地震電磁気学による新しい手法
2015年7月21日
相変わらず各地で地震や噴火が絶えません。東日本大震災、阪神淡路大震災級の再来もありえます。伝統的な地震学では、地震の原因、構造分析はできても、地震の予知、予測は困難だというのが定説になっています。
そんな時に登場しているのが、電磁気的手法を使い、短期予知に絞って予測をしようという動きです。地震発生の研究、地殻分析による中期予測(数十年単位)、長期予測(100年単位)は従来からの地震学に任せます。「南関東で30年以内にM7級の地震が起きる確率は70%」というのは、過去の地震の統計的分析、プレート(地下の岩盤)の観測による中期予測です。発生の確率は分っても、「一週間後か、1ヶ月後か、一年後」か分りません。
新しい地震学が誕生
そう、肝心なのは「いつ起きるのか」ですね。100年後か2、30年後かという予測はもちろん価値があるにせよ、問題は「いつなのか」ですね。「新しい手法で、M7クラスの大地震を、なんと一週間前に予知できる」という地震科学が誕生しています。
昔の記者仲間が集まる少人数の会合に、新しい地震予知学の第一人者をお招きし、話を伺いました。早川正士・電気通信大名誉教授がその人で、昨年7月に日本地震予知学界を設立しました。国際会議も開いており、各国から200人の専門家が集まりました。世界からほぼ全員が集まったといい、そのうち懸命に取り組んでいるのは30人程度だといいますから、まだまだ若い科学ですね。
格段に安あがりの費用
伝統的な地震学にはこれまで巨額の予算が投入されてきたのに、予測能力は期待を裏切っています。それに比べ、電磁気現象に着目した新しい手法は、その現象を観測するための発信局、受信局のネットワークを構築すればよく、予測はかなり正確だし、格段に費用は少なくてすむそうです。
理論を簡単にいうと、地震が起きるときは、地殻変動、地層の圧縮、岩石の破壊が進み、電気、電流が発生し、電磁波などが引き起こされる。大気圏、電離層が荒れるそうです。こうした地震電磁気現象を高感度受信システムにより測定します。1994年の阪神大震災の際、世界で最初の明瞭な前兆(異常)の観測が数日前から得られ、この方法に確信を深めたそうです。
数々の的中例、確率7割
最近では、5月25日の埼玉北部地震、29日の小笠原諸島地震、30日の口永良部島噴火など、ほぼ一週間前に発生を予知し、的中させたといいます。名誉教授は「的中率は7割」といい、予知情報の提供ビジネスを始めています。今後、観測地点(電磁気測定の送受信施設)を増やせば、精度が上がるでしょう。受信設備は200万円ほど、送信設備は数十億円だそうで、短期予知により得られる利益と比べるとわずかなものかもしれません。
「1週間後」の意味は重要です。震災の発生は防げなくても、そういう予報がでれば、「震災への備え」ができます。しばらくは地下鉄は避け、地上の交通機関を利用する。外出時には非常バッグ(食糧、水など)を持っていく。家族は避難場所、集合場所を確認しておく。交通機関は緊急時の準備にはいる。企業は操業停止に陥った場合の生産計画を想定し、部品の手当てもしておく。国や自治体は企業と連携し、帰宅困難者対策を確認しておく。いくらでもありますね。予知情報がはずれたら、「はずれてよかった」でいいのです。
地震予知は原発対策にも有用
意外な効用は、原子力発電所発対策です。現在、活断層をチェックし、その可能性がなければ、安全性検査を経て、再稼動に踏みきる流れです。それでも国民の反対は強いのです。大規模な地震発生が一週間前に予知できれば、制御棒を操作して原子炉の稼動を抑制しておく、補助電源を点検しておく、節電計画を見直しておく、いろいろな対策をとりえます。大地震の発生は不可避であることを前提に、発生時の際の災害、被害、影響を最小化する考えですね。
地震学会の強い抵抗
「いいことづくめなら、なぜもっとどんどん、このシステムを普及させないのか」と、だれもが思いますよね。そこに立ちはかっているのが、伝統的な地震学によって立つ地震学会といいます。地震電磁気学への抵抗が非常強いのだそうです。地震学会と共生してきた気象庁もしかり。原発を持つ電力などは、真っ先に反応すべきなのに、規制官庁が新しい手法の関心を示さないので、不思議にも静観の構えです。
