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博多陥没事故~ふたたび沈下

2016-11-29 17:49:39 | 博多駅前陥没

陥没場所での地盤沈下は専門家会議で指摘されていたことだが、それは予想以上に早く起きた。福岡市は、15日の通行再開後、地盤調査のためボーリング調査を実施していたが、地盤沈下はその最中に起きた。市は沈下の原因について、流動化処理土下部での地盤の緩みが道路解放後に圧縮されたことによるものと説明している。さらに、沈下量は平均38ミリ(最大70ミリ)と想定の範囲内に収まっており、安全性に問題はないと判断、すぐさま通行を再開させた。

福岡市が予定していたボーリング調査は5ヵ所。そのうち4ヵ所が25日までに完了していた。(下図参照)その結果、最大で平均80ミリ程度の沈下が予測されることがわかった。しかし、これが公表されたのは沈下後だった。事故が起きたあとに、「想定内」だから安全性に問題はないと言われて納得する市民がどれほどいるだろう。しかも、当日(26日)の会見は交通局建設部長と事業者だけで行われ、高島市長の姿はなかった。本人はといえば、ただひたすらSNSで他人ごとのようにメッセージを発信していた。ようやく28日の定例記者会見で市民に謝罪するも、「事前に想定していたことを沈下した後に聞いても市民の納得感にはつながりにくい」と当事者でありながら、交通局と事業者の対応を批判。最高責任者としての自覚はまるでない。(今にはじまったことではないが)

復旧作業の早さが世界中から称賛されていた矢先の地盤沈下だが、専門家からは、流動化処理土の下に崩落した土砂がそのまま残っているため、地表を車が長期間走り続けると土砂が沈下し、再び陥没が起きる恐れもあるとの意見が出ていた。まさに今回、指摘されていたこと(前者)が起きた。また別の専門家(地盤工学)は、埋め戻しが突貫だったこともあり、流動化処理土が陥没でできた空間に十分に行き渡っていない可能性も否定できないと指摘している。市は安全性が確認されたと言うが、埋め戻した部分やトンネル内の調査が行われたわけではないのだから、安心はできない。(事故発生直後に下水道管の破断で流れ込んだ下水が硫化水素を発生させた恐れもあり、今は人が入れない状況)もしかすると、今回の地盤沈下は新たな陥没の前兆ではないのか。それを否定するような材料は見当たらないが。

福岡市は24時間体制で路面沈下のモニタリングを行うとともに、これまで3時間に1度行っていた作業員による目視を増やすなど、監視体制の強化を図るという。まさに現場は綱渡り状態だ。道路が閉鎖されれば市民への影響は大きいだろうが、ここはきちんと検証した後、通行を再開させるべきではなかったのか。人的被害が出てからでは遅いと思うのだが。 

 

撮影:2016.11.29

はかた駅前通り 車線を減らし人が主役の通りに変わる予定 陥没事故はここで起きた

 

 

 

 

 

 陥没現場 博多駅側(陥没は赤ラインから先) 

 

 

 

 

 

 博多区役所側(陥没は赤ラインから先) すぐそこに博多駅(写真右)

 

 

 

 

 

セブンイレブン前(紙与駅三ビル1F) 沈下部分 縁石との間に隙間が生じている

 

 

 

 

 

アパマンショップ前(タカキビル1F) 陥没の跡 ジョイント部分にクラークが

 

 

 

 

 

道路脇に設置されたモニタリングカメラ 24時間体制で監視

 

 

 

 

 

作業員(大成建設)による目視(オートレベル使用)

 

 

 

 

 

 ボーリング位置図(福岡市交通局資料)

 

※残る1カ所のボーリング調査結果で沈下量の予測が変化する可能性もある(現在、データ分析中

 

  

《関連記事》

博多駅前陥没現場沈下 最大7センチ 一時通行止め(西日本新聞 2016.11.26)

博多陥没:最大深さ7センチ、福岡市「沈下は想定内」 (毎日新聞 2016.11.26)

 

