前回からの続きです。
「USBメモリ」を挿し込んだマランツのネットワークオーディオプレイヤー「NAー11S1」とDAコンバーター「エルガー プラス」(dCS)との間の接続ケーブルを光ケーブルから同軸ケーブルに取り換えたところ、音の力強さに格段の差が出た。
「ケーブル次第でこんなに変わるもんですか!これならCDと遜色があまりないですよ。こうなると、もう光ケーブルは使えませんね。」
この効果をさらに確認するために、今度はプリアンプの入力を切り替えて第二システムの試聴に移ったが、より一段とクリヤーにその差が出た結果となった。途中からはテストソースをYさんが持参されたSACDに変えた。
「長岡鉄男」(故人)さんとはこれまた懐かしい。中高年世代のオーディオマニアでこの方を知らないとモグリだと言われても仕方がない。非常に挑戦的な方で、いろんな種類のスピーカーの自作などを通じて当時のオーディオ界に新風を吹き込まれた方である。まあ、考え方の違いでいろいろ敵も多かったようだが死者に鞭打つことは止めておこう(笑)。
それにしても、このSACD盤は優秀録音でいろんな曲目が入っているオムニバス形式なのでテスト盤としてはもってこいだった。
第二システムで一番気になっていたのが「AXIOM300」にJBLの「075ツィーター」を追加していたことだったが、Yさんによると「まったく違和感がありませんよ。むしろ付け加えて正解でしょう。」
ああ、良かった!
最後にようやくYさんの待ちに待った第一システム「AXIOM80」の試聴へ。
Yさんがなぜ足繁く我が家にお見えになるのか、その一番の理由は何といっても「AXIOM80」を聴くためである。持ち主が言うのも何だが、まるで麻薬のような魅力を秘めたスピーカーでいったんその魔力に取りつかれると、耳から追い出すのにひと苦労すること請け合い。
ちょっと話が逸れるが耳から入った記憶と目から入った記憶、人間にとっていったいどちらがより鮮明に残るかは非常に興味深い。目の記憶には「残像」という表現があるが耳の記憶にはピッタリ当てはまる表現が無いのでちょっと不利かも。
しかし、音だけではなくて台詞を伴っていれば耳の記憶が有利かもしれない。皆さん思い当たる節があるのでは(笑)。ま、総合的には脳の全体機能に行き着くのだろう。
戻って、この「AXIOM80」はメチャ神経質なユニットなので下手な鳴らし方をすると「キンキン、キャンキャン」といって制御できないジャジャ馬のようになる。アンプやエンクロージャーの欠陥をモロに出すので組み合わせるときには細心の注意が要るし、使いこなしにしてもプリアンプの低音ブースト機能を一目盛上げただけで音がにわかに曇って「NO」とはっきり拒絶するほどの我が儘娘である。
この日も初めから「AXIOM80」を聴きたそうだったYさんだが、その特徴を際立たせるためにいつもわざわざ後回しにしている。
いよいよ真打登場というわけだが、じっと耳を澄まされていたYさん、「繊細さが他のスピーカーとはまるで違いますね。音の一音一音の歯切れの良さがとても素晴らしい」と呟くように一言。
SACDの中でマタイ受難曲のコーラス部分に入ってから、「ひとつアンプの整流管を替えてみましょうか」と、カニンガムの「380」から昨年末に手に入れたSPARTONの「480」(メッシュプレート)に交換してみた。昨年末頃に試聴されたときにもその差に驚かれていたが再度の確認である。
「音響空間がひときわ大きくなり、明らかにコーラスの声の艶が増しましたよ。」
相変わらず鋭い耳の持ち主であるYさんだが、全体を振り返って「前段機器からプリアンプ、パワーアンプ、スピーカーと、どれひとつ手を抜いていないのがよく分かりました。とりわけプリアンプの効果が大きいみたいです。出力トランスにファインメット・コアを使ってあるのが利いてますね。」
これまでの我が家のシステムの酸いも甘いも日頃から熟知してあるので、その変化にも非常に敏なYさんならではのご感想だろう。
かくして新年早々の試聴会は滞りなく終了した。最後に「371」アンプの前で二人で胡坐をかきながらアンプ談義をしたが、Yさん「今年は真空管アンプを考えてみようかな~」と、ポツリ洩らされた。
「トランジスタと違って球をいろいろ入れ替えながら音の変化を楽しめますよ。ぜひ真空管アンプにしましょうよ」と、強力に誘惑したが、はたしてその首尾や如何(笑)。