せっかく短期予知の可能性が高まったというのに、残念なことです。本格的に研究、検討し、本当に役立つなら新システムを取り入れればいいのです。東京五輪のための競技場建設に巨費を投入するより、ずっと国のために役立ちますね。
1週間前、ドコモはJESEAと提携し、地震予知に協力することになりました。
しかし、JESEAの地震予知手法は、電子基準点のノイズをそのまま予知に使うデタラメなもので、その成功率も広い地域に長期に渡る予知情報を出すことで稼いでいます。
(デタラメさの科学的な証明は個人ブログで書いているので、ここでは省略します)
問題は、ドコモとJESEAを繋いだのが、メディアだったことです。
メディアで大袈裟に「JESEAの地震予知は凄い」と流したものだから、ドコモが騙されたのです。
ドコモは一流企業です。
いずれ「電子基準点の位置情報を用いた地震予知研究では、有意な予知を行う事が出来なかった」と発表することになるのでしょう。
ですが、それまでは数万人と言われるJESEAの有料会員は、情報料を支払い続けることになるのです。
メディアは、流す情報に責任を持たなければなりません。安易に主観を交えるべきではありません。
一線を離れた中村様に申し上げることではないのでしょうが、新聞界の分断にしても、メディアが真実より主観に基づいた取材や記事を出しているようでは、世論の信頼を得られなくなり、結果的に政権の意のままになってしまうと、危惧しております。
伊牟田勝美と申します。
「食糧自給率の向上」をテーマにしたブログを運営していますが、科学全般にも好奇心を持っていて、脇道に逸れる事もしばしばです。
早川氏の地震予知も、関心を持って検証してきました。
まず、成功率70%が気になり、昨年7月から4ヶ月に渡って、早川氏と類似の内容で出鱈目な地震予知情報を20件出し、早川氏が規定している検証基準に基づいて比較を行ってみました。
その結果、私が行った出鱈目の地震予知情報の成功率は、80%となりました。なお、同期間の早川氏の地震予知の成功率は、67%でした。
次に、予知に成功しているなら、予知情報に対して正規分布するだろうと考え、予知情報にある地震の規模、期間、場所について検証しました。
その結果、正規性は全くなく、完全にマグレの傾向を示しました。
更に、地震の発生数の偏在を検証してました。その結果、地震が多い地域で成功率が高く、地震が少ないところではほとんど予知できていませんでした。また、予知に成功した地震の大半が予知した規模よりも小さな地震でした。
つまり、地震の発生頻度と予知成功が完全にリンクしたのです。
これらから、早川氏の地震予知の成功率は、マグレ当たりの67%だったと、結論しました。
実は、出鱈目の地震予知でも成功率を100%にするのは簡単です。例えば、1年以内に日本でM3以上の地震が発生すると予知すれば、100%の成功率でしょう。
早川氏の地震予知は、期間や場所、規模がやや厳しくなっている(本人のアプローチは逆だったと思いますが)ので、70%前後の成功率になっているだけなのです。
地震予知を単純な成功率だけで評価するべきではないということです。
本件の問題は、早川氏の地震予知情報が有料であることです。
出鱈目な地震予知を、有料にも関わらず元ジャーナリストが推奨するのは、如何なものでしょうか。しかも、地震予知を検証できないレベルなのに、地震学会を非難しています。
多少なりとも、世間に影響力がある立場なのですから、もっと慎重になるべきではありませんか。
もちろん、地震予知はできた方が良いに決まっています。ですが、現時点では地震予知が可能か否かが分かっていません。
現在は、特定の地震予知研究者に予算を配分するのではなく、地球深部探査船「ちきゅう」を利用する等、地震のメカニズム自体の研究を進めるべきです。
科学分野は、ジャーナリストにとって難しい分野かもしれません。ならば、事実だけを伝え、個人的な主張は慎むべきだと思います。
私がジャーナリストなら、「地震予知について、日本地震学会等の組織で公正に評価できる基準を構築すべきだ」と主張しますが、如何でしょうか。