先日、気になるニュースを目にした。今年2月、宮崎県西都市岡富の井戸水から有害性が指摘されている「有機フッ素化合物(PFAS)」が国の暫定目標値を超えて検出された。その後の県の調査で汚染の範囲が西都市と新富町のうち、一ツ瀬川と三財川に挟まれた南北およそ2.5㌔の範囲に広がっていることが分かったというもの。県は発生源が特定できなかったとしているが、果たして本当だろうか。
有害な化学物質といえば、245T剤に含まれるダイオキシンが思い浮かぶが、恥ずかしながら、有機フッ素化合物(PFAS)は知らなかった。調べて見ると、PFAS汚染全国マップがあるほど(まるで245T剤埋設箇所マップのよう)で、全国の河川や地下水で検出されている。
PFASとは、炭素とフッ素などの元素が結合した有機フッ素化合物の総称で一万種以上ある。その中で最も広く使われてきた物質がPFOSとPFOA。PFOSは、1950年代に世界的化学メーカーである3M社により、スコッチガードなどの防水防汚処理剤の原料として開発された物質。PFOAは同じく世界的化学メーカーであるデュポン社により、フライパンの焦げ付き防止などのテフロン樹脂の開発過程で作られた物質。どちらもごく身近に存在しているものだが、PFOSとPFOAは、毒性が強く、難分解性、生物蓄積性、長距離移動性、発がん性があり、人体や環境へ悪影響を及ぼす恐れがあるという。
人への侵入経路としては、主に水と食品。水は水道水から。食品は農作物栽培での土壌から。このほかPFASを用いた製品の使用からも侵入する。今回、西都市で検出されたPFASの発生源は特定できなかったとしているが、汚染範囲のすぐそばには新田原基地がある。基地や空港ではジェット燃料による火災の際、水で消火できないため泡消火剤を使用するという。その泡消火剤にPFASが含まれているのだ。泡消火剤に含まれるPFASは、そのまま周辺の土壌や河川に放出されるため、沖縄の米軍基地周辺の地下水や水道水で深刻なPFAS汚染が進んでいる。宮崎でも同じようなことが起きているのではないだろうか。
先月発行された原田和明氏の「ベトナム戦争 枯葉剤の謎」を読み終え、西都市近郊の山に245T剤が埋設されていることを確認したばかり、今度は移転先近くでPFASが検出されるとは。。
PFOA+PFOS数値。河川は米軍基地がある沖縄県や神奈川県などが、地下水は大阪府、沖縄県、東京都などの数値が高い。最高値(最新)は大阪府摂津市の地下水で21000ng/Lが検出されている。(NHKクローズアップ現代より)※記事は削除されています。
参考記事:大阪・摂津市で日本一のPFOA水質汚染 原因はダイキンの工場
そもそもPFASって何?(暮らしの中の有害物質を科学するより)
主なPEASのばく露経路
※日本ではPFASのうち、「PFOA」と「PFOS」の2種類の物質について、暫定目標値として、1ℓあたり50ng(ナノグラム)を「体重50kgの人が水を毎日2ℓ飲んだとしても、この濃度以下なら健康に悪影響が生じないと考えられる水準」としている。
《追記》
先程、NHKが全国各地でPFAS汚染が明らかになっている現状を取材した記事をXに投稿。読んでみると驚くような内容が書かれていた。また、河川や地下水の汚染状況がわかる「PFAS汚染全国マップ」も紹介している。
全国各地で“PFAS汚染”が明らかに(NHKWEB特集)
※この記事の内容は6月12日クローズアップ現代で放送されます。
《関連記事》
・西都市と新富町で検出の「PFAS」 発生源は分からずと発表(NHK宮崎 2024.6.4)
・「永遠の化学物質」PFAS(PFOS・PFOA)に関する認知度調査を実施(産経新聞 2024.6.3)
《関連資料》
・宮崎県。有機フッ素化合物(PFAS)存在状況緊急調査事業の地下水指針値超過事案に係る周辺調査結果について(第4報)