9月議会の最終日(11日)、本会議終了後、高島市長が市長選への立候補を表明した。「時計の針を12年前に戻すわけにはいかない」と。初めての市長選(2010年)で戦ったのが旧民主系の吉田宏氏、そして、今回の対抗馬が立憲出身の田中慎介氏(元福岡市議)ということで当てこすったつもりだろうが、こちらとしては12年前に戻したいくらい、福岡市は変わってしまった。
4選出馬の理由について、高島市長は「これまでの市の課題に一区切りはついたが、次の世代が収穫できるような大きなビジョン、種をまく必要がある」と述べている。えっ、これから種をまくの?と首を傾げたくなる。高島市政12年間、安倍元首相なして語ることはできない。首相官邸へ頻繁に出向き、安倍元首相と蜜月関係を築き(本人は親しくなったのは2期目からだというが)、安倍政権が進める国家戦略特区を先導してきた。大規模な再開発により、まちは一変した。事業を一方的に進めたことで、まちを追われた市民も少なくない。種をまくというが、足元を見みずにまくことはできないだろう。それとも、見ないで種をまくつもりだろうか。そもそも、次の世代が収穫できるようにというのなら、まずは、九州最下位(過去最低を更新中)の出生率をどうにかしないといけないだろう。
高島市長自ら実績と誇る国家戦略特区「天神ビッグバン」だが、コロナ禍で企業業績が落ちこんだ上、リモートワークの普及でオフィス需要が減り、空室率は5%を超える状況となっている。そこで、高島市長が思いついたのが、交付金(市民の税金)で空いた部屋を埋めるという策。売れない土地を売るために、多額の交付金をばら撒き続けた人工島と同じ。税金を自分のものと思っているからどうしようもない。10月からは交付金が倍増され、大規模な研究開発用のオフィスなどを対象に、交付金の上限額を年間2500万円から5000万円へ引き上げる。もはや、高島市政が続く限り、市民が豊かになることはない。
◇ ◇ ◇
先日、田中氏が近くで街宣をされるというので聞きに行った。はっきりした口調で、福岡市が抱える問題をわかりやすく説明されていた。市議会議員として15年間、福岡市政を見てこられたからこそ、具体的に話せる。役人が作った文章を棒読みする高島市長とは違う。田中氏によれば、9月議会で高島市長と討論した際、このままではいけないと危機感を持ち、立候補したとのことだった。その決意に感謝したい。
田中氏の話。今の市政に欠けているもの、それは市民一人一人に目を向けていないこと。まちの見栄えを気にする市政から、このまちに暮らす人に目を向けた市政へ変えていく。福岡は元気というが、元気なのは一握の大企業。高島市政になって内部留保は4割アップしている。一方で個人所得は1割も減っている。サプライズを優先するトップダウン型の高島市政から、市民一人一人と話し合うボトムアップ型の市政へ転換する。連日、田中氏はこう訴え、市内各所で街宣をされている。「福岡市から政治を変える会」が配信している動画を見ると、当初は少なかったが、徐々に人が集まっている。田中氏の訴えが届きはじめているのではないだろうか。頑張ってほしい。
◇ ◇ ◇
市長選まであと1ヵ月。近い将来、宮崎へ移住するため、私にとってはこれが最後の福岡市長選となる。当ブログでは、高島市政になってから、様々な問題を取り上げてきた。博多駅前陥没事故、福岡空港問題、ロープウエイ問題、人工島問題など。すべてに共通しているのは、高島市長の「自分主義」。自分が最高だと思い込んでいるところに問題がある。おそらく、アナウンサーに何ができるのかと言われたことが根底にあるのだろう。本人も悔しさをバネにやってきたと産経のインタビューで答えている。その気持ちもわからなくはない。しかし、我を張ることではないだろう。トップになる人間に必要なのは許容力。人の意見を聞く力がなくては政(まつりごと)はできないだろう。出馬表明の際、反省の弁があるならまだしも、それもない。それどころか、自画自賛のオンパレード。12年経っても変わらない。
◇ ◇ ◇
21日の西日本新聞によれば、高島市長の公約発表は今月末という。田中氏は17日、既に公約発表をしている。また、自民党市議団は20日、高島市長と政策協定を締結している。中身は公にされていないが、行財政改革や防災など5項目で構成されているという。準備は整ってきたようなので、ぜひ、公開討論会で政策論争をしてほしい。前回の市長選では、(私を含む)市民有志が公開討論会を主催した。対戦相手の神谷氏は出席されたが、高島市長は当日まで出席か否かの返事すらしなかった。そのため公開討論会を実施することができなかった。会場に来られた市民から「なんて酷い」との声が上がっていた。今のところ公開討論会の情報は入っていないが、今度こそ、正々堂々、市民の前で田中氏と政策論争をしてほしい。逃げたりなんかしないで。
必死に街頭演説する田中氏と産業会のイベントで「天神ビッグバン」を宣伝する高島市長(写真:21日西日本新聞より)
10月21日西日本新聞全文(ネットは有料記事なので)
こちらは10月12日の西日本新聞トップ記事
唯一、市民目線で書かれた記事 ※西日本新聞に限らず、市政記者の書く記事は高島市長寄りな記事が多いので
《関連記事》
・「天神ビッグバン」「ウォーターフロント地区」街づくりの課題は~福岡市長選まで1か月(RKBニュース 2022.10.20)
・田中氏「都心部偏重見直し生活重視」高島氏と対決姿勢鮮明に(西日本新聞 2022.10.18)
・「次世代のために種まく」高島氏が4選出馬を表明 福岡市長選(西日本新聞 2022.10.11)
・オフィス賃料など助成額倍増へ コロナ禍の企業誘致 福岡市(NHK福岡ニュース 2022.9.1)
・福岡市のオフィスビル空室率 5%超 上昇続く(NHK福岡ニュース 2022.6.17)