《関連資料》

福岡市HP。博多駅前2丁目交差点付近における道路陥没事故に関するお知らせ

福岡市交通局HP。路面沈下に関する情報

 

 


「小川内の杉」移植から7ヶ月

2016-11-21 12:49:44 | 五ケ山ダム

今月16日、五ヶ山ダム周回道路(新倉谷七曲線)をひとまわりした後、「小川内の杉」へ向かった。先月から気になっていた子供杉は、黄色く変色した葉が落ちて、少しスリムになっていたものの、特に変わった様子はなかった。

この日、保護枠(鉄枠)の周囲を重機で掘り返していたので、何事かと尋ねたところ、移植の際に土を固め過ぎていたので、軟らかく解しているのだと言われた。暫くすると、管理者(森園芸)の方が来られたので、杉の状態を確認したところ、今のところ問題はなく、元気だと言われた。この時期、杉の葉は黄色くなって枯れ、自ら不要な葉を落とす。これは異変ではなく、生きてる証拠だった。まずは一安心、あとはしっかり根付いてさえくれれば。

 

撮影日:11月16日 

子供杉 黄色の葉は落ちて

 

 

 

 

 

 

保護枠の外側の土を解す作業

 

 

 

 

 

親杉の葉も落ちて 小さく見える 

 

 

 


五ケ山ダム現地報告~新倉谷七曲線開通

2016-11-20 16:41:44 | 五ケ山ダム

今月7日、五ヶ山ダム建設によってダム湖に水没する町道の付替え工事が完了し、新倉谷七曲線が供用開始となった。五ヶ山ダム試験湛水がはじまって約1ヶ月、その状況も気になるところ、早速、現地へ向かった。

南畑ダム入口(グリーンピア那珂川)からしばらく上ると、大きくカーブした桑河内大橋が見えてくる。そこから開通したばかりの新倉谷七曲線へと向かう。まず見えてくるのは、那珂川町(平成30年10月市制施行)が進める「五ヶ山水源地域公園事業」のひとつ、「桑河内ふれあい公園」予定地。山を大きく切り開いてつくられた巨大なスペースは、オートキャンプ場になる。広い法面には植栽が施される予定となっているが、今年6月の豪雨では、ここで土砂崩れが起きた。いかにも軟弱そうな地盤だが、大丈夫だろうか。

そこを通り過ぎ、新品の「五ヶ山ダムトンネル」を抜けると、突如、五ヶ山ダムが現れる。見ると、水は予想以上に貯まっていた。あたりは所々で紅葉が見られた。以前は、山一面が赤や黄色に染まっていたが悲しいかな、今はその姿はない。少し先に眺望の良いところがあるが、そこに展望所(倉谷展望公園)ができる。ダムの反対側に目を向けると、辛うじて難を逃れた山が迫っている。そこにはいくつもの杉が折り重なるように横たわっていた。これから山はもっと荒れていくのではと、心配になる。

少し進むと、原石山が見える。ここの原石を使ってコンクリートが造られたわけだが、五ヶ山ダムに使用されたコンクリートの総量は92万5千m3。確かに山は原形を留めていない。自然をぼろぼろにしておきながら、自然を大事にしなくてはと福岡県。ダム湖の奥まったところにいくつかビオトープをつくるという。本末転倒だろうに。

新倉谷七曲線には、いくつもの橋が架けられている。5個目の橋を渡ったところで急カーブし、そこを通り過ぎると、ふたたび五ヶ山ダムが姿を現す。水は割と早いペースで貯まっているように感じるが、ダム湖内では、まだあちこちで作業が行われていた。写真を撮っていると、背後から水の流れる音が聞こえた。見ると、山の奥から水が流れている。近くの斜面には養生シートが張られ、土嚢が置かれていた。ここでも土砂崩れが起きていた。

五ヶ山は脊振山系の端に位置し、東側には九千部山がある。福岡管区気象台によると、那珂川流域の年平均降雨量は約2000㎜、九千部観測所では約2400㎜と多い。山は水が豊富だ。しかし、ダム建設のために山は削られ、多くの木が伐採された。そのため、行き場を失った水があちこちで溢れている。何と無残なことか。

