトを開設した。これで、日ごと/累計の検査数や相談件数がわかる。
福岡県も19日から新型コロナウイルス感染症の感染動向データを公開。(3月20日更新)
検査実施数/日別(1月28日~3月17日)
17日の検査数は10件(陽性患者が出たので多め)、大体一桁程度、ゼロの日も
帰国者・接触者相談センター件数/累計(1月27日~3月16日)
16日までの相談件数は約6700件、検査数は約160件(下図参照)
検査実施数/累計(1月28日~3月17日)
左目盛りの単位に注目 相談件数グラフと1桁違うが、、
錯覚する(検査数が多い)ような表示の仕方に意図的なものを感じるのは私だけか、、
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・福岡30代外国人女性の感染確認(NHK福岡ニュース 2020.3.17)
・医師の警告…新型コロナ「軽症・無症状でうつす人」が増加の危険性(現代ビジネス2020.2.25)