先週末、九重へ。といっても今回は登山ではなく、わが国最大の地熱発電所『八丁原発電所』を見学。この日の九重は、雪がちらほらと舞う、まるで冬に逆戻りしたかのような天候で、標高1100mにある八丁原発電所の気温は氷点下。寒さのせいか見学者も少なく我々を含め4名と、貸し切り状態だった。
八丁原発電所は、52年6月に1号機、平成2年6月に2号機が完成。2基の出力は11万KW、原発1基(玄海原発3・4号機は共に118万KW)の1/10分程度の能力がある。更に、この発電所から2km程下った山合いに、日本初の地熱発電所『大岳発電所』がある。こちらは、昭和42年に完成。実に46年もの間、事故もなく働き続けている優れものである。この大岳発電所について、先週九電は、老朽化を理由に新たな発電設備を建設する計画案を経済産業省に提出している。内容は、これまで発電の過程で地下に戻していた熱水から、再び蒸気取り出して発電する「ダブルフラッシュシステム」を採用するというもので(八丁原は既に採用)、これにより発電出力は12,500KWから15,000KWにアップする。更新計画の環境影響評価方法書によると、着工は2017年、運転開始は2019年の予定となっている。残念ながら、大岳発電所は見学者を受け入れる体制になっていない為、その内部を見ることはできなかった。
現在、八丁原発電所のタービン建屋は耐震工事中の為、中に入れずタービンは見ることができなかったが、その他の施設は確認することができ、十分に見ごたえはあった。(欲を言えば、もう少しゆっくり見たかったのだが、説明員の方が寒かったのか、かなり急いでいた)また、発電所に併設された展示館では、地熱発電の仕組をわかりやくすく説明してくれるので、大人だけでなく子供も楽しめるのではないかと思った。説明員(女性)の方にいくつか質問したが、その中で、発電所は平日昼間50人程度の社員が働いているが、夜は人っ子一人いなくなるというのには、驚いた。この発電所の運転や監視は24時間、大岳発電所から遠隔操作を行っているという。地熱発電所に要する人件費はどれ程なのかわからないが、少なくとも原発にかかるそれとは比べ物にならない位、安価であることは間違いないだろう。
世界第三位の地熱国、日本。発電量に換算して2000万kwを超える地熱資源ポテンシャルがあると推定されているのだから、これを使わない手はない。しかも、昨年の巨大地震においても、設計通り自動停止、再開後も安定した発電が続けられていると、江原幸雄氏は著書『地球からの贈りもの』の中で、切々と述べておられる。地熱発電所の安全性は、あの巨大地震で実証されていたのである。にも拘らず、このことは殆ど報道されることはなかった。メディアによる偏向報道は、地熱開発をも阻んでいる。
《参考》
地熱情報研究所ホームページ
2号機。汽水分離器(左)と冷却塔(右)
冷却塔に送られる温水が白く凍る
ダブルフラッシュシステムに必要なフラッシャー
1号機へ
展示館内
詰まった還元井のパイプ゜と掘削器(材質はタングステン)
発電所全景 寒さで蒸気がすごい
大岳発電所入り口にある 九電大岳寮
木の間から 少しだけ見える大岳発電所
八丁原発電所から牧ノ戸登山口へ やっぱりそそられる
というわけで 沓掛山の霧氷
先月31日に行われた九電電気料金値上げ公聴会に出席、その原発依存体質を嫌と言うほど感じさせられた。瓜生社長、開口一番「福島原発のあの事象(爆発の映像)が頭に残っておられて…インパクトも強いので…原発に対する不安もおありでしょうが…」と、まるで原発事故がどこか遠い国で起きたような話しぶりに、まず驚いた。うちはあのような事故はしませんよ、と言わんばかりに「世界最高水準の原子力をつくる」とまで発言。原発に洗脳された電力会社の姿を目の当たりにした。と同時に、福島の原発事故によって起こった環境の変化に、九電はついていけていない、という郷原氏の言葉を思い出した。
公聴会では、瓜生社長が「今回の値上げは33年ぶりであり、この間30%の値下げを行ってきた。2年間(1兆円ともいわれる)内部留保を取り崩ししのいできた」としきりに繰り返し、値上げに理解を求めていた。それに対し、多くの陳述人が、九電の地域独占体制や総括原価方式、高額な役員報酬、再稼働を前提とした値上げ申請を批判。中でも、原発に依存してきた九電にこそ問題があるのであって、経営が悪化したからとそのツケを国民が支払うのはおかしい、という意見が数多く出た。ごもっともな意見陳述に幾度も拍手が起きた。(静止命令はでなかった)原発は稼働していなくとも多額のコストがかかる。しかし、今まで原発は安価だと、多くの国民が騙されてきた。安易に電気料値上げを許すということは、原発依存そのものを許すことになる。このまますんなり認可させることがあってはならないのである。
電気料値上げは、中小零細企業や社会的弱者に大きな負担を強いる。公聴会で心に残る意見陳述があった。中小企業で代表の方、苦しい経営状況の中で必死に頑張っている同志の思いを代弁。途中、言葉に詰まり涙声になりながらも切々と訴えておられた。また車椅子に乗ってこられた障害者の方、今の生活が一杯一杯、電気料金が上がれば命にかかわる、とすがるような眼差しで訴えておられた。あの方々の思い、瓜生社長に一体どれだけ届いただろうか。
公聴会のようす、質問に答える瓜生社長(写真右)
議事進行人は、安念潤司(中央大学法科大学院教授)電気料金審査専門委員会委員長
あまりの調子の良さに違和感を感じた(写真左)
報道陣も勢ぞろい、大半は午前中に引き上げた(写真は午後)
NHKニュースに私が、、とても厳しい顔で映っていた