連日の猛暑日にすっかりイヤになってしまっている昨今、如何お過ごしでしょうか。私は気温がマシな早朝に洗濯を済ませてしまう以外は、極力外出しないようにしています…。
ところで、今日7月31日はリストの祥月命日です。
フランツ・リスト(1811〜1886)は、ハンガリー王国で生まれ、現在のドイツやオーストリアなどヨーロッパ各地で活動したピアニスト、作曲家です。何だかつい最近ご紹介したような気がしないでもありませんが、まぁ気のせいということで(オイ…)。
リストの来歴等については今までにもいろいろと書いていますので、今回はそのあたりは省略して(めんどくさいだけだろ…)、ちょっと珍しい作品をご紹介したいと思います。それが、1853年に作曲したピアノと管弦楽のための《死の舞踏》です。
《死の舞踏》というと、どうしてもサン=サーンス(1835〜1921)の作曲したオーケストラ作品が有名ですが、リストの作曲した《死の舞踏》S.126 はピアノ独奏を伴う管弦楽曲で、原題は《死の舞踏-『怒りの日』によるパラフレーズ》(Totentanz - Paraphrase über "Dies irae")というものです。その名の通りグレゴリオ聖歌の『怒りの日』の旋律を用いた一種のパラフレーズ〜「意訳」の意味で、ある楽曲(ここではグレゴリオ聖歌の『怒りの日』)を変形あるいは編曲して他の楽器のための自由な楽曲としたもの〜で、 弟子で指揮者のハンス・フォン・ビューロー(1830〜1894)に献呈されました。
リストは1838年にイタリアを旅したとき、ピサの墓所カンポサント (Camposanto) にある
14世紀のフレスコ画『死の勝利』を見て深い感銘を受けたといわれています。そしてリストはここで得た霊感をもとに、
(四線譜によるグレゴリオ聖歌)
(五線譜による上の楽譜の読み解き譜)
ローマ・カトリック教会のセクエンツィアであり、最後の審判を想起させる《怒りの日 Dies irae》を主題として用いてピアノが華麗に活躍するパラフレーズ(あるいは変奏曲)を作曲しました。
この旋律をもとにした楽曲の例としては、先にご紹介したサン=サーンスの《死の舞踏》やベルリオーズの《幻想交響曲》なとがあります。リストは《幻想交響曲》をピアノ独奏用に編曲していますが、だからといってリストがベルリオーズから影響を受けたかどうかは定かではありません。
リストはこの曲を1849年に一旦完成させたが、その後改作を重ね、1865年にハンス・フォン・ビューローの演奏で、ハーグにて初演されました。
ピアノとティンパニのグロテスクな反復に伴われた管楽器や低音弦によるグレゴリオ聖歌の『怒りの日』の旋律で幕を開け、短いカデンツァとピアノよる主題呈示の後に5つの変奏を経て、コーダを兼ねる最後の変奏で劇的な終結を迎えます。
そんなわけで、リストの祥月命日である今日は《死の舞踏》をお聴きいただきたいと思います。フランクフルト放送交響楽団の演奏で、サン=サーンスの同名楽曲とは全く違ったリストならではの《死の舞踏》をお楽しみください。