「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

先入観は罪、固定観念は悪だ!

2018年04月05日 | オーディオ談義

センセーショナルなタイトルだが、何かの雑誌から引用した言葉なので「罪と悪の違いって何?」とかの野暮な詮索は止めましょうね~(笑)。

いずれにしても、今回は従来持っていた先入観とか固定観念がもろくも崩れ去った一件をご報告しよう。

オーディオ仲間のYさんから「先日手に入れた「50」真空管アンプですが、ようやく別荘での試聴が終わりましたので持っていきたいと思います。何時頃がよろしいでしょうか?」とご連絡があったのは3月29日(木)のことだった。

急遽、道端に止めたクルマの中で「ハイ、丁度今クルマの中です。新しい運転免許証をもらいに警察署に行っているところです。そうですね、午前11時ごろにお願いできますか。」

それからおよそ10分後に警察署の中のデジタルカメラで撮影した顔を張り付けた新免許証を受け取ったが、まるで「凶悪犯の指名手配写真」のようだ!。この歳になると見かけもへちまもないが、それでもちと淋しい(笑)。

きっかり11時にYさんが「50アンプ」を持参された。

      

特注の木製シャーシがとても洒落ている。製作者は木工の傍ら、真空管アンプも熟練の腕を発揮されるというとても奇特な二刀流(静岡県)の持ち主
とのこと。

このアンプはご自宅用ではなく別荘用で、組み合わせるスピーカーはボーズだそうだ。

しかし、このアンプを見たとたんに正直言って「音」の方にはあまり期待できそうになかった(笑)。

その理由を挙げてみよう。

 真空管アンプにとって大切な整流管が見当たらない。おそらくダイオード整流なのだろう。これまでダイオード整流の音を幾度となく他家で聴かせてもらったが一度も気に入った音が出た試しがなかった。「音が固い」という印象をずっと受けてきた。

 真空管の選別が見るからにチャチである。前段管はミニチュア管(中国製:12AU7)の1本だけだし、出力管はこれまた中国製の「50」で前述のように近代管だ。これまで聴いてきた近代管は総じて音が高音域寄りのキャンつき気味でうるさく感じてしまう。

 古典管を使用したアンプの設計回路はそれなりの独特のノウハウがあると聞く。その中でも「50」はグリッド電流が多く流れるタイプなので一筋縄ではいかない。「よほどの作り慣れたベテランじゃないと、いい音は出せませんよ。」とは、ある筋からの情報だ。

というわけで、古典管オンリーの人間にとって聴く前から拒絶反応を起こし気味なのも当たり前でしょう(笑)。

ただし、回路が「全段直結」でコンデンサーを1個も使っていないとのことで、これには大いに興味を持たせてくれた。もちろん、必要悪であるコンデンサーを使う理由もちゃんとあると思うが、それはこの際、脇に置いておこう。

フルートの名手であるYさんは日ごろから生の楽器に触れられているだけあって「Pure」な音が大好きな方である。

始めに比較する意味で我が家のPX25シングルアンプで鳴らしてみた。

システムの概要はCDトラポとDAコンバーターが「dCS」のコンビで、スピーカーは「イギリス、ドイツ、アメリカ」の混成旅団の3ウェイシステムだ。

内訳は「~500ヘルツ」はワーフェデールの赤帯マグネット(口径30センチ)、「500~4000ヘルツ」は、ドイツ製の「イソフォン」(楕円形)、「4000ヘルツ~」はJBLの075ツィーター。

さあ、PX25アンプを入れ替えていよいよ「50」アンプの試聴である。

音が出た瞬間に、「アッ、意外にも素直な音が出る!」というのが第一印象だった。

しかも、聴き込んでいくにつれ低音域がやや薄い印象を受けるものの音の瑞々しさ、奥行き感などとても近代管のイメージではない。

PX25系統の音とはちょっと違うが、目隠しをすると「高級なシングルアンプの音ですよ。」と言っても信じられそうだ。

いずれにしても前述したハンディが微塵も感じられないのには驚いた。近代管だってうまく鳴らすと、こんな音も出せる!

まったくの予想外だったので、「先入観は罪、固定観念は悪だ!」という言葉が浮かんできたというわけ(笑)。


「クセが無く落ち着いた音で聴きやすいですね。なかなかいい音だと思いますよ。ぶしつけですがお値段はどのくらいしましたか?」

「ハイ、〇円でした。」

「エ~ッ、それは安い!自分も同じものを作ってもらおうかなあ。」という言葉が、つい出てしまった(笑)。

二人ともおよそ1時間ほど満足感に浸った後にYさんが、「この次に別荘に行くまで2週間ほどあります。その間このアンプを置いていきますのでエージングして鍛えてやってください。」「ハイ、いいですよ」。

預かってから1週間ほど経ってこのブログを書いているわけだが、日ごとの体調の変化やわざと日を置いたりで様々な状況の中で試してみたところ、このアンプなりの至らぬところも少し見えてきた。

「どんなアンプだって完全無欠ではない、欠点はどこかしらある。」ということを前提にして述べてみよう。

けっして偉そうに言うわけではないが、どんな物事にも表と裏の顔があるように、音だってそうで、単に表面的な美しさだけではなくて、裏というか翳りの部分も欲しいところだ。

「翳りってなんだ?」と問われても、返答に窮するがあえて言わせてもらうと「人生は思い通りにいかないことが多いけれど、根気よくめげずに頑張っていこうなあ。」という、励ましとも慰めともとれるような雰囲気を醸し出す音。

こういうときに音を言葉で表現する難しさをつくづく感じる(笑)。

そういう点で、このアンプは一本調子のところがあり、表面的な美しさに終始する印象を受ける。もちろん贅沢な悩みではあるが・・・。

しかし、このお値段でこの音ならもう十分である。何しろ近代管だから、スペアの確保は簡単だし、エージングがもっと進めば音の深みが出てくる可能性だって十分秘めている。

メチャ高価なことで知られる古典管の「50」だが、希少なブランドのペアともなると軽くこのアンプのお値段をオーバーしてしまうので、そういう方々がこの音を聴いたらいったいどういうご感想を述べられるだろうかと思うと実に興味深い(笑)。

と、ここまで書いてきたところ、「50」アンプの噂を聞きつけたオーディオ仲間(2名:大分市)が試聴にお見えになった(3日の午後)。さらに急遽アンプの持ち主のYさんも加わっての一大饗宴となった。

スピーカーを「AXIOM80」に絞って真空管アンプ6台により「どれがベスト1か」の争いとなり、「群雄割拠の血を血で洗う戦国時代」の様相に全員が「いやあ、今日は最高に面白かった!」(笑)。

詳細については次回へ~。


 

 


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