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高浜原発停止にみる司法の非常識

2016年03月10日 | 社会

 

複雑、高度の専門的判断に深入り

2016年3月10日

 関西電力の高浜原発は再稼動したばかりというのに、大津地裁は9日、運転差し止めを命じる仮処分を決定しました。原発の安全性という複雑、高度の判断が求められる問題で、司法は恐らく消化不良のまま、判決や判断がころころ変わり、現場は混乱するばかりです。

 

 結論からいうと、今回の判断はかなり無理があり、いずれかの段階で覆されるでしょう。やはり高浜原発をめぐり、福井地裁が再稼動を禁じる仮処分の決定(昨年4月)をだし、これを不満とする関電の異議申し立てに応じて、別の裁判官が処分取り消しを命じました。

 

 今回も関電は異議申し立てをするでしょう。それが認められなければ、大阪高裁に抗告(抗告審)します。そこでも決着がつかなければ、最高裁があるのでしょうか。とにかく同じような差し止め問題が各地で起きており、司法判断がしばしば変わっています。

 

 専門家の中には、「今後の再稼動にはさほど影響しない」という見解があります。「原発は原子力規制委員会の新しい規制基準に適合していることが確認されれば、基本的に再稼動できることになっている」、「規制委は法律に基づいた行政委員会で独自に権限を行使できることになっている」などがその理由です。要するに規制委の判断が尊重されるということです。

 

くるくる変わる司法判断

 

 司法判断がくるくる変わるというのは、原発に限ったことではありません。靖国参拝、日の丸掲揚、一票の格差問題などいろいろあります。その中でも、原発問題は極めて高度の技術的、専門的、科学的な判断が求められる点で異質です。

 

 だからこそ国として、原子力規制委を設け、専門家を集め、厳しい安全性の規制規準を決め、それぞれの原発ごとに個別に審査する体制を敷いています。福島原発の事故後、規制規準の甘さが指摘されて改定され、世界で最高水準の厳しさといわれます。

 

 今回の決定で、大津地裁は規制委の役割をかなり否定するような態度をとりました。「規制委の姿勢に非常に不安を覚える」、「新基準や審査について、公共の安寧の基礎となると考えることをためらう」、「前提とされた活断層の長さは正確でなく、十分な余裕がない」。激しいですね。

 

最高裁判決の主旨から逸脱

 

 地裁、高裁の段階では、理解に苦しむ判決がみられ、今回もその一例でしょう。その場合、「法的安定性」のために、最高裁が示す基本的な判断基準が考慮されます。原発審査については「高度で最新の科学的、技術的、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断にゆだねられる」(92年の伊方原原発訴訟判決)があります。この場合の「行政側」とは、規制委のことでしょう。

 

 今回の判断は、始めから結論ありきで、裁判長が「原発ゼロ」に強引にもっていきたい思想の持ち主ではないか、との指摘があります。「原発ゼロ」は国家の選択として、掲げるのは自由です。それなら別の本訴訟で争えばいいのだし、それが司法の場で可能かという問題もあります。国民の政治選択、つまり選挙の場がそれにふさわしいのです。

 

 国民の総意が「原発ゼロ」、「原発廃止」なのかどうか分りません。自民党は原発再稼動路線です。国民が自民党路線に絶対反対なら、原発反対の野党が議席を伸ばしていなければなりません。そうなってはいません。前回の都知事選でも、「原発ゼロ」の細川、小泉元首相連合が惨敗していますからね。

 

国民は原発停止のリスクも判断

 

 世論調査では、70%前後の有権者が再稼動反対、原発反対です。それが政治選択の場で実現しないのは、原発を動かさなくした場合の「経済リスク、生活リスク」を、国民が現実的に判断していることでないのかと、わたしは思います。

 

 今回の判断ついて評価は真っ二つに割れています。「稼働中の原発を止める画期的なもの。原発ゼロを訴えていく」に対し、「提出された証拠を十分に検討したのか疑問。手を抜いているなと感じる」などです。朝日新聞は「司法判断の意味は重い」(社説)と主張しました。そんなに簡単に結論づけるのは行きすぎですよ。

 

 最後に、朝日の社説は「2年あまり、原発がすべて止まっていた。当初心配された深刻な電力不足や経済の大混乱は起きなかった」と、指摘しています。そうなのでしょうか。世界の原油価格が急落を続けていたため経済的負担が軽くてすみ、、その一方で石炭火力を急増させたという背景がありました。自分の主張にあいそうな部分だけ拾い出すのは公正ではありません。

 

 

 

 

 

 

 



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