前回からの続きです。
テレビ視聴用のスピーカーを作ってみようと思い立った日の翌日(5日)はあいにく朝から一日中雨が降りそぼったが、6日(木)は一転して秋晴れ。
9時の開店を待って近くのホームセンターに行って、松の集成材を購入し計算したとおりの寸法にカットしてもらった。
「90㎝×180cm×1.8cm」と「90cm×60×1.8cm」のパネル2枚をそれぞれの寸法の12枚に小分けするのだからなかなかたいへんだったが、17回のカットで済んで40分ほどで終了。
肝心のSPユニットを取り付けるバッフルの穴開けと開口部のR仕様だけは専門の業者に任せて、翌日の7日(金)の11時ごろに持ってきた。
ようやく組立材料が勢ぞろい。
取り付けるSPユニットはとりあえずリチャード・アレンの「ニューゴールデン8」(1980年5月製造)にした。
以前、試聴したときにはイマイチの感を持ったのだが、容れるボックスが変われば豹変するかもしれないと期待を込めたユニット。形状からしてメカニカル2ウェイだが、高域の繊細さにこだわるいかにもイギリス製らしいユニット。
SPコードを取り付ける端子の部分(赤と黒)がネジ止めになっているが、この”やり方”だと接触箇所が次第に酸化して音が悪くなるので、当然のごとく取っ払って(SPコードを)「半田付け」したのはいうまでもない。
簡単に音を良くする方法の第一番は機器同士の接続箇所を可能な範囲ですべて「半田付け」することに尽きる。
木工用の接着剤と長さ3cmのネジを準備していよいよ11時半から組み立て開始。もちろん昼食を抜きにしてかかりっきりでようやく完成したのが15時ごろ。
およそ60本のネジをドライバーで締め上げたので、手の皮の一部が擦り剝けてしまった。ドリルドライバーを使うと楽だがネジの締め加減があるのですべて手動というのはやっぱりつらい。
さあ、いよいよ楽しみの音出し。
ハイビジョンレコーダーに4年ほど前に録画したムターが弾く「ヴァイオリン協奏曲」(モーツァルト)を聴いてみたところ「何と、ふくよかでゆったりとした響きなんだろう。ヴァイオリンの艶のある音色が実にいい。不自然な響きがまったく感じられず、もう、これで十分。」
「もう、これで十分」という言葉が口癖になりそうなほどだが、それほど高価なユニットじゃないし、材料代も安くて済んだのに、「これからこんな音でテレビの音が楽しめるなんて」と、うれしさも”ひとしお”。
これまでどおり、ボックスの中には羽毛の吸音材をギュギュウ詰めにしたが、これで「外れた」ことがないのは実に心強い。
作った経緯からして、これも亡き母の置き土産かもしれない。
それと、作る前にはまったく意識しなかったが、ふと、今回のSPボックスの大きさと重さから、ずっと以前に愛用していたタンノイⅢLZ(口径25cm)を思い出してしまった。当時、「黄金の組み合わせ」と言われたラックス社の真空管アンプ「SQー38FD」でよく聴いたものだった。
ⅢLZは今でも人気があって、オリジナルボックス入りはオークションでもご大層な値段のようだが、音の質は大違いで高域がスッと抜けた爽快さはリチャード・アレンの方が断然好み。
これから、テレビの音楽番組を観る時間がぐ~んと増えそうだ。