この日、新倉谷七曲線(ダム周回道路)をひとまわりしてみたが、車は殆ど走っていなかった。今後、ダムの観光化を目指す、那珂川町(一部、福岡県)によって、道路周辺の整備が進む。 果たして、どれだけの人がここを訪れるのだろうか。(この後、「小川内の杉」へ)

 

 

 撮影日:2016年11月16日、11月20日

桑河内大橋 新倉谷七曲線入口 

 

 

 

 

広大な法面 ここに植栽が施される

 

 

 

 

 

ここにオートキャンプ場ができる

 

 

 

 

 

 桑河内ふれあい公園予定地 手前に大芝生広場、向こうにオートキャンプ場ができる 見えているのは「せせらぎ水路」

 

 

 

 

 

ここを抜けると

 

 

 

 

 

突如、現れる

 

 

 

 

 

選択取水設備(中央)をコンクリートで覆う作業中

 

 

 

 

 

展望所予定地から見る

 

 

 

 

 

ダム湖の様子 橋の向こうに背振山

 

 

 

 

 

まだ川筋がわかる かつての村道も 

 

 

 4日後、川筋は失くなり、村道も沈みつつ(11月20日撮影)  

 

 

 

まだ工事中

 

 

 

 

 

一番奥まったところにビオトープができる 横に林道倉谷線

 

 

 

 

 

荒れ果てて

 

 

 

 

 

この先を右に曲がると 

 

 

 

 

 

ふたたび現れる

 

 

 先週末の雨で一段と貯まっていた (11月20日撮影)

 

 

 

保護材に覆われた原石山(写真中央) ここにもビオトープ(写真手前)

 

 

 

 

 

 

土砂崩れ

 

 

 

 

 

異常な光景

 

 

 

 

 

いつもの風景(写真右にダム堤体) 

 

 

 《関連資料》

那珂川町。五ヶ山ダム水源地域公園等整備基本計画書

 

 


博多陥没事故~一部、工事再開

2016-11-17 17:59:50 | 博多駅前陥没

七隈線延伸工事の他の工区で、陥没事故のわずか3日後(11日)に工事は再開されていた。高島市長は記者会見で「前代未聞」の事故と言いながら、一方で早々に工事を進めていた。今日の日経コンストラクション記事にそれが掲載されていた。事故後、他の工区で緊急点検が行われていたことは承知していたが、まさかこれほど早く再開しているとは思わなかった。しかも、福岡市は工事を再開したことを公表していない。

報道によると、福岡市は今月中にも国の調査委員会の結論にもとづいて再開防止策を講じた後、工事を速やかに再開させる方針だという。事故原因の究明には現場の地質を詳しく調べる必要があり、開業は遅れるのではないかと内部から懸念の声も出ているという。こちらとしては、速やかに再開されるほうが心配だが、何故、福岡市はそんなに急いでいるかといえば、2020年の東京オリンピックに間に合わせたいからだ。果たして、きちんと原因究明されるだろうか。

ところで、大成建設JVは事故が起こる2カ月前に設計変更していた。設計変更は三つ。まず、トンネルの天端の位置を1m下げて掘削断面を縮小した。当初の設計では、トンネルの天端から岩盤層の上端までの距離である「岩かぶり」が約1mと迫っていたからだが、博多駅周辺の不均一な地盤に合っていたかどうか、今後の論点の一つになるという。二つめは、先受け鋼管の長さを当初の設計よりも短くしたこと。先受け鋼管を短くすれば、トンネルの天端近くの地山を支える力が弱まる。そこで設計変更では、トンネルの側面から横断方向に打つロックボルトとサイドパイルの長さを延長し、トンネルの変形を抑えることにしたという。 この設計変更が崩落の引き金になったのではないかという指摘もある。三つ目は、トンネルの掘削の進め方。当初の設計では全断面を一度に掘削する方針だったところを、小径の先進導坑を掘ってから拡幅する工法に変更し、より安全な施工を目指したという。それにもかかわらず、事故を防ぐことはできなかった。

