陥没場所での地盤沈下は専門家会議で指摘されていたことだが、それは予想以上に早く起きた。福岡市は、15日の通行再開後、地盤調査のためボーリング調査を実施していたが、地盤沈下はその最中に起きた。市は沈下の原因について、流動化処理土下部での地盤の緩みが道路解放後に圧縮されたことによるものと説明している。さらに、沈下量は平均38ミリ(最大70ミリ)と想定の範囲内に収まっており、安全性に問題はないと判断、すぐさま通行を再開させた。
福岡市が予定していたボーリング調査は5ヵ所。そのうち4ヵ所が25日までに完了していた。(下図参照)その結果、最大で平均80ミリ程度の沈下が予測されることがわかった。しかし、これが公表されたのは沈下後だった。事故が起きたあとに、「想定内」だから安全性に問題はないと言われて納得する市民がどれほどいるだろう。しかも、当日(26日)の会見は交通局建設部長と事業者だけで行われ、高島市長の姿はなかった。本人はといえば、ただひたすらSNSで他人ごとのようにメッセージを発信していた。ようやく28日の定例記者会見で市民に謝罪するも、「事前に想定していたことを沈下した後に聞いても市民の納得感にはつながりにくい」と当事者でありながら、交通局と事業者の対応を批判。最高責任者としての自覚はまるでない。(今にはじまったことではないが)
復旧作業の早さが世界中から称賛されていた矢先の地盤沈下だが、専門家からは、流動化処理土の下に崩落した土砂がそのまま残っているため、地表を車が長期間走り続けると土砂が沈下し、再び陥没が起きる恐れもあるとの意見が出ていた。まさに今回、指摘されていたこと(前者)が起きた。また別の専門家(地盤工学)は、埋め戻しが突貫だったこともあり、流動化処理土が陥没でできた空間に十分に行き渡っていない可能性も否定できないと指摘している。市は安全性が確認されたと言うが、埋め戻した部分やトンネル内の調査が行われたわけではないのだから、安心はできない。(事故発生直後に下水道管の破断で流れ込んだ下水が硫化水素を発生させた恐れもあり、今は人が入れない状況)もしかすると、今回の地盤沈下は新たな陥没の前兆ではないのか。それを否定するような材料は見当たらないが。
福岡市は24時間体制で路面沈下のモニタリングを行うとともに、これまで3時間に1度行っていた作業員による目視を増やすなど、監視体制の強化を図るという。まさに現場は綱渡り状態だ。道路が閉鎖されれば市民への影響は大きいだろうが、ここはきちんと検証した後、通行を再開させるべきではなかったのか。人的被害が出てからでは遅いと思うのだが。
撮影:2016.11.29
はかた駅前通り 車線を減らし人が主役の通りに変わる予定 陥没事故はここで起きた
陥没現場 博多駅側(陥没は赤ラインから先)
博多区役所側(陥没は赤ラインから先) すぐそこに博多駅(写真右)
セブンイレブン前(紙与駅三ビル1F) 沈下部分 縁石との間に隙間が生じている
アパマンショップ前(タカキビル1F) 陥没の跡 ジョイント部分にクラークが
道路脇に設置されたモニタリングカメラ 24時間体制で監視
作業員(大成建設)による目視(オートレベル使用)
ボーリング位置図(福岡市交通局資料)
※残る1カ所のボーリング調査結果で沈下量の予測が変化する可能性もある(現在、データ分析中)
《関連記事》
・博多駅前陥没現場沈下 最大7センチ 一時通行止め(西日本新聞 2016.11.26)
・博多陥没:最大深さ7センチ、福岡市「沈下は想定内」 (毎日新聞 2016.11.26)
《関連資料》
・福岡市HP。博多駅前2丁目交差点付近における道路陥没事故に関するお知らせ