新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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(怒り)金正恩は最高指導者でない

2013年11月20日 | 海外

 (おじさんは怒っている)2014年11月20日 

                     語感をもっと大切に  

 北朝鮮というならず者の国家のトップを、メディアがしばしば最高指導者と呼ぶぶことに以前から不快感を持っておりました。今朝のNHKの朝のラジオ放送で「北朝朝鮮の最高指導者の金正恩氏が米国のプロスポーツ選手と会いました」とかいうニュースを流しておりました。相手はバスケットボールの有名選手であったような気がします。午前7時前の番組で、ふとんの中でぼんやり聞いていましたので、正確ではないかもしれません。

 

 特に北朝鮮の場合、トップの呼称を最高指導者ではなく、せめて最高権力者と呼ぶか、単に第一書記という肩書きでを紹介すればいい、と思っていました。「なんで最高指導者というのだ」という怒りが、またこみ上げてきましたので、(おじさんは怒っている)シリーズで取り上げることにしました。

 

 英語が達者で、海外特派員を何度も勤めた昔の記者仲間に「最高指導者は英語でなんというの」と、聞きました。こう答えました。

 

 「 supreme leader だろう」

 

 辞書をひくと、「supreme」は「(地位、権力が)最高位の、(程度、品質が)最高の、最上の、最優秀の」などの訳が載っています。日本語で「最高」といえば、「極めて優れている」という意味でしょう。さらに「leader」「指導者」との組み合わせになると、「国家権力のトップに立ち、国や国民をいい方向に導く」という肯定的な意味がこめられることになります。金正恩氏のイメージとは違いますね。この人物は国民を劣悪な生活状態に置き、気に食わな人物は政治犯として投獄します。人工衛星だと称して長距離ミサイルは飛ばすし、核実験も繰り返しています。日本人の拉致問題も一向に解決しようとしていません。親、子、孫と3代続けて国家権力者の座につき、国を私物化しているのです。

 

 英語の「supreme leader」とは正反対の人物です。金正恩氏は国民、国民生活を悪い方向に引っ張っているし、国際社会の中でならず者の振るまいを続けている国家の親玉です。反社会的勢力のトップを最高指導者と呼んだら妙ですよね。北朝鮮は国際社会における反社会的国家ですから、同じことです。権力を握っていることは確かですから「最高権力者」はゆるせるにせよ、「第一書記」の肩書きで十分でしょう。

 

 日本の報道で、金正恩氏をめぐるニュースで「最高指導者」という言葉が頻繁に登場するようになったのは、金正日氏の後継者として注目されるようになってからです。特に父親の死後、どのようなポストにつくかで、本当の後継者になるのかどうかに焦点がしぼられてきてからです。後継者になるかどうかにはニュース性があったにっせよ、一面トップの見出しで「最高指導者に」という言葉が使われたとき、わたしは驚きました。北朝鮮は複雑な政治権力構造をもった国で、正式の肩書きだけからは、だれが本当の最高権力者か分らないので、そう表記したにせよ、語感をもっと大切にしなければなりません。

 

 オバマ氏は「米大統領」、安倍氏は「首相」と呼ぶだけで、わざわざ「米国の最高指導者」とか「日本の最高指導者」とはいいませんね。民主主義国家の政治権力的なトップは大統領か首相と決まっていますし、かれらが本当の意味での「最高指導者」かどうか判断に苦しむからでもあります。最近で、もっともおかしな日本の首相は、「沖縄の普天間基地を国外か県外に」といって、沖縄の人に幻想を抱かせ、日米関係にもダメージを与えた鳩山氏であり、この人を「最高指導者」と呼ぶ人はさすがにいないでしょう。

 

 もっとも国家体制が民主主義国家型でないイランについては、ハメネイ師が国家元首であり、国政の最終決定権を握っているので、最高指導者という説明がよくつきます。ロシアのプーチン大統領も最高指導者か最高権力者なのでしょう。どちらも特殊な国ですから、この呼称はしょうがないかもしれません。そうではあっても、金一族に私物化された北朝鮮の場合はいけませんね。

 

 今回は、NHKの今朝の報道から話を始めました。調べてみますと、最近の新聞記事に「モンゴルの大統領が訪朝した。最高指導者の金正恩氏が第一書記に就任して以降、外国の元首の訪朝は初めて」というのがありました。「金正恩第一書記を最高指導者とする新体制に移行して以来、はじめて核実験に関する公式見解を明らかにした」などという記事もありました。学者が書いた北朝鮮関係の書籍にも「最高指導者」がしばしば登場します。北朝鮮については、この言葉を死語にしてほしいですね。

 

 

 

 

 

 

                       

                     

 



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