新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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国立競技場をアベドームとしたら

2015年07月14日 | 政治

  

 

 無責任政治の歴史的記念物に

2015年7月14日

 

 新国立競技場のずさんな建設計画は、政治家、五輪関係者の無責任体質を象徴していることがますますはっきりしてきました。無責任を通りすぎて、関係者からは放言としかいいようのない発言が繰り返されています。予定通りに、この歴史的構造物を建設するのでしたら、最高責任者にちなんで「アベドーム」と命名しましょう。

 

 建設計画の関係者は、建設費の足しにと、命名権(ネーミングライツ)を売って200億円程度、稼ぐつもりだといいます。そんなことをするくらいなら、「アベドーム」と名づけ、歴史的な愚行を将来にわたり記憶にとどめるほうが、賢明です。


「建設反対」が圧倒的


 世論調査は続々と、国民の大半が反対していることを伝えています。NHKは「反対81%」、朝日新聞が「反対71%」です。前回、紹介した読売は「反対81%」でした。オリンピックという最大のイベント、誰もが関心を持つ巨大な競技場という分りやすさ、デフレや財政赤字脱却という国家的課題に背く愚行、と話題性は十分です。


 洗練された国際的な工業製品を多く生み出した企業にいた知人が、先日のブログに感想を寄せてきました。「工業デザインとアートは違う。アートは美のみ追えばいい。工業デザインはそれに加え、機能性と経済計算を満足させなければならない」と。確かにそうですね。


アートと工業デザインは違う


 イラク出身の建築家によるデザインは「奇抜、斬新、圧倒的」など、「あっ」と、人を驚かすには十分です。その建設費がだんだん膨張して、当初の1300億円が2500億円に、さらに追加工事をいれると3000億円とか。こちらも「あっ」と、人を驚かします。何割か予算が増大するのは公共事業の常としても、ここまでくると、計画の狂いなどではなく、もともと予算計画といえるものが頭になかったのでしょう。


 安倍首相はすっかり気に入り、よせばいいのに、13年9月の国際オリンピック委員会の総会で「他のどんな競技場とも似ていない真新しいスタジアム」と、アピールした(日経14日の記事)というからたまりません。国際公約だ、後に引けないぞ、となったのでしょう。経済計算は忘れ、「五輪招致ではおれがやった。新国立競技場も日本の技術力を示す挑戦となる」と、気分が高揚していたのでしょう。それならば、消費税10%を先送りして財政再建を遅らすなどということをしなければよかったのです。


民主党に責任転嫁を図る


 国会できちんと議論し、調査すべきですね。民主党の辻元議員の質問に、安倍首相は「民主党のときの国際コンペでこのデザインが決まったのですよ」と、切り返しました。すると枝野幹事長は「ゴーサインを出したのは、安倍政権ですよ。巨額の建設費がでてきたのは安倍内閣ですよ」と、うっちゃりました。


 当時、デザインの採用に大きな影響力を持ったとされる建築家で、文化勲章受賞者の安藤忠雄氏は「1300億円でと、いったのに、なんでこんな増えてんのか。わからへん」と、うそぶいているのだそうです。下村文科相が「安藤氏は堂々と、なぜこの案を選んだのか発言してもらいたい」と催促していました。予算が急膨張した責任は文科省にあるのにね。困った大臣です。計画そのものの無責任さより、それを平気で進めてきた政府の無責任な体質が、もっと重大な問題なのです。


 石原元都知事は、このデザインご執心らしく、都の負担金とされる500億円は苦もなく捻出できるとの考えです。「都民以外の通勤者から一人あたり月額1000円の特別税をとったらいい。一年で600億円、徴収できる」といいます。ここまでくると、放言か暴言かの区別はつかなくなります。消費税で国民が痛んでいるのに、そのうえ新税とは、合理的な説明がつきますか。知事が納税者から憲法違反かなんかで訴えられますよね。勝てません。


「逃げるが勝ち」とはいかない


 安倍政権は「逃げるが勝ち」の様子です。今後の展開次第では「逃げるは負け」もありえます。そう考えている国民は多いのではないですか。何かにつけて強引な安部政権の支持率は急落しています。強硬採決含みの安保法制論議、表現の自由に対する不用意な発言、それに今回の問題などなど。朝日、毎日の世論調査では、内閣不支持率が支持率を上回るなど、風向きはどうも変わり始めたようですね。


 




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1 コメント

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アベドーム ()
2015-07-17 13:17:42
この種の建造物は業界において、一番儲かる注文です。原価の倍以上吹っかけていることは確実と思います。査定のプロが政府にいないと常に公共投資は美味しい物件になります。
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