★ まずは、安倍公房「R62号の発明 鉛の卵」(新潮文庫)から「変形の記録」を読んだ。コレラで瀕死の兵士が友軍に射殺され、その霊が、友軍とともに旅をするというもの。安倍公房さんらしいシュールな作品だ。死んで肉体から解放され自由になったはずなのに、まだ肉体にこだわるところが面白かった。
★ 続いて、染井為人さんの「悪い夏」(角川書店)を読み終えた。最近、社会保障制度、中でも生活保護を扱う作品が目につく。格差社会の進行によるものだろうか。
★ とにかく、この作品には生活保護制度を食い物にする「悪いやつら」がいっぱい登場する。その「悪いやつら」と前線で戦っているのが社会福祉事務所の職員だ。しかし、この仕事も危険と誘惑に満ちている。中には「悪いやつら」にはめられて、悪の道に落ちる人も。
★ 主人公は26歳の佐々木守。意図せず「生活福祉課・保護担当課」に配属され、上司からも「三年の我慢だ」と説かれる。それほど、この職場は過酷だ。「働きたくない」から生活保護を申請する人、嘘っぽい診断書を手に申請する人、生活保護を受けている人から上前をはねる貧困ビジネス。これに加担する医師や民生委員。一方で、生活保護費の削減をノルマとする役所。
★ そして、中には本当に援助を必要とする人がいる。声の大きい人や要領のいい人が受給でき、そうでない人は見逃されやすい。
★ 前半は社会派小説のようだが、だんだんエンターテインメントになり、最後は大団円(ハッピーエンドではないが)という感じだ。コミカルな面もあり、額にしわを寄せずに楽しめる。楽しみつつ、格差社会のことを考えられる。
★ 一番の「悪」であるようなヤクザ者のセリフ、「一生懸命働いているのに生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない社会はおかしい」(単行本280ページ)は、ヤケに説得力がある。
★ 「貧・病・争」は人の苦しみの多くを占める。現代は資本主義の進行(格差の拡大)や過度の個人主義による孤立・分断が人を苦しめている。かといって、古代や中世は良かったのか。宗教国家や絶対主義、ムラ社会が良かったのか。そこは考えどころだ。
★ 続いて、染井為人さんの「悪い夏」(角川書店)を読み終えた。最近、社会保障制度、中でも生活保護を扱う作品が目につく。格差社会の進行によるものだろうか。
★ とにかく、この作品には生活保護制度を食い物にする「悪いやつら」がいっぱい登場する。その「悪いやつら」と前線で戦っているのが社会福祉事務所の職員だ。しかし、この仕事も危険と誘惑に満ちている。中には「悪いやつら」にはめられて、悪の道に落ちる人も。
★ 主人公は26歳の佐々木守。意図せず「生活福祉課・保護担当課」に配属され、上司からも「三年の我慢だ」と説かれる。それほど、この職場は過酷だ。「働きたくない」から生活保護を申請する人、嘘っぽい診断書を手に申請する人、生活保護を受けている人から上前をはねる貧困ビジネス。これに加担する医師や民生委員。一方で、生活保護費の削減をノルマとする役所。
★ そして、中には本当に援助を必要とする人がいる。声の大きい人や要領のいい人が受給でき、そうでない人は見逃されやすい。
★ 前半は社会派小説のようだが、だんだんエンターテインメントになり、最後は大団円(ハッピーエンドではないが)という感じだ。コミカルな面もあり、額にしわを寄せずに楽しめる。楽しみつつ、格差社会のことを考えられる。
★ 一番の「悪」であるようなヤクザ者のセリフ、「一生懸命働いているのに生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない社会はおかしい」(単行本280ページ)は、ヤケに説得力がある。
★ 「貧・病・争」は人の苦しみの多くを占める。現代は資本主義の進行(格差の拡大)や過度の個人主義による孤立・分断が人を苦しめている。かといって、古代や中世は良かったのか。宗教国家や絶対主義、ムラ社会が良かったのか。そこは考えどころだ。