先日、五ヶ山へ行く途中、南畑ダムの水がかなり少ないように見えたので、帰路、ダムに立ち寄ってみた。すると、驚いたことにダム湖の北側半分の湖底がごっそり露出していた。これほど干上がった状態を見たのは初めて。それもそのはず、貯水率は平成6年大渇水に次いで2番目の水準まで低下しているという。ご存じのように、かつて福岡市では二度の大渇水に見舞われた。一度目は昭和53年の福岡大渇水(断水287日間)、二度目は平成6年の平成大渇水(断水295日間)。二つの大渇水を理由に五ヶ山ダムは建設されたが、あれから25年、福岡市で渇水は起きていない。というより、水は余った状態が続いている。
福岡市水道局のホームページをみると、1月15日現在、福岡市関連8つのダム貯水率は、38%と昨年の半分近くまで落ち込んでいる。貯水率が最も低いのが南畑ダムの17.87%。確かに現地は数字通りの状態になっていた。昨年7月の西日本豪雨時、全てのダムが洪水量(洪水調節を始める基準となる流入量)を超過し、洪水調整が行われた。豪雨直後、ダムは満タン状態だった。あれから半年、少雨は続いていたが、よもやここまで落ち込んでいるとは思わなかった。福岡市の1月平均雨量は68ミリだが、今年はこれまでわずか6ミリ程度、異常に少ない。貯水量グラフを見るとそれがよくわかる。(下グラフ参照)
現在、南畑ダムの貯水位は253.64mで最低水位まで9m。貯水量は前日に比べ10,000㎥減っている。南畑ダムの水は福岡市民の水道用水として使われて(発電もしている)ので、当然のことながら減っていくわけだが、このまま少雨が続けば、貯水率は10%を切る可能性も無きにしも非ず。いよいよ五ヶ山ダムの出番。と言いたいところだが、こちらは試験湛水中。放流すれば水は減る。現在、五ヶ山ダムは常時満水位だが、サーチャージ水位まで(あと6m)水を貯めないと試験湛水は終わらない。しかし、昨年秋からの少雨は五ヶ山ダムにも影響を及ぼしている。運用開始は1年遅れの見込みだったが、さらに遅れる恐れも出てきた。おそらく福岡県もやきもきしているに違いない。五ケ山ダムを観光の目玉にしようとダム周辺で整備を進めている那珂川市も同じ思いだろう。それ故、五ヶ山ダムに売るほど水は貯まっていても大盤振る舞いはできない。(と言っていたら、16日午前8時半から五ヶ山ダムから南畑ダムへの流入量を増大。これで試験湛水の遅れは間違いなし)
もともと雨の少ない時期なのでダムの水量は少なめだが、ここまで減っていると少し気になる。今のところ、福岡市の水は十分余裕があるので心配はないと思うが、節水は心がけたい。
《2019.1.22更新》
今日(22日)の福岡市ダム貯水率を見てみると35.38%と、この1週間で2.69%減少している。(下グラフ参照)先日、雨は降ったようだが降水量はわずか6ミリ、貯水率を上げるには程遠い。このままだと貯水率30%を切るのも時間の問題かもしれない。気象庁によると、近年、極端な多雨・少雨の年が増大しているというが、その傾向は益々顕著になっているように感じる。昨年10月、京都大学防災研究所の公開講座「災害を知り、災害に備えるー九州の近年の災害とこれから」を受講した際、研究者から、今後、日本の多くの地域で現在より厳しい渇水状況が予測されるという研究結果が報告されていたが、まさに今、そういう状況になりつつあるのではないだろうか。
撮影日:2019.1.12
湖底が露になった南畑ダム (写真手前、五ヶ山ダム下の那珂川から流れ込むわずかな水)
水が貯まっているのは、カーブ(写真右奥)の少し先まで その先は上の写真の状態(ダム堤体から撮影)
ダム堤体付近 ダム堤体についたラインが物語る
こちらは1月15日現在の貯水量グラフ
西日本豪雨で満水容量に達するも、その後急落、10月少し持ち直すが、ふたたび下降中(赤線)(資料:福岡市水道局より)
こちらは1月22日現在の貯水量グラフ
こちらは二大渇水時のダム貯水量グラフ
平成大渇水は見事なまでの急降下(資料:福岡市水道局より)
こちらは南畑ダム横断図(1月14日)
14日午後3時現在、五ヶ山ダムからの流入量は毎秒860リットル 最低水位まで約9m(資料:福岡県河川防災ダム情報より)
こちらは南畑ダム横断図(1月16日)
16日午前9時現在、五ヶ山ダムからの流入量を毎秒1010リットルに増大 貯水率を保つための措置がはじまった模様
撮影日:2019.1.12
満水状態の五ヶ山ダム 水は売るほど貯まっているけれど、、
あと6m 巨大ダムゆえ これが貯まらない
《関連記事》
・県内17ダム貯水率48% 少雨影響、同時期20ポイント下回る 自治体が節水呼び掛け(西日本新聞 2019.1.19)
・県内のダム貯水率50%下回る(NHK福岡ニュース 2019.1.17)
・福岡市ダム貯水率低下、94年に次ぐ水準…昨年夏以降の少雨影響(読売新聞 2019.1.15)
・「大渇水」40年節水進む福岡 「屈指の漏水対策」「再生水義務付け」「近隣市町に水源」「体験の風化」懸念(西日本新聞 2018.6.29)
《関連資料》
・福岡市水道局 水源情報 きょうのダム状況(毎日更新)
・福岡市水道局 ダム貯水状況リアルタイム表示
・福岡県河川防災情報
・福岡県HP。南畑ダムを紹介します