オーディオ機器の中で「華」といえば「スピーカー」(以下「SP」)であることにあまり異論はないだろうが、これほどお国柄(気質と気候)が出る機器はないと思っている。
たとえば、我が家の7系統の「SP」となると全てイギリス製のユニットを使っているが、
まず、グッドマンでは「AXIOM80」(オリジナルと復刻版の2種類)と「トライアクショム」、次にワーフェデールでは「スーパー12」と「スーパー10」、そしてリチャードアレンの「ニューゴールデン8」、さらにはモニター・オーディオの「PL100」、最後にデッカの「リボン型ツィーター」といった具合。
いわば「ブリティッシュ・サウンド」というわけだが、その特徴をあえて形容するとすれば品のいい紳士みたいな音の中に独特の「翳り」を出してくる傾向が強い。
まあ、よく言えば「翳り」だが、悪く言えば「ひとひねりもふたひねりもした素直ではない」音ともいえるが、こういう音じゃないと伝わってこない音楽があることもたしか。
その点、アメリカ製(西海岸)のSPは陽気で後腐れのないスカッとした音を出すところがなかなか捨てがたい。
たとえば「カリフォルニアの晴れ渡った青空のような音」と形容されている「JBLサウンド」に未練を持つ理由の一つである。
で、幸か不幸かやたらにJBLの音を聴きたくなる時期が周期的に巡ってくるわけだが、今回がまさにそうで、気候が温暖になってきたせいで気分も開放的になってきたせいかな~(笑)。
現在、JBL系で手元に残っているSPは「D123」(コーン型)、「175コンプレッション・ドライバー」「075ツィーター」(ステンレス・ホーン付き)の3つだが、この中で一番好みなのは「175」である。1000ヘルツあたりから使えるのでとても便利がいい。
それにJBLで苦手とされる弦楽器もしっとり気味で鳴らせるところもいい。まあ、鳴らし方次第だが。
この175を使って「JBLサウンド」を目論んでみたいところだが、問題は代えるタイミングにある。
現在非常に気に入ったサウンドが出ているのにいざ代えるとなるとかなりの勇気がいる(笑)。
そこで、我が家の場合いつもSPを交換するタイミングは「運動ジム」に行って「ひと汗」流してからと決めている。
まずは身体からが先決で、次いで気分の転換につなげようという作戦だ。
そして、構想すること2日あまりで一昨日(9日)の午後にようやく腰を上げた。
ポイントは次の二つ。
1 日頃サブ・ウーファー(100ヘルツ以下)として使っている「ウェストミンスター」を活用して1000ヘルツあたりまでを担当させる。
内蔵しているユニットはワーフェデール「スーパー12」(口径30cm:補助バッフル付)で、非常に柔らかいエッジと赤帯マグネットの持ち主である。
音声信号に対する反応の速さと量感のバランスが絶妙なので、おかげさまで口径38cmのユニット群を未練なくすべて追放出来ました(笑)。
2 1000ヘルツ以上は前述の「175ドライバー」(JBL)を使うことにしよう
ただし、「175」を使うだけで「JBLサウンドと言うな!」とお叱りを受けそうだが、1000ヘルツ以上で音の性質がほぼ決まるのであながち厚かましいわけでもあるまいと思うがどうなんだろう。
たとえば、家の土台部分が低音域だとすると、住宅部分の快適な居住性を担うのは中高音域だろうから。
で、1000ヘルツあたりを境にした2ウェイ方式のクロスオーバーの設定となると「コイル」と「コンデンサー」が要る。
「シンプル イズ ベスト」で手持ちの道具を動員した。
左側が「175」用の「12μF(マイクロファラッド)」のコンデンサーで、「周波数ネットワーク早見表」によると「1700ヘルツ」(-6db/oct)あたりでローカットできる。
右側が「スーパー12」用の銅箔コイル「1.5mH(ミリヘンリー)」で、これも「早見表」によると「850ヘルツ」(-6db/oct)あたりでハイカット出来る。
これまでの我が家のポリシーはフルレンジを中心にしてサウンドを構築することにあり、コイルは「200ヘルツ以下」、コンデンサーは「2万ヘルツ以上」しか使わないことにしていたが、たまには「掟破り」もいいだろう。
何しろオーディオに絶対という言葉は無いんだから~(笑)。
で、構想と道具立てが決まれば後は早い。作業はほんの20分程度で済んだ。
最後に、肝心の駆動するアンプだが、このほど改造してもらった「71系シングル」アンプの2号機が「175」用として満を持して待機している。前段管は「ECC83」(BRIMAR)、出力管の71Aは「レイセオン」の赤ラベル(刻印)。
問題は1000ヘルツ以下を担当するアンプだが、ウェストミンスターの長大なバックロードホーンの膨大な空気量を揺り動かすとなると、こればかりは試行錯誤するしか手はあるまい。
はたして、どういう音が出てくれるか「ハラハラドキドキ」と手に汗を握りながら胸が高まるばかり(笑)。
以下、続く。