先月26日、高島市長の記者会見。開口一番、嬉しい報告があるというから何かと思えば、28年の時を経て、アイランドシティ(人工島)の分譲地が完売したというものだった。最終的に150億円の黒字になる見込みで、このうちの約100億円を活用して子供政策の基金を設置するという。何も知らない方なら「高島市長、さすが~」となるのだろうが、そうは問屋が卸さない。なぜなら、売れない土地を売るために、これまで注がれた市民の税金(立地交付金)は260億円に上るからである。ところが、地元メディアはこれをスルー、”黒字”の一点張り。立地交付金については、毎日と日経などが多少報じているが、問題提起はしていない。
平成6年(1994年)に始まった人工島事業。そもそも博多湾の機能強化のために国が行った航路浚渫で大量の土が発生し、それを処分するために始まった。約4,000億円をかけて博多湾を埋め立て、約400㌶の土地を造成した。当初、土地を売って事業にかかった借金を返済する計画だった。ところが、土地は予想以上に売れなかった。そこで、売れない土地を売るために立地交付金を付けた。土地を購入した企業にもれなく現金が付いてくる(10億円で土地を購入すれば3億円の現金が返ってくる)というもの。上限10億円だった立地交付金は、高島氏が市長になって30億円まで引き上げられた。すべて市民の税金だが、ご本人にその自覚はないようだ。
会見では、記者から立地交付金の質問が出ていた。それに対し、高島市長は260億規模になるとさらり。今後、立地企業から税収が入るので心配ないと言わんばかりに、令和3年度は約40億の税収が見込まれると答えていた。とはいえ、全額が充当できるわけではないだろう。ここは重要なところだが、高島市長は「難しいところ」とはぐらかしていた。いつものことだが、高島市長は、さすが元アナウンサーだけあってアピールが上手い。自分にとって都合の良いところだけ話す。メディアは検証もせずに、そのまま垂れ流すから真実が伝わらない。振り返れば、高島市政の12年間はそうしたことの繰り返しだった。
ところで、ちょっと気になる記事を見つけた。今から10年前のものだが、福岡市が平成24年に発表した人工島事業終了時の試算結果について、市が公表した160億円とする赤字額のほかに421億円という数字があることが判明したというもの。試算は公表分を含めて16パターン。半数以上が赤字200億円を越える結果となっていたにもかかわらず、公表されたのは160億円だった。高島市長は記者会見で、平成24年に160億円の赤字試算が最終的に150億円の黒字になったと胸を張っていたが、試算金額が違えば話は変わってくるのでは?
本日(5日)10時、9月議会が開会する。人工島問題についての質疑も予定されている。トップバッターは堀内議員。あと長年、人工島問題を追及してこられた荒木議員の質疑も注目したい。(モヤモヤ感を吹き飛ばしてほしい)
8月26日の記者会見の様子(福岡市公式Youtubeチャンネルより)
自信満々のご様子(毎度のことながら、市民へ負担を強いたことへの謝罪はなし)
事業費は実質どれだけ回収できているのか?(ほとんど補助金で賄われているので一般市民にはわかりにくい)
売れない土地の穴埋めに市の重要施設(こども病院や体育館、青果市場など黒文字部分)が移転、原資は税金
《関連記事》
・アイランドシティ完売 黒字100億円を子供政策活用 福岡市(毎日新聞 2022.8.27)
・博多湾の人工島、土地が完売 事業収支152億円の黒字に(日本経済新聞 2022.8.26)
・「アイランドシティ」完売し、黒字152億円/福岡市(財界九州 2022.8.30)
《参考資料》