「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~真空管アンプの音が良くなる工夫~

2008年06月03日 | オーディオ談義

「オーディオはスピーカー(SP)選びが勝負」とはよく聞く話で、実際そのとおりだと思うがその肝心のSPを駆動するアンプもこれまた大切な存在で、最近ではうかつにどちらが優先とは断言できない気がしてきた。

特に、中高域用のスピーカーを「アキシオム80」に替えてからがそうで、やっぱり
「SPとアンプはセットなのだなあ~」とつくづく思う。

とにかく、このSPはアンプによって音質がコロコロ変わってしまうのに驚かされる。「すごくいい音を出す」かと思えば「聴くに耐えないような音を出す」といったような差をアンプを媒体として如実に知らしめてくれるのである。

そして、同じアンプでも部品の一部をちょっと替えてやるだけで音質が微妙に変化してシャープな反応を見せるので
、”いじりがい”があってオーディオ愛好家にはたまらない魅力。

それも真空管アンプだからこその話で、トランジスターに比べて回路がシンプルなうえに使ってある部品も少ないのでいろいろと手を加えやすく改良しやすいのが利点。

今回は工夫を二つほど。

なお、300Bアンプの「音質改善テクニック」についてはオーディオ季刊誌
「菅球王国Vol.12」(1999年春:172頁)に詳細に記載されている。

 カップリング・コンデンサーの交換

さてコンデンサーとは何ぞや。広辞苑によると外来語なのにちゃんと掲載されてあって、「蓄電器」とあったがこれは一部当たっているようで当たっていない。

真空管アンプに使ってあるコンデンサーは信号回路用と電源回路用に大別されるが、後者のコンデンサーの場合が蓄電器と称される。

音質にとって重要なのは信号回路にあるコンデンサー。真空管同士をつなぐのでカップリング・コンデンサーと呼ばれ、音声信号だけを通して直流電圧をカットする役割を担っている。

メーカーによっていろいろと品種があり、どれを使っても同じ音と思いがちだが、それが違うのがオーディオの面白いところ。

何といっても定評があるのは、あの名器とされたマランツ社(アメリカ)の製品に使用されて有名になった「スプラーグ」で仲間のMさんに言わせると、このコンデンンサーをツボの部分に使うと音質が一ランクも二ランクも向上するという。

スプラーグの特徴は何よりも
塗装の塗りの固さで、(電流通過時の)振動防止による鳴き止め効果が高いのが一番の理由。

余談だが、日本のオーディオ愛好家が菅球ではマッキントッシュのC22と並んで最高のプリアンプとされる「マランツ7」を設計回路どおり寸分も狂いがなく作ったが、どうしても音質が追い付かなかったという。

結局、その原因は部品の質の違い、それも「スプラーグ」のコンデンサーを使わなかったからという逸話がある。

さて先日、300BアンプとPX25アンプのカップリング・コンデンサーを思い切ってその「スプラーグ」に交換したところ、期待どおり。試聴結果は後ほど。  
             

        
 鉄の使用に伴う磁界の影響を最小限にとどめる

アンプの材料に鉄を使う弊害についてはこれまで散々書いてきたので重ねて言わないが、パワーアンプなどは強度的な問題もあって使用するのも止むを得ない一面がたしかにある。

先日、デジタルアンプの試聴で「ソニー」ともあろうオーディオの雄がケースに「鉄」を使っていると指摘したが、Mさんによるとすべての会社が似たようなもので、PL法とかいろんな安全基準があってそれに合格するのが先決で、音質は二の次になっているという。

したがって、使用者の段階で個別にそういう制約から解放してやることが必要で、これはあくまでも自己責任の範囲だがたとえば底板を外すとかのやり方がある。

二つ目の工夫もその一環で、鉄にまとわりつく磁界を少しでも排除しようと、ピンジャックと電源ケーブルをアンプのケース(鉄板)を通さずに
底から引っ張り出して外部で抜き差しできるようにしてみた。これも音質向上効果大だった。

なお、余談だがレコードを聴いていないため長い間押し入れに直しこんでいた「マランツ7」を久しぶりに引っ張り出して信号テストをしてみたついでに、肝心の信号を抜き差しする裏のケースを確認したところ鉄を使っていなかった。さすがマランツ!

       
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≪写真解説≫

→300Bアンプの改造箇所で右上部の茶色がカップリング・コンデンサーの入れ替え分とプラグを底から直出し部分、同様に左上部が電源コードの直出し部分

→PX25アンプの改造箇所で左下部の茶色がカップリング・コンデンサーの入れ替え分

→PX25アンプのプラグを底から直出し部分

→プリアンプ「マランツ7」

とにかく、以上2つの措置でダメアンプが見違えるほど変貌した。テスト盤は最初に「ちあきなおみ」全曲集のうちの「冬隣」。過去、何度も言ってきたが彼女の陰影に富んだ声質はオーディオのテストにピッタリである。

歌詞の内容と声質が見事に一致し、歌っているときの表情がくっきりと浮かんでくるほどで「矢切の渡し」では1番~3番まで微妙に声質を変えて歌っているのがはっきりと聴き取れた。

一緒に聴いていたMさんがあの昭和の歌姫といわれ女王として君臨した「美空ひばり」よりも上ではないかとおっしゃる。たしかに情感の表現にかけては一日の長があるかもとさえ思う。

うれしかったのは、ウェスタン社のオリジナルの真空管WE300Bが蘇って本来のちからが発揮できたこと。上記の二つの改造によって明らかにゴールデン・ドラゴンの4-300BCよりもグレードの高さが確認できた。

次いで、PX25アンプも同様に向上。グリュミオーの弾くヴァイオリン(モーツァルトのヴァイオリン協奏曲5番)の音色が独特の艶を帯びて限りない美しさ。

「これは美しすぎる。実際のヴァイオリンでもこうは鳴らない。」とはMさんの弁。

どうやら「アキシオム80」と同じイギリス製によるコンビの相乗効果が出たようで、こういう澄み切った独特の音はPX25真空管にしか望めないもので、現在手持ちのスペアは4本しか持っていない。あと何年生きるか分からないが大丈夫かな~と思わず脳裡によぎった。

「そうだ、日頃はWE300Bアンプで我慢すればいい。300Bなら丈夫で長持ちするし、まだウェスタン社のスペア菅(60年代)もある。特別のお客さんのときだけPX25を使おう!」

つくづく、真空管の音色に堪能した1日でした。ダメアンプがこんな”ささやかな改造”(?)でこれほど音が良くなるんだから~。


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