新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
政治、経済、社会問題、メディア論などのニュースをえぐる

インフレ長期化に対する小幅利上げで語られていない狙い

2025年01月25日 | 経済

 

財政金融の一体改革が必要

2025年1月25日

 トランプ米大統領の就任演説、石破首相の施政方針演説、それと日銀の0.25%利上げが続きました。大統領、首相、中央銀行総裁らの言動は大々的に報じられている。メディアでは表面的なことばかり詳細に報道され、腹の中ではかれらが何を考えているのかが伝わってこない。

 

 彼らは自分に都合のいいことは大声で言います。トランプ氏は「米国第一で黄金時代が始まる」と、大言壮語しました。すでに米国は最強の国であることを知っているのに「米国は間もなく、過去にないほど偉大で力強く、特別な国となる」と。自分の手柄にしたいのです。テレビのワイドショーのようです。

 

 企業の実力を計る株価時価総額の世界ランキングは、上位5社は米国、上位10社中、9社が米国、上位50社中、35社が米国と、圧勝です。ドルは世界最強で、NYダウも好調です。他国からみると、トランプ氏以前からすでに米国は「黄金時代」なのです。日本の新聞何紙かは、真に受けて、一面見出しを「米国第一で黄金時代」で飾りました。トランプ氏のワイドショーにのせられています。

 

 石破首相の演説(24日)にも違和感があります。「楽しい日本」にするのだそうです。日本を巡る国際情勢の悪化、インフレ・円安による暮らしにくさ、財政金融の危機的状態などをどうにもならない問題が山積しているのに、「楽しい日本を目指す」とは、何なのか。場違いな発言です。トランプ氏の「黄金時代」、石破氏の「楽しい日本」といい、政治家にはもっと実態に基づいた言動を求めたい。

 

 24日には、日銀が金利を0・25%上げ、0・5%にしました。円安が長期化し、消費者物価は3年連続で2%超です。24年度は2・7%、25年度は2・4%、26年度は2・0%(日銀見通し)とインフレが続くのに、植田総裁は小幅な利上げにとどめました。アベノミックスで掲げた「物価目標2%」をとっくに超しています。実質金利は英2%、米1・5%に対し、日本は△0・3%で引き締め状態になっていません。

 

 政府、日銀の腹のうちを探ってみたくなります。インフレだと名目GDP(国民総生産)が膨張し、税収は増える。物価が上がれば、モノ、サービスにかかる消費税収が増える。名目の売上が増えれば、企業の利益も増え、法人税収も増える。税率を変えなくても、税収が増える。いわゆるインフレ税です。目標の2%を超えるインフレ状態はすでに3年になり、今後も2年は続くでしょう。

 

 政府の懐には、インフレ税収が転がりこんできます。政府は腹のうちでは「税制改革による増税をすると選挙に負ける。税率を買えないで済むインフレ税は歓迎できる」と思っているのに違いない。今の状態が心地よいのです。政府の懐は潤い、国民の懐は物価高で痛む。そういう本音を政府、日銀は言わない。

 

 個人金融資産は2212兆円(24年6月)に増えています。その半分が現預金です。高齢世代ほど多く所有し、60代以上が6割に当たる1400兆円を持っています。多くの金融資産を持った高齢者が払う消費税は増えても構わないどころか、もっと負担させるべきです。消費税率(現在10%)を当面、15%程度まで上げたほうがいい。説明を尽くせば、国民が納得できる理屈があるのに、政府は動かない。

 

 働く若い勤労世代は賃上げがあるので、消費税が上がってもかなりの部分をカバーできる。生活が苦しくなる低所得層には現金給付で救済する。資産がある高齢者が払う税金を増やすには、消費税率を引き上げるにはよいということになります。軽減税率もなくしたほうがいい。軽減税率で最も得をしているのは、消費が旺盛な高齢者です。

 

 「実はこうなっている。だからこうしたい」といって、首相は実行したらいい。「財政再建には取り組んでいく」という石破首相は、施政方針演説で財政健全化について触れたのは、たった15行程度です。「経済あっての財政の考え方の下、成長率の引き上げに重点を置く」、「基礎的財政収支の黒字化を目指す」など、机上の空論に近いことを語っただけで、本気で財政健全化に取り組むつもりはない。野党にもその気はない。

 

 財政金融一体でないと、財政正常化も金融正常化もできません。利上げをすると、国債費が増え、財政膨張策がやりにくくなる。利上げをしていくと、日銀の当座預金(500兆円)の金利も上がり、日銀の財務状態が悪化し、国庫納付金も減ります。このままでは財政も金融も泥沼から足を抜けなくなる。

 

 日銀だけに正常化の責任を押し付けずに、政府にも財政正常化の責任を持たせる。そのためには、主要国ならどこでも設けている独立財政機関をまず作ることです。新聞が「黒字の目標延期を繰り返すな」(読売社説、20日)と主張しても虚しいのです。財政独立機関の設置をもっと強くいうべきです。

 

 

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2025-01-26 08:55:38
リフレ派とMMTは詐欺集団
返信する

コメントを投稿