聞き飽きた「また、崖っぷち」
2015年6月30日
ギリシャよ、何度、「崖っぷち」と書かれれば気が済むのかね。本当にいい加減な国です。金融支援の条件として欧州連合(EU)から要求されている財政再建策を受け入れるかどうかについて、揉めに揉めてきました。いい加減さを代表しているチプラス首相は、中南米の革命家・チェゲバラを崇拝しています。その男が、自分では決断できず、国民投票(7月5日)で、イエスかノーかを問うことにしました。
人類の歴史に輝けるギリシャ・ローマ文明の時代を築いた国が、落ちるところまで落ちました。国民投票の結果、EUと再交渉の道が開けるのか、デフォルト(債務不履行)という絶望的な状況に追い込まれるのかは、歴史のサジ加減次第です。再交渉してもいつまとまるか分らないし、まとまったとしても、いずれまた「崖っぷち」ですよ。ユーロに加盟させなかったほうが正解だったのです。
ドラクマに逆戻りも
閉鎖された銀行の前で、年金を下ろそうして、銀行員と言い争い、市民は頭を抱え込んでいます。デフォルトになって、統一通貨ユーロから離脱というか、追放されれば、さらに悲惨なことになります。ユーロという通貨は使えなくなり、以前の自国通貨ドラクマに逆戻りするのでしょうか。
紙幣を印刷して、銀行の窓口に届けるのにも時間がかかります。ドラクマに戻しても、通貨価値はユーロの半分以下でしょうから、海外からモノを輸入しようとすると、価格が2倍以上になります。ものすごい輸入インフレですね。国内の生産は激減し、失業者が街にあふれます。経済学の生きた教材を提供する貴重な役割を演じることはできます。破綻のいい実験にはなります。
経済的な設計ミスがあった
経済学的にみて、統一通貨ユーロ(99年に発足)という制度そのものに、物凄い無理がありました。財政運営は各国の自由に任せ、通貨は自由に動かせないようにすれば、経済が苦しくなると、財政運営が甘くなり、赤字を増やし、どこかで行き詰まります。金融政策、金利政策もEUの一存で決めます。この面からも、経済が弱い国は財政に歪みが生じます。
設計上、こうした致命的な欠陥がありました。EU,ユーロを拡大し、世界経済に存在感をしめしたいという気持ちが先行したのでしょう。世界経済が成長を続ければ、そうした矛盾は雲散していくだろうという楽観的なシナリオを描いたのでしょう。シナリオは狂い、成長は止まり、EUもデフレに落ちみましたから、ギリシャという最も弱い部分で危機が表面化したのです。
対外債務は44兆円も
経済の専門家なら、そんな弱点を抱えているギリシャに融資したり、ギリシャ国債を買い込んだりしません。ユーロ圏各国、欧州中央銀行(ECB),国際通貨基金(IMF)などはその逆のことを続け、ギリシャの債務(借金)は今や44兆円にのぼるそうです。ギリシャがユーロから離脱すると、他の弱い国にも危機が連鎖的に波及しかねないので、ギリシャを防衛ラインにして、貸し込んできたのです。
こうなると「返せないほど、貸し込んだほうが問題だ」とギリシャ側が居直る番です。EUは人類史に残る壮大な実験のように見えて、「経済的にはきちんと目標、あるいは限界を定めて臨む」という戦略を欠いていたと、専門家は分析します。借りるほうも借りるほう、貸すほうも貸すほう。これがギリシャ危機の実相のようです。「本当はギリシャを離脱させたい」、「そんなことをしたら危機は拡大する」という間をうろついてきたのです。
ギリシャ悲劇は広がる
日本にとってもひとごとではありません。日本が第二の出資国であるIMFは、ギリシャに4兆円ほどつぎ込んでいます。恐らく将来にわたり、まず回収できない融資です。この焦げ付きで、日本は出資比率の6・5%分の損失が表面化します。さらに株価が急落する恐れがあります。日米欧は未曾有の金融緩和を続け、それが世界的な株高を演出してきました。経済的な実力以上に上がった株が急落しかねない局面にぶつかっています。ギリシャ悲劇は世界を痛撃しかねないのです。いいレッスンにはなっても、迷惑な話です。
日本が「崖っぷち」ということをお忘れなく!!