「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

南スコットランドからの「ウマさん便り」(2023・4・11)

2023年04月11日 | ウマさん便り

「向田邦子とジネット・ヌヴー 」 

テレビドラマなどで、教訓めいたセリフを書く脚本家はあまり好きじゃない。なんか上から目線を感じるんやね。もっとも、僕がひねくれているせいかもしれないけど…。だから、教訓めいたセリフの少ない向田邦子の脚本には共感を覚えていたし、ハッピーエンドでさえ、ふと考えさせる何かがあったようにも思う。

先月だったか、YouTubeで、向田邦子のドキュメンタリー「没後20年、向田邦子が秘めたもの」を観た。驚くべき内容だった。

数々のドラマを書いてきた彼女だけど、彼女自身が誰にも明かさなかった秘めた恋こそがドラマではないか?と思ったね。いつもそばにいた彼女の妹さえ知らなかった秘めた恋…

向田邦子の恋文5通が、亡くなった相手の遺族によって発見され、彼女に返却された。その手紙を向田邦子はタンスに秘蔵していた。後年、亡き姉の部屋を片付けていて、その手紙を見つけた妹は、とても驚いたという。

妹の判断で、20年後に公開されたその恋文を読むと、向田邦子が、病に伏せる彼に、献身の心遣いを見せていたのがよくわかる。が、妻ある人への恋は、彼女の作品にどのような影響を与えたのか?

あれだけ多くのドラマを書いてきた向田邦子だけど、自身に秘めたストーリーだけは書けなかったんでしょうね。

向田邦子は、書くドラマがことごとく高視聴率を記録し、さらには、様々な人間模様を描いた「思い出トランプ」が直木賞に輝いた。そんな絶頂期の彼女が、台湾での航空機事後で還らぬ人となって久しい。

絶頂期の突然の死…で思い出すフランス人がいる。

ネット・ヌヴー …

今から80年以上前に彼女が弾いたヴァイオリンは、今に至るも、ぼくにとって日常の癒しとなっている。

小学校一年の頃だったと思う。家にあったソノシート(これ懐かしい人は歳がわかるよ)で、ヴァイオリンの巨匠、ロシアのダヴィッド・オイストラフを知った。

どういうわけか、そのチャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルトに痛く惹かれたんやね。ませとったんかいな? ま、それがクラシック音楽に親しむきっかけとなった。

時が流れ、高校時代やったと思う。たまたま、そのダヴィッド・オイストラフの伝記みたいな文章を読んだ時、27歳の彼が国際コンクールで二位になった時の話が僕の興味を惹いた。

一位になったのが若干15歳、フランスはパリ産まれの女の子だという。僕は、あのダヴィッド・オイストラフを超える15歳ってどんな娘や? さらに、二位の27歳オイストラフに「彼女の一位は当然だ」と言わしめた、その15歳のフランス娘に、僕が興味を持たないわけがない。

さっそく、心斎橋の日本楽器のレコード売り場へ行って、そのフランス娘のレコードを探したら…あった!

ジャケット写真を見ると、めちゃ可愛い娘やないか。嬉しくなってニコニコしながら地下鉄に乗った。

ところがや、えらいこっちゃ。家に帰って解説を読むと、ジネット・ヌヴーは、30歳の絶頂期に、アメリカへ演奏に行く途中の飛行機事故で亡くなってる。もうこの世にいないんや。ショック!

7歳でオーケストラと共演、天才少女と絶賛され、成長とともにその人気はうなぎのぼりに高まり、ヨーロッパ各地での演奏はもちろん世界中で演奏し、アメリカへも毎年のように演奏旅行をするようになる。

初レコーディングが1938年で19歳の時、今から80年前、もちろん、はるか戦前のことです。

クラシック音楽に造詣の深い芥川賞作家の五味康祐さんの本を読んで嬉しかったのは、世界的演奏家や高名な評論家でさえ容赦無く切って捨てる辛辣な彼が、ジネット・ヌヴーを絶賛していることです。

…彼女の早い夭折が惜しまれてならない…と。

当時、ぼくが集めた彼女のレコードは、今の時点で言うと、どれも70年から80年前の録音で、音は決して良いとは言えなかった。ところがCDの時代になってリマスタリングの技術が向上したせいか、音が格段に向上した。

今、彼女のCDは全部持ってるけど、彼女のヴァイオリンの音色を、現代の録音と比べても遜色ない良い音で聴けるのはとても嬉しく思っている。

彼女の残したレコーディングはどれも素晴らしいけど、特に1948年3月に録音された「ブラームス・ヴィオリン協奏曲」には、もう言葉もない。

さて、今宵は、人生の絶頂期に飛行機事故で亡くなったお二人のご冥福を祈りつつ、YouTubeでこのお二人を偲びたい。おのおの方も是非一緒にご覧下さい。

エッ? おいらの絶頂期? あんたなあ、あたしゃ、まだまだこれからでっせー! エッ? なんやて? すでにもうろくしてる? ほ、ほっといてんか!

向田邦子…1981年8月22日 51歳没

ジネット・ヌヴー…1949年10月28日 30歳没 (ぼくが産まれた4ヶ月後)

YouTube →「没後20年、向田邦子が秘めたもの」

YouTube →「ジネット・ヌヴー /ショパン夜想曲第20番」

ショパン夜想曲第20番…

映画「戦場のピアニスト」で、廃墟に隠れていた主人公がナチの将校に見つかり、ピアノを弾くように命令されて弾くのがこの曲。元はピアノ曲です。多くのヴァイオリニストがこの曲を引くけど、亡くなる3年前のジネット・ヌヴーのこの演奏を聴くと、目が潤んできて、もう…

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