共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

御見舞い

2019年07月05日 22時28分25秒 | 日記


昨日ブログに書いた通り、今日は私にヴィオラを譲って下さった先輩の御見舞いに、藤沢市にある病院まで行ってきました。今年に入って早々にこちらの病院に転院したことは伺っていたのですが、何かと忙殺されている間にどんどん月日が経ってしまって、結果的に今日を迎えてしまいました。

ようやく御見舞いには伺ったものの、進行性の病気なのでどんな状況になっておられるだろうか…と思いながら病室にお邪魔しました。

先輩は4人部屋の窓際にあるベッドに横になっておられました。私の姿が目に入ると、殆ど動かないはずの右手を伸ばそうとされていました。

ベッドサイドの椅子に失礼し、先ずは長の御無沙汰をお詫び申し上げました。昨日お兄様から頂戴したメールによればお話されるのも困難な容態であるとのことでしたので、こちらが一方的に近況を喋るかたちで今まで拙ブログに書いてきたようなことを報告しました。先輩は言葉こそ発せられないものの、目を動かして反応しておられました。

そして、昨日から準備していた



『偉人さんバンド』のクッションをプレゼントしたところ、絞り出すような微かな声で

「…ドウモ、アリガトウ…」

と答えて下さいました。目がキョロキョロしていたので、クラシックもビートルズもお好きな先輩は、どうやらこのシャレにウケて下さったようです。

定期回診がやって来ている間、私はロビーで、同じく御見舞いに見えていたお姉様とお話をさせて頂きました。それによると、特にこちらに転院してから日毎に病状が進行していき、経口食が摂れなくなってしまったので胃瘻に切り替えたのだそうですが、それに伴う抗生剤や鎮痛剤の副作用で恍惚となってしまうことが多くなってしまったようです。

このままだと意思疎通も儘ならなくなってしまうという懸念があったため、御本人とも協議の上で一週間ほど前に胃瘻を止めて点滴での栄養補給に切り替えられたところ、何と少しではありますが声を出して意思疎通がはかれるくらいにまで戻ってきた…とのことでした。

そして今日、私がお邪魔した時には殆ど声が出せない様子だったのですが、定期回診の後に水を含ませたスポンジによる水分補給と痰の吸引を受けた後に病室に戻ると、先程よりも尚声が出るようになっていて驚きました。何でも今後は嚥下(飲食物の飲み込み)のリハビリをした上で、少しずつ口から栄養補給出来るようにされるそうです。

また今日は



懐かしいだろうと思って、譲り受けたヴィオラを持参しました。先輩は声こそ出しませんでしたが、手を伸ばして触れておられました。演奏出来なくなってしまった方に楽器をお持ちするなんて酷かなとも思ったのですが、やはり持って行って正解でした。

その後、姿勢を変えて2回目の痰の吸引を受けたので話しやすくなったのか、更にはっきりとした声でお話をすることが出来ました。帰り際に

「私はもう死ぬけれど、これからも私の分までいろいろと活躍して下さいね。」

と言って下さいました。

堪らない思いが溢れそうになったのですが、ここではいかん!とこらえました。先輩の目にどう写ったか分かりませんが、多分気づかれてはいないと思います。

帰り際、昨日メールを送って下さった先輩のお兄様が御見舞いに見えたので、御礼と御挨拶をしてから先輩に

「必ずまた来ます。」

と申し上げて失礼しました。

病院を出て藤沢駅まで歩いたのですが、道すがら耐えられなくなって途中にあった公園のベンチに座って、声を殺して泣き崩れました。

『何でもっと早く御見舞いに来なかったのか…』

『もっと意思疎通がスムーズに出来るうちに御見舞いに来ていれば、もっと大切なお話を沢山する事が出来ていたはずなのに…』

頭に浮かぶのはどれも自分を糾弾するような言葉ばかり。それがどれだけ詮無いことかなんて十分に分かりきっていることのはずなのに、涙が後から後から溢れ出てきて止まらないのです。

一頻り涙を流した後で今までの自分の生活の忙殺されぶりを恥じ、せめてこれからは時間の許す限り御見舞いに参ずるようにしよう!と思いを新たにしたのでありました。

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