つい最近、オーディオ仲間から「凄くいい音がするよ」と、いただいたのが「MJオーディオテクニカルCD」。
まあ「いい音」といってもいろいろなので半信半疑で聴いてみると、これがなかなか我が家のシステムと相性が良くて大いに気に入った。
一緒にもらった解説書を読んでみると、こう書いてあった。
「HDマスタリングとは、ABCレコードが開発した製盤技術です。液晶パネル用の樹脂材料を使用することで透明性に優れており、デジタル信号ピットを高精度に成形し、表面の塗装で振動を抑えることで高音質を実現しています。本CDの塗装はCDレーザーの補色である緑系の塗料を使用して、より読み取り精度を向上させています。本CDを含むHDシリーズは、マスタリングからプレスまで、すべてドイツ生産されています。」
オーディオといえばハード面の機器の方ばかりに注意を向けがちだが、ソフトの方も要注意でとてもおろそかに出来ない存在。
CDがこの世に生まれてからおよそ30年経つが、一部のマニアの間では従来から「江川カット」と称される、CD盤の表面から薄くカッターナイフで疵を入れたり(誘導電流対策)、円周部分のエッジを丸くしたり、レーザーの補色である緑を必要な個所に塗ったりといった対策が施されてきた。
実は我が家でもCDトランスポート「ワディア270」のトレイにわざわざ緑色の塗料を塗っている。
そして、近年ではメーカーしかできない新たな材質のCD盤が登場してきた。
以前にも透明ガラスの素材で作られたCDが発売され、たしか曲目はカラヤンの第九だったと思うが、1枚が10万円以上もしていて音は滅茶苦茶にいいのだろうが、普及の方はサッパリだった記憶がある。値段が値段だけに当初からメーカー側も期待していなかっただろうが、今回のMJ盤はその上位技術が応用されたのかもしれない。
1980年代初期にレコードからCDへと切り替わりのときに、CDの音質に触発されてそれに負けじとレコードの再生技術が飛躍的に向上したが、今ではCDからPCオーディオの台頭による「ハイレゾ音源」へと移行しつつあるので、立場が入れ替わって今度はCDの再生技術にも最後のひと踏ん張りが求められているのだろう。
ちなみに、“ハイレゾ音源”とは、ご存知の方も多いと思うが聞き慣れない方のため、ネットの記事を紹介しておこう。少々長くなるが次のとおり。
「ハイレゾリューション音源」の略で、高分解能な音楽ソースのことである。何を対象として高分解能と言えるのか、ということだが、それは、CDのスペック。すなわち、44.1kHz/16ビットのデジタル信号(リニアPCM)の規格で、一般にハイレゾとは、それを上回るスペック、例えば48kHz/24ビットとか、96kHz/24ビット、あるいは192kHz/24ビット等の音源を、一括りにハイレゾ音源と呼んでいる。ちなみに「/」の前がサンプリング周波数、後がビット語長(ビット数)を表している。
ハイレゾ音源の特徴は、高分解ということから想像がつくように、同じアナログ音楽ソースを44.1kHz/16ビットでデジタル変換したものと、96kHz/24ビットでデジタル変換したものを比べると、密度やきめ細かさが断然違う。喩えが妙かもしれないが、木綿豆腐と絹ごし豆腐くらいの質感の差があると思っていただければよい(この場合、舌触りとして木綿の方が好き、とかいう嗜好は加味しない)。
よくいわれることだが、ハイレゾ音源は、音楽の制作現場の音がそっくりそのまま楽しめる点に最大の魅力、セールスポイントがある。スタジオ等では、CDのスペック以上の変換精度で演奏が収録されており、これまでは、CDというフォーマットにそれを収めるために“グレード・ダウン”処理をしていた。ハイレゾ音源は、グレード・ダウンをせずに最高スペックのまま我々エンドユーザーに演奏が届けられるのである。
そうした音の密度の違いは、再生音の違いとして声や楽器の質感の違いに現われる。端的に言えば、ハイレゾ音源の方が一般的にはより生に近いというか、リアルだ。声ならば、温度感や湿り気、ヴィブラートや語尾のアクセントなど、微かなニュアンスが一段と克明になる。楽器ならば、響きや音色の微細な変化、タッチの違いや強弱なども敏感に再現される。一般には、サンプリング周波数が高ければ高いほど、ビット数が大きければ大きいほど、より生音に近づくと言っていいだろう。
もうひとつ重要な要素は、空間再現力の違いである。演奏が行なわれている現場(スタジオやホール等)の大きさや広さ、反射や残響などが再生音からイメージできそうな感じは、ハイレゾ音源の方がより鮮明に感じられることが多い。再生音の立体感や臨場感に差が現われる。」
正真正銘のオーディオマニアなら当然のごとく「ハイレゾ音源」への移行を考えるべきなのだろうが、ソフトの利用が問題でこれだけCDを溜め込んでいるともはやハイレゾに対してあまり気力が湧いてこない。
「音遊び」ならともかく、「音楽」を鑑賞するのなら現在のスペックで十分だと割り切ることにしているが、万一、他家で凄い音源を聴かされると、ヨロメキそうで怖いのも事実(笑)。
さて、冒頭の話に戻って、「MJオーディオテクニカルCD」には、クラシックからポピュラー、歌謡曲まで幅広く16トラックに亘る曲目が収められている。
いずれ劣らぬ名曲ぞろいだが、その中でも「トラック3 クリスタル・ゲイルの”夢のひととき”」、「トラック8 テネシー・アーニー・フォードの”テイク・ミー・・・”」、「トラック10 テレサ・テンの”雨の夜の花”」がお気に入り。
とりわけ、テレサ・テンの声と唄い回しには感心した。しかも何というロマンチックな歌詞だろう!まるで情景が目に浮かんでくるようだ。彼女が今でも高い人気を誇っている理由がようやく分かった。
雨の降る夜(よ)に 咲いてる花は / 風に吹かれて ほろほろ落ちる
白い花びら しずくに濡れて / 風のまにまに ほろほろ落ちる
更けてさみしい 小窓の灯り / 花を泣かせる 胡弓の調べ
明日はこの雨 やむやもしれぬ / 散るを急ぐな 可愛い花よ
雨の降る夜(よ)に 咲いてる花は / 風に吹かれて ほろほろ落ちる
一つの句がすべて7つの言葉で構成された、まことに見事な「七言律詩」風である。
つい最近(2/9)のBSハイで「美空ひばり、テレサ・テン、ちあきなおみ」の特集を2時間にわたって放映していたので逃さず録画したが、歌謡曲の女性歌手ではこの3人が我が家では今のところブッチギリの存在!