モロボシダンと友里アンヌ
「ウルトラセブン」
ウルトラセブンは日本の偉大なSFであり、特撮ものであり、ラブストーリーだ。
予算不足で戦闘シーンが少なかった事が、逆に練ったストーリーへと向けられ、H・G・ウェルズにも負けない作品だと思う。
宇宙戦争が「私」すなわちヨーロッパ人への批判なら、ウルトラセブンの「ノンマルト」は日本人批判だろう。SFは歴史や文明、科学技術から空想を描く物だが、しっかりとした裏付けと背景をもてば社会派ドラマとなる。
市川森一氏は、第七艦隊・日米安保と日本の関わりを、地球防衛軍極東支部とウルトラセブンに関係にダブらせているようだが、東西対立が激しかった時代でもあり、そういう側面はあっただろう。
ハリウッドで「インディアン」と開拓者の戦いを東西対立の象徴として描き、宇宙人の侵略を東側からの侵略として描いたように、映画、マスメディアはプロパガンダに使われる。
ウルトラセブンにも侵略する宇宙人が多く描かれているが、それが時代の空気なのか、プロパガンダなのか、そこまで踏みいる事はやめておこう。
美しい女性隊員とヒーローの恋、(後に気付くのだが)沖縄と大和(本土)との関わり、悩む主人公、軍拡競争や機械文明の批判が子供心に強く印象に残っている。
キリヤマ隊長が海底からの「侵略者」を倒したときに叫ぶ「地球は我々の物だ!」というせりふが、なぜか空虚に響く。戦いには勝ったはずなのに釈然としない。ウルトラセブンは単なる子供向けの怪獣映画ではない。
後の「ウルトラ兄弟」という子供に媚びる設定もなく、「タロウ」あたりのおちゃらけもない、ハードSFだ。
俗にいう「平成ウルトラセブン」という正統的な続編が作られたり、元祖をモチーフにした「ウルトラセブンX」が作られたりと、今なお色あせない傑作だとおもう。
※ウルトラセブンXはブレードランナーやマトリクスコンプレックスが強くて今ひとつという気もするけど、ストーリー自体はウルトラセブンを継承していて、それなりに楽しめる。