じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

宮部みゆき「不文律」

2019-07-15 23:18:26 | Weblog
★ 宮部みゆきさんの「地下街の雨」(集英社文庫)から「不文律」を読んだ。

★ 夫婦と子ども二人。家族4人の乗った車がふ頭から海に落ちた。無理心中なのか。関係者の証言をつなぎ合わせて真相に迫っている。

★ 証言は芥川の「藪の中」のようでもあるが、どうやら子どもたちの「人質ゲーム」がカギを握っているようだ。それに、なぜ夫のシートベルトだけ締まっていなかったのか。

★ 反芻して読まなければわからないかな。
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宮本輝「西瓜トラック」

2019-07-15 22:46:56 | Weblog
★ 宮本輝さんの「星々の悲しみ」(文春文庫)から「西瓜トラック」を読んだ。

★ プロに言うのは申し訳ないが、うまいなぁと思った。

★ 今は市役所に勤める主人公、高校生時代に西瓜売りのアルバイトをした。その男はダンプカーに300個の西瓜を積んで売っていた。東舞鶴から来ているというが、西瓜を売る時は熊本産と言って変な熊本弁を使っていた。

★ 男はダンプカーの留守番を主人公に託し、自分は近くのアパートに入っていった。同郷の女性がいるという。

★ やがて西瓜はほぼ売り切れ、アルバイト代の1万円をもらい、その男とはそれきりになる。

★ 全体の構成もうまいが、情景がありありと浮かんでくる。なぜなのだろうか。不思議なほど作品の世界に入り込める。
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村上春樹「象の消滅」

2019-07-15 20:57:07 | Weblog
★ 村上春樹さんの「パン屋再襲撃」(文春文庫)から「象の消滅」を読んだ。

★ 町が管理している象舎から、象と飼育員が消えた。カフカの「変身」のようにいきなり「その世界」に引き込まれる。

★ 象がはもともと飼育されていた郊外の動物園は経営難で閉鎖された。行き場のない老いた象は町で管理されることになった。このあたりの取り決めは、米軍基地、辺野古移設、陸上イージスを思わせる。

★ 象がいなくなって警察やマスコミや町の人々が大騒ぎする様子は、警察署に留置されていた容疑者が弁護士と会ったあと逃走した事件や刑が確定した受刑囚が収監に訪れた検察事務官たちの手をのがれて逃走した事件を思わせる。

★ 最後は不条理なまま終わる。果たして象と飼育員はどうなったのか。
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森鷗外「かのように」

2019-07-15 19:22:00 | Weblog
★ 森鷗外「阿部一族・舞姫」(新潮文庫)から「かのように」を読んだ。難しい作品だった。

★ 小説の形態をとっているが、学問論争のようでもある。明治が終わろうとしていた時代、社会の混乱、矛盾が顕在化してきた時代ゆえの作品だろうか。

★ 子爵家の一人息子・秀麿は大学を出て洋行する。ヨーロッパで3年間を過ごし帰国する。

★ 前半は洋行中の秀麿の手紙を読み、父親の五条子爵が危険思想や神話と歴史の関りについて思いを巡らしている。父親と秀麿のジェネレーションギャップも垣間見える。

★ 後半は、同窓の綾小路と秀麿との論争で話が進められる。唯物論が優勢になってきた時代の中で、神や祖先の霊があるかのように、人としての生きる道、義務、道徳があるかのように、「かのように」を尊重する意味を論じているように思う。

★ 所詮は支配階級の観念論争なのだろうが、それを否定してしまっては、学問も宗教も芸術も存在できない。

★ 難しい作品だった。
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山田詠美「雑音の順位」

2019-07-15 17:40:18 | Weblog
★ 山田詠美さんの「ぼくは勉強ができない」(新潮文庫)から「雑音の順位」を読んだ。

★ 同じクラスの後藤が突然「政治家になる」と言い出した。同級生たちは茶化すばかりだが後藤は真剣な様子。彼の家は米軍基地の近くにあり、騒音が耐えられないというのだ。

★ そこから始まる「騒音談議」。ある者は列車の音がうるさいと言い、ある者は隣室の夜の喘ぎ声がたまらないという。

★ 年上の女性、桃子さんに恋する「ぼく」は彼女との恋愛に悩み中。大人のように割り切れないのは高校生の純粋さか、未熟さか。

★ 高校生たちの青臭い語りの合間に「季節は、いつも暦を裏切り、名残の尻っぽを落としていく。空気は秋でも、影は夏・・夏の影法師を踏むような足取りで、ぼくは月夜の晩に、彼女の部屋をノックしに行ったのだった」(64頁)なんて表現が織り込まれているから油断がならない。

★ さて、「ぼく」の恋の行方や如何に。
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森浩美「父の背中で見た花火」

2019-07-15 16:07:16 | Weblog
★ 夏になるとあちこちで花火大会が開催される。私の地元もかつては宇治川花火大会が盛大に行われたが、防災上の理由とかで、再び行われることはなさそうだ。 

★ 森浩美さんの「家族の分け前」(双葉文庫)から「父の背中で見た花火」を読んだ。

★ 東京に住んでいる娘が孫娘を連れて帰ってきた。離婚したから子どもを預かって欲しいという。何の相談もなく事後報告でその上、娘を預かってくれと言う身勝手な依頼に、父親はカチンときた。母親はうろたえるばかり。しかし、かわいい孫娘を見るとこの子には心配をかけさせたくないと思うのだった。

★ やがてこの地方の大イベント、花火大会。孫娘は母親の帰郷を楽しみにしていたが、花火が終わってもその姿は見えなかった。気を落としながらも寝付いた孫。その時娘が帰ってきた。

★ 時代とともに街も人も変わっていく。今ほど変化の激しい時代はないのかも知れない。安定した生計を営むのが難しい時代だ。自営業はなおさらだ。ただどんな時代になっても家族と言うのはいいものだと思える作品だった。
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