福岡市議会では、共産党市議団が15日、小畠議長に百条委員会の設置を申し入れた。設置の可否については、今後、各会派代表者会議で議論されるようだが、議会は百条委員会を速やかに設置し、しっかり追及してほしい。「前代未聞」の事故が起きたのだから。



工事概要図(福岡市資料)に事故現場を記入 工事が再開されたのは西工区と東工区

 

 

 

 《関連記事》

博多陥没、直前に設計変更するも防げず(日経コンストラクション 2016.11.17)

博多の陥没1週間で完全復旧!世界から称賛の嵐…英紙「日本の職人芸と能率の良さ」(スポーツ報知 2016.11.17)

博多陥没:共産福岡市議団「百条委設置を」 /福岡 (毎日新聞 2016.11.16)


《関連資料》

福岡市交通局HP。七隈延伸事業

大成建設HP

  


博多陥没事故~原因究明へ

2016-11-16 16:53:53 | 博多駅前陥没

”はかた駅前どおり”が通行再開。陥没事故からちょうど1週間、ようやく高島市長の市民への謝罪の言葉を聞いた。復旧は早かったが謝罪は遅かった。気になる原因究明については、中立性や客観性が求められるからと、国土交通省と連携して専門家による第三者委員会において進めるという。どのような形で進められるのかわからないが、きちんと市民に公開されなければならないだろう。

昨日の通行再開については、市民から不安な声も少なくなかった。にもかかわらず、専門家会議の中身は公表されることはなく、市はただ安全が確認されたというだけだった。会議には、大学教授3名と地質専門家1名、国土交通省職員2名の計6名が参加して、現場を視察。すぐさま問題ないとの結論が出た。報道によると、教授らから、流動化処理土の下には崩落した土砂がそのままの状態で残っているため、地表を車が長期間走り続けると土砂が沈下し、再び陥没が起きる恐れがあるという意見も出ていたらしい。これに関して、福大佐藤教授は「空洞ができたとしても、処理土が厚いので、すぐに影響が出るとは思わない。もし地盤が少し緩くなったとしても、薬液を注入するなどの対応をすれば大丈夫だと思う」と述べている。そのためか、市は今後、修復した路面の強度や地下水のモニタリングなど定期的に行うという。これで安全と言えるのだろうか。

昨夜、福岡市役所で大成建設社長の謝罪会見があった。専務は「ほかの場所と比べて地層の予想が難しい地盤で、複雑な地層を完璧に予想するのは困難だった。工事はきちんと行ったと思っているが、施工者としてのまずさがあったかもしれないので、徹底的に原因を究明しなければならない」と述べている。一方で、市と大成建設は、事前の地質調査や設計に問題はなかったと主張している。地下鉄七隈線延伸部の地質縦断図(福岡市資料)を見ると、事故が起きたところの地質は、風化頁岩や砂質頁岩などの軟岩層で、岩かぶりは2~3mと薄い。しかも、地下水位は地表から2.5mのところにある。(下図参照)素人目でも作業が容易でないことは想像に難くない。今後、きちんとした原因究明なくして、工事再開はあり得ないだろう。

 

 

11月15日開通後(左)と11月8日事故後(右)(日刊工業新聞より) 

 

 

  

 

地下鉄七隈線延伸部の地質縦断図。星印の地点をNATMで掘削している際に事故が発生した。図中のbは盛り土や埋め土、asとdAsは砂質土、acは粘性土、dAgは砂れき、Trは風化頁岩や砂質頁岩などの軟岩層。(日経コンストラクションより

 

 

《関連記事》

博多陥没、それでもNATMで掘った理由(日経コンストラクション 2016.11.14)

陥没1週間突貫復旧 博多駅前15日早朝通行再開「固まりやすい土」威力(西日本新聞 2016.11.15)

博多陥没「追加の対応を」専門家指摘(読売新聞 2016.11.15)

 

 《関連資料》

福岡市HP。博多駅前2丁目交差点付近における道路陥没事故に関するお知らせ(随時更新)

福岡市交通局HP。七隈延伸事業