連日、森友公文書改ざん報道が流れる中、ふと思い出したことがある。それは福岡市のこども病院問題である。早いもので、こども病院が人工島へ移転して今年11月で4年になる。こども病院の移転問題をめぐっては、売れない土地を埋めるためにどうしても人工島へ移転させたい福岡市とそれに反対する市民との間で長年にわたり争いが続いた。結局、こども病院は人工島へ移転してしまったが、その決定過程において森友問題を彷彿させるような出来事があった。そこで、当時をふりかえってみる。
今から7年前、高島市長就任直後(1期目)の平成23年1月、高島市長は人工島移転の妥当性について検証を行うといい、専門家による「こども病院移転計画調査委員会」(委員長は北川正恭早稲田大学教授)を設置した。委員会は透明性が必要だとして市民に公開された。東日本大震災を教訓に、人工島は立地不適との宮城県立こども病院林院長の意見など、最終報告書では様々な課題が指摘された。しかし、高島市長は人工島への移転を強行した。そこで問題となったのが、現地建て替え水増し問題、いわゆる、こども病院裁判である。
この裁判は、こども病院を現地で建て替えた場合、人工島で新築するより1.5倍の費用がかかるとした福岡市の意思決定の是非(信憑性)を問うものだった。しかし、その根拠となるゼネコンへのヒヤリングを福岡市が行っていなかったことが、裁判所の嘱託調査(ゼネコンへの聞き取り調査)でわかった。(ゼネコン3社のうち、大成と清水は調査に来ていない、竹中は調査に来たが1.5倍が適当とは言っていない)ここに福岡市の嘘が明らかになった。ところが、福岡地裁は嘱託調査を信用性に乏しいとして退け、ヒアリングメモがあったという当時の担当課長(現・中村総務企画長)の証言を信用できるものとした。まさに青天の霹靂、何らかの圧力があったとしか思えない判決だった。
実際に裁判を傍聴したので克明に覚えているが、中村氏は、ヒヤリングは紛れもない事実だが、ゼネコン担当者の名前も行った日も記憶にない、メモはパソコンに貼っていたがヒヤリングが終わったあと破棄した、どうやって行って帰ったかも覚えていないなど、証言は唖然とするものだった。一体、どこが信用できるのか全く理解できないが、はっきり言えるのは、福岡市が職員に嘘をつかせてまでも人工島移転を成し遂げたかったということ。ちなみに、その中村総務企画長は今月退任する。
福岡市は今もなお、試算の1.5倍に見積もった根拠はゼネコン3社へのヒアリング結果だと主張している。しかし、それを記録した公文書は存在しない。あるのは偽造された資料だけだ。このような重要案件で公文書が作成されていないこと自体が異常なことであり、これまでの福岡市ではなかったことだ。森友公文書報道を目にして、こども病院問題を思い出したのは、根底が同じだと感じたからである。
安倍政権を後ろ盾にしている高島市政。森友問題で安倍政権の支持率は急落しており、自民党総裁選への影響も囁かれている。果たして、これが11月の福岡市長選にどう影響するのか。今のところ自民党福岡市議団に新たな候補者を擁立するような動きはないようだが。
2015年11月、人工島へ移転したこども病院 すぐそばにコンテナターミナル うしろに博多湾(撮影日:2016.9.16)
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《参考資料》
・こども病院人工島移転問題 ~裁判で福岡市のウソが明らかに~ (福岡市議会議員 荒木龍昇氏HPより)