かばい合う甘い調査でうやむやか
2017年5月18日
トランプ米大統領が「自分で掘った墓穴に落ちかねない」とブログ(5月14日)に書きましたら、新たな疑惑も発覚し、司法省が特別検察官を任命し、大統領自身、周辺の捜査に直接、乗り出すことになりました。証拠をあちこちに残していると思われるトランプ氏は、土俵際に追いつめられようとしています。証拠はまだまだ出てきますね。「4年の任期を全うできまい」との懸念が可能性を帯びてきました。
政府高官、官僚らは自分の身は自分で守るしかない、というのが米国の社会文化でしょう。そのためには、大統領に不利な情報でもリークし、追いつめることをいといません。解任したFBI長官に、ロシアとの関係をめぐる元側近に対する捜査の打ち切りを求めたことは、捜査妨害になり、疑惑は致命傷に発展します。
政治のトップに対する追及は日米同時進行のような形です。日本では安倍首相が森友学園問題に続き、特別に親しい友人が経営する加計学園の獣医学部の認可で特別な配慮をしたのではないかと、問題視されています。官僚、行政組織は自分たちを守るには首相を守ることが先決だと、考えているようです。
基本は第三者のチェック
社会的な背景や政治のあり方が日米で全く違うし、問題の次元が異なります。はっきりしているのは、日本では、政権側にをもっぱら忖度している官僚や行政側に問題解明を求めていては、本当の事実はつかめないということです。国会で野党が騒いでも、忖度文化でかわされるだけです。第三者機関や検察などのチェックしか、解明は期待できません。
日本では不思議なことがたくさん、あります。まず、加計学園の獣医学部新設で、安倍政権がかりに便宜を図らったとして、そのどこが違法なのかです。便宜の見返りに金銭の授受があれば、賄賂に相当し、当然犯罪です。政権側はまさかそんな不用意なことまではしていないでしょう。親しい友人に特別な便宜を図ったとすれば、政治はすべてに公正、公平に対応しなければならないという大原則、道義には背くという点です。
そうだとしても、「済まなかった」と詫びれば、事件にならないでしょう。ただし、詫びれば認可取り消しですね。取り消そうにも、来年4月の開校に向け、工事がかなり進んでしまっています。従って詫びるわけにはいかない。不思議なのは、首相が「この問題について働きかけていない。働きかけているとあれば、責任をとる(辞任する)」と答弁していることです。
トランプ氏はどうでしょうか。「大統領の権限は特別で、外交機密でも指定を解除できる」(つまり、どこが悪いのか)と開き直っているのと、大違いです。安倍首相は「そのどこが悪い」と居直りもせず、いきなり「責任をとる」です。つまり理由も言わずに疑惑には発展させないよ、との決意表明です。妙な対応です。
官房長官の軽率な発言
次に、加計学園を特別扱いすることは「官邸の最高レベルがいっている」(つまり首相の指示があった)という政府の内部文書を、野党が国会で取り上げました。菅官房長官は「作成日時、作成部局が不明確。こんな意味不明のものについて、いちいち政府が答えることはない」を述べました。これはもっと訳の分からない発言です。
実名の官僚が登場しています。打ち合わせの日時も入っています。菅氏が「意味不明」というなら、実名ででてくる官僚(内閣府、文科省)にあたったうえで、そう指摘すべきでしょう。「意味不明」という結論が先あったのではないか。
さらに、その文書は文科省では、「複数の関係者が共有している」という情報があります。そのことを内閣官房は確認しているのか。かりにそうした文書があったとすれば、今頃は回収されています。そうであっても、デジタル(パソコン)情報としては、残っているはずです。チェックしていませんね。内閣官房はチェックする気はないのでしょう。
この種の内部資料、内部情報を内部の人物がチェックするというのも、おかしな話です。身内をかばうのは当然です。行政側は国会質疑で「事実関係を調査しているところです」と、繰り返すばかりです。外部の第三者による調査、チェックが必要です。トランプ問題で、特別検察官の任命の意味は、大統領も拒否できない第三者の捜査ということにあります。
官僚の人事権はますます官邸に握られるようになっています。意に背けば、左遷でしょう。官僚側の内部調査が政権側の不利になることはありますまい。森友学園の用地払下げ問題で、財務省の関係官僚の対応で、すでに実証済みです。政権の意向を忖度して、便宜を図らい、政権を意向を忖度して、調査にあたる。恐らくそんなところではないでしょうか。結論は結局、うやむやということです。日米の格差は大きいですね。
官僚は官邸から人事権を取り戻すべく、居直ったらどうですか。
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