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日銀総裁がどう弁解しても異次元緩和は転換点

2022年12月22日 | 経済

 

黒田氏の起用が誤りの始まり

2022年12月22日

 日銀は20日、事実上の金利引き上げ(長期金利の上限幅を0・5%に変更)に迫られました。黒田総裁は不可解な説明を繰り返しています。今回も「市場機能の改善が目的で、利上げではない」というではありませんか。苦し紛れの弁解を言い続けるのはやめたほうがよい。

 

 「市場機能の改善に焦点をあてたもので、金融引き締めではない」などと、総裁は記者会見で言い切りました。そんな意味不明の表現ではなく、「利上げ見込した投機筋の国債空売りが殺到し、それに対抗せざるを得なかった」と、分かりやすく述べるべきでした。

 

 これほど論争の的になった日銀総裁の存在は前代未聞です。貨幣数量説を妄信し「2年、通貨供給量2倍、物価上昇2%」を自信たっぷりに掲げてきた黒田氏という人選が間違いだったのです。

 

 ばくちに近いような壮大な実験の目標を公約に掲げるのは、政治の世界ではよくみられる。信頼性を欠いてはならない日銀総裁は政治のまねしてはいけません。当時の副総裁までもが「2年で達成できなければ辞任する」とまで大見えを切って、結局辞任しなかった。

 

 安倍首相と一体でしたから、黒田氏は総裁職を続けられました。来年3月に決まる次期総裁は、日銀の中立性と信頼性を守れる人物を選ぶよう岸田政権に期待しています。

 

 新聞の反応をみると、日経は「日銀、苦渋のサプライズ」とか「金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)を示すことで市場の混乱を避けることが世界の潮流なのに、今回のサプライズはこうした流れに背を向けた」と、「サプライズ」という表現を何度も使っています。

 

 総裁の言葉を信じ切っていた市場関係者や日経新聞にとっては「サプライズ」であった。読売社説は「市場の現実に促された判断だ」、朝日社説は「日銀はもっと機敏に動く必要がある」として、サプライズという表現を使っていません。こちらがまともです。

 

 「金融政策の転換が必要だ。まず、長期金利の変動幅の拡大をしてみることだ」と、警告する識者、専門家は少なからずおりました。その通りになりました。彼らにとってはサプライズではない。「日銀は追い込まれて当然のことをやらされた」と考えるのが正しい解釈です。

 

 30年前に逆もどりした急激な円安による購買力の低下、輸入インフレの加速、企業物価の上昇(10%)、最大の経常収支の赤字(7-9月で20兆円)など、どれをとっても悲惨な数字が並んでいます。

 

 日銀が意図して「サプライズ」を演出したのではなく、市場の動きに押しきられた結果です。特に1㌦=150円という円安、体感では5%を超す物価上昇に直面して、政治の次元から圧力がかかったと推察します。

 

 「来年3月の退任まで黒田氏は異次元緩和を修正しない」とする専門家もおりました。市場の動きも総裁の任期に合わせてくれると思うのは間違いだったことも証明されました。

 

 政府・日銀の共同声明の見直し論まで内部で浮上するようになり、次期総裁の段階で、異次元金融緩和(長短金利の変動幅の制限=YCC)の修正が必必至になっています。次期総裁にそうされると、「黒田緩和策」からの転換が始まる。

 

 黒田氏は先手を打って、「それなら自分の在任中に政策を修正してしまおう。新総裁はその流れ(長期金利の変動幅の拡大)に沿って舵取りをすることになれば、自分の面子も守れる」という判断が働いたと私はみます。実際は先手どころではなく、政策転換は後手に回ってきた。

 

 黒田氏は記者会見で、「債券市場の機能が低下している」、「今回の措置で市場機能が改善することが期待される」と、「市場機能の改善」という表現を何度も使いました。

 

 日銀総裁にしては視野が狭い。「国債の50%以上を日銀が保有しており、そのこと自体が市場機能の喪失を招いている」、「日銀はETF(株価指数連動上場投信)も大量に保有し、日本最大の株主になり、株式市場の柔軟性が失われている」というのがずっと本質的な問題です。

 

 さらに「大規模金融緩和と、赤字を垂れ流す財政出動が10年にも及び、本来なら淘汰されるはずの死に体企業(ゾンビ企業)が生き残り、産業・企業の新陳代謝が進んでいない。競争原理という市場機能の基本が失われ、日本経済の停滞を招いている」が本質的な問題です。

 

 「市場機能の喪失」は黒田総裁が考えているミクロ次元の話ではなく、日本経済全体の停滞というマクロの話なのです。

 

 

 


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