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新聞・テレビが報道しない本の凄まじい値上がり

2022年10月06日 | メディア論

 

1000円を超す新書が続々

2022年10月6日

 読書の秋です。資源高、円安でこの秋は値上げラッシュです。主な食品、飲料メーカー105社では、6500品目が平均で16%値上げされるとのことです。企業間物価は10%も上がり、消費者物価に波及してきます。出版物はどうなのか。

 

 値上げラッシュなのに、出版物の値上げの報道にはなかなかお目にかかりません。主要な新聞社は出版部門を持っていますし、テレビは新聞社の系列会社ですし、週刊誌を持つ出版社は自社のことですから、値上げに触れません。発表もしません。他業界のことばかり報道しています。

 

 書店の店頭に行ってごらんください。最も分かりやすいのは新書の値段です。手軽に買ってもらえるように、出版社は1000円以下(税込み)の価格帯に抑えてきました。それがどうでしょう。1000円を超す新書が続々と出版されているのに気づくでしょう。

 

 新書は同じ筆者がシリーズのように何点も書きますし、ページ数も300頁前後です。価格帯もこれまでは8、900円(税込み)に集中し、価格動向を比べるには格好のジャンルです。

 

 文芸関係が多い文庫はページ数にばらつきがあります。ハードカバー本も本の大きさ、ページ数、装丁がまちまちで、値上がりを比べにくい。私自身、新書の愛用者で、この2,3年の値上がりには敏感です。文庫、ハードカバー本もかなり値上がりしているでしょう。

 

 今朝の新聞広告を見ますと、ベストセラーが多い佐藤優著「危機の読書」(小学館)が1012円(税込み)です。消費税が10%に引きあげられたことも影響はしてはいるでしょう。とにかく新書が1000円前後の価格帯に移ってきたことに間違いありません。

 

 1000円どころか、「日本の古代豪族」(講談社、510頁)は1500円、「論文の書き方」(同、470頁)は1200円です。「1億3千万人のための論語教室」(河出、530頁)は1270円、「ぼくらの戦争なんだぜ」(朝日、450頁)は1200円です。1000円ラインを楽々と超えているのです。

 

 新書の価格には二つの類型があるようです。「1000円以下に抑えようとしも、紙・印刷代、物流経費、消費税の影響で、税込みでは1000円を超えてしまう」と「ハードカバー本の代用として、新書の概念を超える分厚いものにし、1000円ラインを初めから意識しない」の二つです。

 

 岩波書店は1000円を多分に意識してきたようです。それが「歴史像を伝える」(350頁)が1276円(税抜きでは1160円)、「世界史の考え方」(360頁)も1276円(同)です。

 

 製造原価、関係諸経費の値上がりに加え、活字離れで書籍の販売部数が落ち、採算が悪化しているため、値上げしている部分もあるでしょう。値上げするから売れなくなる、売れなくなるから価格をあげるという悪循環にはまっていないか心配しています。

 

 少なくとも、新聞・テレビ、出版社はこうした傾向を、はっきり報道すべきです。それをしていない。読者が店頭に行き、始めて急速な値上がりに気が付くというのは好ましくない。平均で何%引き上げるとか発表すべきです。値上がり商品の実例の中にも入れなければならない。

 

 印刷用紙代も今秋、15%ほど値上がりするようです。ペーパーレス化が進み、需要が減っているのなら、価格は下がるはずです。それは逆に値上がりするのは、原料のチップ、古紙、重油などの値上がり、つまりコストプッシュ現象が広がっているためでしょう。

 

 一つの提案は「相変わらず返品率が3,40%と高く、これが最終的には新刊本の価格の上乗せになっている。売れない本の印税まで読者は支払っていることになる。そこで発行部数ではなく、実売部数に応じて印税(10%程度)を執筆者に払うようにすることです。

 

 もちろん返品率の引き下げも必要です。売れないから新刊本をどんどんだし、どれかが当たればいいという考えから抜け出すことです。新刊書は年間で7万点です。毎日、200点近くの新刊書が発売されている。本当にばかげたことをしています。

 

 こんなことで成り立っている業界、商品はほかにはまずないでしょう。再販制度(末端の販売価格の指定、拘束)がそれを支えています。出版社は出版業界の構造的な改革に取り組んでほしい。

 

 

 


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