先日、首尾よくオークションで手に入れた「ワーフェデール」のユニット(口径30センチ)だが後日談を述べてみよう。
その前に簡単に経緯を述べておくと、2本手に入れたうちの1本にかすかにノイズが発生し、出品者側(仮に「T」さんとしておこう)から、謝罪の意味を込めて信じられないほどの格安で新たな1本を譲ってもらった。
ほんのわずかな瑕疵なのにと、ご厚意に恐縮の至りだったが、いずれにしろこれでユニットが3本体制となった。
毎日じっくりと試聴しながらワーフェデールはこれまで使ってきたユニットのうちでもトップクラスとも言えるほどで、「やはり赤帯マグネットは素晴らしい。これでようやく理想とする音に出会った。」と、小躍りしているが、オーディオ仲間たちからも絶賛に次ぐ絶賛を浴びている。
となると、さらに欲が出てきた。「もう1本あるとペアが組めるなあ、そうすると希望する仲間に譲ってあげることができる!」
そこで、Tさんに交渉してみた。「たいへん厚かましいお願いですが、残りの1本も適価で譲っていただけないでしょうか。」
すると、「残る1本はボイスコイルのタッチがあってノイズが出ています。ユニットの裏側からスポンジを差し込んで調整中です。半年ほどこの状態を保てればおそらく良くなると思います。そのときはバッフルに取り付けるときに、プラス・マイナスの端子を上側にするといいでしょう。そういうことでよければ〇円でいかがでしょうか。」
これまたほんとうにありがたいお話だった。一も二もなく応諾して、商談成立。すると、Tさんから「スポンジを装着したまま送付しますのでご参考になさってください。」
ほどなく到着したのがこれだった。
スポンジの「はさみ方」といっても、聞いただけではどうにも腑に落ちなかったが「百聞は一見に如かず」でようやく納得がいった。なるほど、ボイスコイルのタッチ対策としてこういう矯正方法もあったのかと「目からうろこ」だった。
Tさんに対して無事到着のお礼とともに、「スポンジの件、ブログを通じて広く紹介させてもらっていいでしょうか?」と、お伺いを立てると次のようなご返信があった。
「この方法は、私のオリジナルでもありませんので、どうぞ、ご遠慮なく。自分の気に入ったスピーカーがボイスタッチで鳴らせないでいる趣味家さんにとって、朗報となれば、私も趣味家の一人としてうれしく思います。
ただ、3点ほど補足しておきます。
☆ あくまでも最終的にだめなら専門家に依頼ですよ。(ダメ元の精神で。)
☆ フィックスド・エッジの場合は、コーン紙の方が変形する場合が多いので不向きです。(ロール部分が柔らかければ可能です。)
☆ 持ち上げたい点がフレーム位置の中間にある場合は、その点の左右の2カ所のフレームを使ってスポンジを挟みます。
以上のとおり、Tさんのご理解によりこうして「スポンジのはさみ方」が日の目を見ることになってたいへんありがたい限り(笑)。
とはいえ、世の中の大半のユニットはフィクスド・エッジである。
フィクスド・エッジの場合は周知のとおり頑丈なツクリなのでボイスコイルへのタッチなどはほとんど有りえず、このスポンジ方式はおそらく無用の長物だろう。
そのかわり、音声信号への応答性が悪くどうしても音がこもりがちになって冴えない音になるのがフィクスド・エッジの宿命である。
あの繊細極まりない音を拾える「AXIOM80」は、そもそもエッジが無いツクリだし、ワーフェデールにしても極めて柔らかいロールエッジの持ち主なので、そういうユニットしか繊細な再生は望みようがないのが現実である。
ただし、一方ではエッジが不安定なのでボイスコイルのタッチが生じやすいのも事実なので、見方を変えると、(ボイスコイルのタッチは)「名誉の勲章」とでもいうべきもので繊細な再生ができることの証みたいなものだといえよう。
以前のブログで「SPユニットのツクリはハイリスク・ハイリターン」だと述べたが、そういう意味なのである。日本語で言い換えると「虎穴に入らずんば虎児を得ず」だ。別に鬼の首を取ったように言うつもりはないが(笑)。
なお、通常の2~3ウェイシステムはフィクスド・エッジを使ったユニット(口径30センチ以上)の反応の鈍さを補うために、500ヘルツあたりから金属のダイヤフラムを使ったドライバーの出番となるのが一般的だが、これらはどうしても弦楽器の再生が金属的で乾いた響きになってしまうのが通例だ。
その点、柔軟なエッジを持つワーフェデール(フルレンジ型)は4000ヘルツあたりまで持たせても反応が鈍くならないので、赤帯マグネットの威力ともどもこれが愛用する一番の理由である。
以上、作者の特権を行使して勝手に思うところを断定的に述べさせてもらったが、例によって勘違いや思い込みがあることだろうが、どうか悪しからず~(笑)。