最近のアマチュアスポーツ団体で生じているトラブルの多くは、非常に簡単な原因から生じています。一言でいえば「上意下達 (じょういかたつ)※」です。これは、上位の者の意志や命令を下位の者に徹底させることです。
評論家の山本七平氏は『「空気」の研究 (文春文庫 1983年)』で、日本人の集団では当事者以外には説明しにくい「場の空気」があり、誰が決めたということが曖昧なまま意思決定がなされてしまうと述べています。個人の意見をはっきりと言いづらい「空気」が生じると、いつのまにか「1人だけ、意見を言って良い」ボスが生まれます。
やがてそのボスは、自分の意見=集団の意見と思い始めます。
こうした集団の悪しき特性を防止するために、様々な策が提案されています。それらについては、ご自身で詳しく調べていただきたいのですが、残念ながらどれも実行するのが難しいものばかりです。たとえば、「リーダーはメンバーが批判者としての役割を果たすように鼓舞する」とか「グループの外部に、別の評価グループを設置する」などです。
企業においては最初から社長(経営者)というボスが存在しています。経営者が学ぶべきは日本的な組織の特性であり、自分自身の意思決定のやり方についてです。経営者は、少なくとも次の2つを忘れないようにしていただきたいものです。
(1)意思決定において「自分が正しい」と思うことが10回を超えていたら、きっと1回は間違えている。
(2)そんなことはないと思ったら(最近テレビでよく見る)某会長や某理事長にだいぶ近いづいている。
これは経営者に限らず管理職など、「リーダーシップ」を身に付けるべきすべての人々にとって、とても大切な心構えではないでしょうか。
※「下達」は「げだつ」とも読みます。