★ NHKオンデマンド「BS1スペシャル」で「三島由紀夫×川端康成 運命の物語」(2019年)を観た。師弟ともいえるこの二人の天才、川端のノーベル賞受賞を機に疎遠になっていったという。小説に命を懸けたが故の嫉妬、悩み、そして二人はそれぞれの自決へと向かう。
★ このドキュメンタリーに刺激されて、三島由紀夫の「真夏の死」(新潮文庫)から表題作を読んだ。伊豆に海水浴に来た家族。母親の朝子とその3人の子ども。そして朝子の兄の妹。朝子より年上ながら、義理の妹になる。朝子は3人の子どもをその義妹に託し、束の間の昼寝をしていた。
★ 義妹は子どもたちを海岸で遊ばせていたが、その時悲劇が起こる。2人の幼子が波にさらわれ、それを助けようとした義妹は心臓マヒで倒れてしまう。一度に3人の家族を失った朝子とその家族。その後は、朝子の心情が綴られていく。
★ 以前に小此木啓吾さんの「対象喪失」(中公新書)を読んだことがある。その中で「悲哀の仕事」について述べられていた。「対象喪失は、どんなに人間があがいても、その対象を再生することができない」(196頁)「悲哀の仕事」は、「この対象とのかかわりを一つ一つ再現し、解決していく作業である」(156頁)という。
★ 私たちは日々、偶然性や不条理に直面している。仏教は四苦八苦を説くが、要を得ている。喪失からいかに再生するか。「真夏の死」もそのドラマなのかも知れない。
★ 何はともあれ、三島由紀夫の作品は、文章として美しい。早歩きではなく、じっくり味わって読みたい作家だ。
★ このドキュメンタリーに刺激されて、三島由紀夫の「真夏の死」(新潮文庫)から表題作を読んだ。伊豆に海水浴に来た家族。母親の朝子とその3人の子ども。そして朝子の兄の妹。朝子より年上ながら、義理の妹になる。朝子は3人の子どもをその義妹に託し、束の間の昼寝をしていた。
★ 義妹は子どもたちを海岸で遊ばせていたが、その時悲劇が起こる。2人の幼子が波にさらわれ、それを助けようとした義妹は心臓マヒで倒れてしまう。一度に3人の家族を失った朝子とその家族。その後は、朝子の心情が綴られていく。
★ 以前に小此木啓吾さんの「対象喪失」(中公新書)を読んだことがある。その中で「悲哀の仕事」について述べられていた。「対象喪失は、どんなに人間があがいても、その対象を再生することができない」(196頁)「悲哀の仕事」は、「この対象とのかかわりを一つ一つ再現し、解決していく作業である」(156頁)という。
★ 私たちは日々、偶然性や不条理に直面している。仏教は四苦八苦を説くが、要を得ている。喪失からいかに再生するか。「真夏の死」もそのドラマなのかも知れない。
★ 何はともあれ、三島由紀夫の作品は、文章として美しい。早歩きではなく、じっくり味わって読みたい作家だ。