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日米とも深刻な政治危機の中で株価は最高値の怪

2024年03月08日 | 政治

 

政治不安がマネーばらまく

2024年3月8日

 泥沼状態にはまった米大統領選、岸田政権の支持率の急落といい、日米ともに深刻な政治危機に陥っています。その中で株価は両国とも史上最高値を更新しました。政治的安定がマネー市場の安定に欠かせないという常識がもう通用しないようです。政治不安から財政金融の膨張策が長く続き、大量のマネーが市場に供給された結果なのでしょうか。

 

 金価格まで史上最高値を更新しています。今年の実質経済成長率は米国2・1%、日本1%(OECD見通し)と低調です。経済のファンダメンタル(基礎的条件)と比べてマネー市場が肥大化する一方、それが必ずしも実体経済に流れていかない。各国政府、中央銀行は一度、立ち止まり、世界的規模のマネー休戦(金融軍縮)に踏み込めないものなのでしょうか。

 

 日本の株価は4日、4万円台に乗せました。2月22日にこれまでの最高値の3万8915円を34年ぶりに更新した勢いを保ち、続騰しました。34年間の低迷をまず嘆くのが普通なのに、日経新聞は「史上初めて4万円台、今年2割高」と、上機嫌の紙面を作りました(7日は3万9700円)。

 

 米国市場では、同じ2月22日にダウが初めて3万9000㌦を超え、史上最高値を更新しました。「日経平均(4万円)が米ダウを超えた」の声も上がりました。1㌦=150円近辺ですから、単純計算をすれば、日経平均が約600万円にならないと、ダウを超えたことになりません。

 

 おまけに金価格も1トロイ㌉=2160㌦と史上最高値を更新しています。こちらは、地政学的にみた国際情勢の不安の色濃い反映なのでしょう。

 

 「米政治システムの機能不全は先進民主主義国の中で最もひどい。今年はそれがさらに悪化するだろう」(日経新聞1月25日)と、著名な米政治専門家のイアン・ブレマー氏が予告しています。

 

 同氏は「二大政党の候補者はいづれも、大統領に不適格だ。トランプ氏は何十件もの重罪で訴追を受けており、バイデン氏は二期目の終了時に86歳の高齢になる。米国人の大多数はどちらも国のリーダーにしたくないと考えている」とまで断言しています。

 

 米国の世論調査では、「有権者の7割が2人の戦いではなく、新しい候補を望んでいる(ロイター通信)」だそうです。少なくとも、バイデン氏が早い段階で引退を表明し、民主党は次世代の候補を選ぶ準備に入るべきでした。トランプ氏が勝てば、勝因の一つはバイデン氏に起因する。こうまで酷評される大統領選はなかったでしょう。

 

 トランプ氏は「支持者の暴徒化を招いたとされる米連邦議会占拠、政府の機密文書持ち出し、大統領選結果を覆そうとした画策(ジョージア州)、ポルノ女優への口止め料の支払いに関する帳簿改ざん」の4つの事件の裁判が待ち受けています。こんな大統領候補はかつていなかった。

 

 そのうちの一つを冒しても、日本の首相の場合でしたら、完全にアウトでしょう。まだ日本のほうがまだ傷は浅いとはいうものの、「少なくとも10数年ー20年以上前から、やっていたらしい政治資金の裏金化問題」で、自民党は危機的な状況に追い込まれています。時効にかからなかった過去5年分の数億円に、過去の分を加えるともっと巨額になるでしょう。

 

 岸田首相の政権支持率、自民党支持率はともに20%程度まで急落し、「支持政党なし」が50%を超えました。野党が連立を組んで対抗すれば、総選挙で勝てるかもしれない。50%を超える無党派層の動き次第です。

 

 トランプ氏とは違った次元の不正(政治資金規正法違反)で、岸田政権は立ち往生しています。いまだに「政治倫理審査会に誰がでるかでないか、何人でるか」というレベルでもめています。

 

 米大統領選を巡り、新聞社説は「米国の民主主義は廃れたのか」(読売)、「論戦なき独走の危うさ」(朝日)、「『米国第一』の再来に備えを」(毎日)、「再対決の大統領選が米国の閉塞感を映す」(日経)と、世界最大の民主主義国における最大のイベント(大統領選)に懸念を表明しています。

 

 懸念すべきは、政治資金の裏金化疑惑でみる日本の民主主義政治も深刻な危機に陥っているということです。米大統領選をテーマに社説を書くならば、そこにも触れなければならない。論説委員会は集団で議論して担当者が書くはずなのに、そこに思いが至らない。

 

 世界全体を見渡せば、民主主義国より、独裁主義国家(権威主義国家)の方が数を上回る。民主主義システムの将来が危ぶまれているのに、「最大最強の民主主義国家である米国が最も分裂し、機能不全に陥っている」(ブレマー氏)。有数の民主主義国の日本も機能不全の状態です。

 

 選挙は民主義システムを動かす最も基礎的な装置です。その選挙をやるごとに、米国では社会の分断が深めています。日本の政治資金の裏金問題も、選挙対策に直結しています。裏金が必要とされるばかりでなく、選挙対策から財政金融政策が膨張し、世界で最悪の財政金融状態を招いてしまった。

 

 米大統領選は民主主義システムの現状と将来を象徴しています。一方、日本の政治資金疑惑は自民党政治の隠れていた舞台装置をみせてくれています。日米が直面している政治危機をもっと堀り下げた視点から見つめ直してほしいと考えます。

 

 

 

  

 

 

 

 

 


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