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予感 消費税10%は先送り

2014年03月30日 | 経済

 税、物価、貯蓄目減りの三重苦

                     2014年3月30日

 

  4月1日から消費税が3%、あがって8%になります。当初の予定通り、さらに来年10月に2%、上がって10%になるのでしょうか。そこが問題です。今年末に方針を決めると安倍政権はいっていますね。わたしは10%への引き上げは先送りになるような予感がしています。

 

 なぜでしょうか。結論から申し上げます。消費税引き上げ、物価上昇率目標、ゼロ金利による貯蓄の強制的な目減りという三重苦に、現役を退いた世代ほど襲われ、不満が高まるからです。

 

 先日、わが家の2台目の小型アナログテレビを、消費税が上がる前に買い替えました。消費税が8%なる前に、と思ってのことです。そうしましたら、家電量販店は4,5月はポイント(実質的な値引き)を通常の10%から13%に引き上げるといいます。急ぐことはなかったのね。とにかく駆け込み需要の反動で、売り上げがおちないようにするとの対応策ですね。 

 

 消費税が5%の時までは、端数のような印象で、それほど抵抗感がありませんでした。それが8%になると、「高いなあ」です。さらに10%になると、きれのいい数字なので、店頭ですぐ税込み価格を計算でき、「買うのをやめておこうか」となるひとが増えるでしょう。確実に個人消費は減り、景気に大きな影響を与えるでしょうね。

 

 新聞の世論調査では、6割から7割のひとが消費税10%に反対しています。以前は「医療、年金などの社会保障の財源に消費税をあげることに賛成ですか、反対ですか」と聞くと、「賛成」のほうが多かったですね。一種の誘導型の質問ですがね。読売新聞がそうしていました。朝日新聞はいきなり「消費税引き上げに賛成か反対か」を聞いていましたから、「反対」が多かったような記憶があります。朝日も意地が悪いですね。

 

 高齢化でお年寄りの医療費、介護費、年金が増え、「消費税を社会保障財源に」 という考え方は本来なら正しいのです。それが消費税10%となると、さすがに抵抗感が強まります。

 

 それに加えて重要なことは、政府、日銀がデフレ脱却のために、物価上昇率目標を年間2%と定め、とにかく物価があがるようにと、日銀が続けている異次元の金融緩和です。2月の消費者物価は前年比で1・3%、あがりました。目標通り2%になったら、どうなるでしょうか。単純な算数でいくと、消費税と物価上昇をあわせ、消費者には5%の負担増となります。大きいですね。

 

 消費税が10%になったらどうでしょうか。消費税、物価ともに2%アップですから、2015年はさらに4%の負担増ですね。ただし、消費税は10月からのアップなので、正確にいうと、年度ベースでは消費税の負担増はその半分の1%相当です。

 

 安倍政権は毎年、物価が2%(消費税引き上げ分を除く)、あがるようにしようとしています。消費税があがる前の2013年度を起点に計算しますと、物価は2014年度に2%上がり、2015年度もまた2%、上がります。どんどん上乗せされていきます。2015年度には単純にいうと、2013年に比べて9%の負担増ですね。大きいですね。

 

 経済、景気が好転した結果、需要が高まり、物価もあがるという「いいインフレ」なら、経済体質が改善されていることを示す体温みたいなものですから、許容されるでしょう。最近の物価上昇には、金融の異次元緩和、円安による輸入物価の上昇、原発停止によるエネルギー料金の上昇、資産バブルの発生の影響などが含まれています。いわゆる「コスト・プッシュ型」の要素が大きい物価上昇ですから、ほめられません。

 

 ここまで、消費税引き上げ、政策的な物価引き上げによる負担増の話をしてきました。もうひとつ忘れてはいけないことは、ゼロ金利です。現役を引退した団塊の世代を含めた退職者世代には働いてためた貯蓄は利子収入を生んでいません。その一方で、政府、日銀は物価を毎年2%、上げていくのですから、貯蓄は目減りする一方です。1000万円の預貯金は毎年、20万円相当、5000万円なら100万円相当ずつ資産価値がへるのです。こたえますねえ。

 

 通常の経済状態なら、物価上昇分程度の金利上昇がおきます。よほどへまをしない限り、貯蓄の実質的な価値はそうそう増減はしません。

 

 それに対して、日銀の金融政策は「物価は上げる、金利はゼロのまま押さえつける」というものです。それによって、超低金利でおカネを調達できる企業、投資家がもうけ、めぐりめぐって日本経済全体をよくしようというシナリオです。全体のために、しばらくは、経済の自然な流れに逆行する「いびつな政策」を我慢してくれというのです。

 

 そうしたカラクリが皮膚感覚で、皆が身にしみて分かる時がくるでしょう。現役を退いた世代がうける三重苦を安倍政権は無視できなくなります。

 

 年度途中の2015年10月に消費税を引き上げるという予定も、極めて妙な話です。2015年春の統一地方選挙への影響を避けるために、きれのいい年度初め(4月)実施をさける算段でしょう。ただし、2015年10月を想定して2015年度予算を編成するには、2014年末には本当に消費税をまた引き上げるのか、先送りするのか、決めなければなりません。

 

 相当に景気がよくなり、経済循環が好転していない限り、安倍政権は悩んだ末、消費税10%を先送りするだろうと思います。そうしない場合でも、先送りできる付帯条件をつけるでしょう。その先はどうするのか。国政選挙が近づいてきますから、先送りした後の、次の手の打ち方が難しくなります。これまで、予想以上の追い風に乗ってきた安部政権はどうするのか。

 

 「物価は上げる、金利は上げない」という不自然な異次元緩和は、長期間やるべき政策ではありません。これについても重大な決断を迫られましょう。

 

 

 



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